リクルートテクノロジーズは、IoT普及の展望や課題について、ITエンジニアがどのように考えているかを把握することを目的として、今年8月にアンケート調査を実施。その結果を公表した。スタートアップのソラコム社が9月30日に発表したIoTプラットフォーム「SORACOM Air」「SORACOM Beam」が注目を集める中、ITエンジニアの動向を見る興味深い調査といえそうだ。
アンケートは、事前調査「あなたは『インターネット オブ シングス(Internet of Things/IoT/モノのインターネット)』についてご存知ですか。(知っている/聞いたことがある気がする/知らない)」に対し、“知っている”と回答したうちの528名(n=528)に対して行われた。
アンケートの設問は次のとおり。Q2、Q4、Q5、Q7は自由形式になっている。
調査方法 | インターネットリサーチ |
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実施期間 | 2015年8月12日(水)~2015年8月13日(木) |
調査対象 | 居住地: 全国 |
性別: 男女 | |
年齢: 20代~40代 | |
職業: ITエンジニア | |
人数: 528サンプル(事前調査は3,117サンプル) ストラテジスト16名/システムアーキテクト87名/プロジェクトマネージャ90名/テクニカルスペシャリスト241名/サービスマネージャ50名/その他44名 ※職種の分類は、独立行政法人 情報処理推進機構が定める「共通キャリア・スキルフレームワーク」に基づく。 |
■設問
Q1:IoTによって、これからの生活が変わっていくと思いますか。
変わっていくと思う/変わっていかないと思う/どちらともいえない
Q2:一般生活者が変化を実感するのは約何年後だと思いますか。(Q2「変わっていくと思う」回答者のみ)
Q3:IoTによって大きく変化すると思う産業を3つまで、お選びください。(Q2「変わっていくと思う」回答者のみ)
農業,林業/漁業/鉱業,採石業,砂利採取業/建設業/製造業/電気・ガス・熱供給・水道業/情報通信業/運輸業,郵便業/卸売業,小売業/金融業,保険業/不動産業,物品賃貸業/学術研究,専門・技術サービス業/宿泊業,飲食サービス業/生活関連サービス業,娯楽業/教育,学習支援業/医療,福祉/複合サービス事業/サービス業(他に分類されないもの)/公務(他に分類されないもの)/その他/特になし
※総務省「日本標準産業分類」に基づき分類。
Q4:IoTを通じて、どのように生活が変わっていくと思いますか?(Q2「変わっていくと思う」回答者のみ)
Q5:IoTで実現したい・解決したいと思うことを教えてください。(Q2「変わっていくと思う」回答者のみ)
Q6:IoTの普及に向けて、課題に感じることを教えてください。
セキュリティ対策/ネットワーク環境の整備/データの管理/プラットフォーム(クラウド基盤)の構築/国や企業における開発体制の構築/規格の統一/センサー・デバイスの開発/IoTの理解促進/あてはまるものはない
Q7:Q6の選択肢以外にも、IoTの普及に向けて課題に感じることがあれば教えてください。
事前調査は、20代から40代のITエンジニア3,117名に対して実施。そのうち“知っている”と回答したのは31.0%だった。
「Q1:IoTによって生活が変わっていくと思うか」という質問には、71.2%が「変わっていくと思う」と回答。「変わっていかないと思う」の13.1%を大きく上回った。
続いて、Q1で「変わっていくと思う」と回答した376名に対し「Q2:一般生活者が変化を実感するのは何年後になりそうか」を聞いたところ、68.7%が「5年以内」と回答(無効回答の2名は除外)。Q1でIoTによって生活が変わると回答したITエンジニアの多くは、5年以内という短期間での変化を予測しているようだ。
「Q3:IoTによって大きく変化すると思う産業(3つまで回答可)」については、「情報通信業」を挙げたITエンジニアが一番多く37.0%。それに「農業・林業」の35.9%、「医療、福祉」が24.5%と続いた。そう考えた理由を、Q2で(IoTにより生活が)“変わっていくと思う”と回答したITエンジニアに尋ねた「Q4:IoTを通じて、どのように生活が変わっていくと思いますか?」の結果を見ると、「情報通信業」では“データの収集や管理”、「農業・林業」や「医療・福祉」では“自動化や遠隔操作”など、全体を通じて作業の効率化や、新しい体験の実現を予想する声が多数あったという。
また、「Q5:IoTで実現したい・解決したいこと」という質問には、“医療格差”や“第一次産業の人手不足”、“育児・教育”など、社会課題に関連した声が多数見られたと、リクルートテクノロジーズは述べている。
IoTの産業利用では、工場の生産性向上をねらいとしてドイツ政府が提唱している「Industry 4.0」が大きなトピックの1つとなっているが、Q4とQ5に寄せられた回答を見ると、製造現場(工場)での活用より、人間の営みの根幹を支える活動の支援のほうに関心が高いようだ。
「Q6:IoTの普及に向けて、課題に感じることを教えてください」では、「ネットワーク環境の整備」の47.9%、「規格の統一」の44.7%を大きく引き離して、「セキュリティ対策」が76.1%で第1位となった。
Q4・Q5で医療や教育など、個人向けサービスにIoT導入効果を予測する回答が多い中で、真っ先にセキュリティを課題と挙げるのは当然といえるだろう。実際に開発会社などに聞いてみても、やはりセキュリティが課題だと返事が返ってくる。昨日発表され話題となっているソラコムのIoTプラットフォームは、このセキュリティの課題を解決している点に最も注目と期待が集まったといっても過言ではない。
また、第2位の「ネットワーク環境の整備」という課題に対しても、ソラコムのIoTプラットフォームはソリューションを提供している。このように現場からの声に応えた点が評価されたのだろう、開催中のイベント「ITpro EXPO」でSORACOM AirはITpro EXPO AWARD 2015の大賞を受賞した。
なお、設問の選択肢以外について課題と感じる要素を聞いたQ7では、「利用者のリテラシー強化」や「法整備」といった課題を挙げる回答が得られたという。
【関連リンク】
・リクルートテクノロジーズ「~ITエンジニア528名、IoTの未来を大予測~IoT で「情報通信業」「農業・林業」「医療・福祉」が変わる普及は5年以内? 課題はセキュリティ対策か」
・リクルートテクノロジーズ
・ソラコム
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市古 明典(編集部)(イチゴ アキノリ)
CodeZine編集部3年目の44歳。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より現職。9月から翌年2月まではNFL観戦のため、常時寝不足。...
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