伊藤直也氏の講演から「孤独を愛せるか?」
プログラミング実習を通して共同開発の魅力に触れた学生たちだが、もうひとつ彼らに強い刺激になったのが、実習後にスケジューリングされていた、株式会社はてなCTOの伊藤直也氏の特別講演「プログラミングは世界を変える」だった。
伊藤氏は自身の幼少から現在までのコンピュータ体験を語り、その中で「はてなブックマーク」という日本で最も利用されているソーシャルブックマークサービスを開発した経験から、少しだけでも世界を変えたという自負を語るとともに、その自負を裏付けする努力について語った。
世界を変えるほどのプログラマーになろうとするためにには、「人と会う」ことと「継続的学習」が両輪だと伊藤氏は語る。勉強会やセミナー、そのほかオフラインの会合で自分と同じ興味を持っている同年代のプログラマーに出会うことはとても刺激になる。一方で、自分と違うスタイルの人と出会ってショックを受けることもある。
交友は人を成長させるが、一方で萎縮もさせる。自分より優秀な人物に出会ったときの焦燥感。嫉妬とひがみ。優秀な人と会っただけで自分も成長した気になってしまう勘違い。コミュニティの話題に乗り遅れまいとして流行に流される。そういったネガティブな要素を乗り越えるためには、最終的には自分ひとりで深く潜るしかないと語った。
はてなは「ものづくり」の会社を自認しているが、ものづくりは楽しいことばかりではない。フェルマーの最終定理を証明したアンドリュー・ワイルズの例などを挙げ、自分がコレだと見つけた分野の中心に近づくほど、周りの人にはわかってもらえなくなる。「孤独を愛せるか?」「何かを犠牲にできるか?」と伊藤氏は問いかけた。
期待したような吉岡氏のTシャツ
しかし、それでも自分が生きた証にもなるようなサービスを世の中に残せるのは、とても楽しい。そのためには技術やコンピュータ科学を追及していくという技術者として「真っ当」な形でありたいし、常に「実践的」でありたいと語る。例えば「はてなブックマーク」のような日本語ソーシャルブックマークサービスでも、10000人が同じアイディアを考える、100人が作ることができる、10人が実際に作る、そして1人が完成させる。はてなブックマークを実際に作ったのは自分ひとりしかいなかった。
伊藤氏は「10年後にはみなさんがこんな話をしているかもしれない」と語った。ここに集まった17人のプログラマーが授業や実習から共同作業の面白さを知り、そして今後のネット上やオフラインでの交流を通して切磋琢磨を続ける中で、伊藤氏の語るような「自分に深く潜る」ような状況を乗り越えたとき、次の「世界を変えるプログラム」がきっと現れていることだろう。
