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【デブサミ2017】セッションレポート(AD)

プロダクトマネージャーが語る「Yahoo!ブラウザー」アプリの成長戦略とは【デブサミ2017】

【16-A-2】「Yahoo!ブラウザー」アプリのプロダクトマネージャーが考えていること

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数値化した指標を元にアプリの成長手法を策定する

 里山氏が意識していることの二つ目は、「根拠に基づくアプリの成長手法」だ。アプリの確実な成長のために大事なこととして「健康状態のチェック」と「定期的な観察と分析」という二つのポイントが挙げられた。

 アプリの健康状態とは「指標」と言い換えることができる。Yahoo! JAPANが重視している指標は二つあり、一つはKGI(Key Goal Indicator)で、アプリの最終目的の達成を計測する指標だ。例えばEC系のアプリなら売上になるし、ブランディング目的のアプリなら認知度がKGIになる。

 もう一つはKPI(Key Performance Indicator)で、アプリの最終目的に至る過程を数値化して計測する指標だ。KPIの例は、ユーザー規模や一人あたりの売上単価などがある。

 KGIとKPIの関係を構造化したものがKPIツリーだ。KGIはゴールなので一つだが、KPIはそこに至る過程なので、細かく割っていくことができる。

 例えば検索連動型広告の売上をKGIと置いたKPIツリーは以下のようになる。

図2 KPIツリーと施策
図2 KPIツリーと施策

 広告の売上は、DAU(Daily Active Users)と一人あたりの広告クリック数との掛け合わせになる。DAUは新規インストール数と継続利用率を掛け合わせた数値の積み重ねであり、一人あたりのクリック数も、一人あたりの検索数と広告クリック率で数値化できる。

 さらに掘り下げていくと、新規インストール数はチャネル別で分析することができる。アプリがインストールされた翌日以降の定着率のチェックも重要だ。PDCAが回せるレベルまで詳細化し、施策を検討することが重要になる。

 Yahoo! JAPANの社内では、施策別にKPIを日次でグラフ化し、常にアプリの健康状態をチェックしている。定期的なKPIの見直しも行っており、例えばインストール後1か月の画面別・機能別DAUをグラフ化してみると、「ユーザーに支持されている機能」「もう少し定着施策をすれば、使ってもらえそうな機能」「まったく支持されていない機能」に分けることができる。これを見れば、「もう少し定着施策をすれば、使ってもらえそうな機能」を優先的に訴求すべきだということが分かる。

 アプリを確実に伸ばすために行っている手法の二つ目が「定期的な観察と分析」だ。里山氏は「ユーザーの期待やニーズを直接聞き出し、アプリ操作時の発言や表情まで観察」することで、定量的な調査のほか、定性的な調査も行っている。そうすることで、Yahoo!ブラウザーのユーザーのインサイト(行動の核心)を抽出することができるというわけだ。

 例えばブラウザーアプリのユーザーは「お腹が痛いので病院を調べたい」「英語のスペルを知りたい」といった緊急性の課題を持っており、それに対して「自分で調べたい」といった能動的な課題解決欲求がある。さらに、専用のアプリを用意していない課題を持つのでWebで調べたい、という欲求もあるため、ユーザーは「情報到達までの最短化に強い興味を持っている」と分析できる。

 まとめると、プロダクトを確実に成長させるためには、「定量的に指標を定義し継続的にチェック」「定期的にユーザーに聞き、インサイトを得る」という二つの側面が重要だ。

Yahoo! JAPAN一丸となってアプリを成長させる

 里山氏がプロダクトマネージャーとして意識していることの三つ目は、「Yahoo! JAPAN全体の組織連携・組織貢献」だ。

 安定市場での開発リソースの確保は非常に難しい。Yahoo! JAPAN社内だけでもアプリが数多く開発されているため、社内の開発リソースは常に不足しているが、外を見渡しても競合他社によるアプリの配信数は増える一方で、アプリエンジニアの採用も簡単ではない。

 そうした中、Yahoo! JAPANはベトナムに100%子会社のTechbase VietNam社を設置し、自社サービス拡大のための戦略拠点として位置づけている。

 日本とベトナムでネットワークやリポジトリ、コミュニケーションツールなどを共通化し、場所は違えど同じチームとして開発することが可能だ。里山氏が特にメリットを感じているのは、開発ラインをマルチ化できることだ。例えばベトナムで基本的品質改善を行いながら、東京で戦略的なグロースのための施策を打つことができる。その結果、東京は開発施策のトレードオフから解放され、開発ロードマップに幅を持たせることが可能になっている。

 さらにYahoo! JAPANには、“All Yahoo! JAPAN”という行動規範がある。これは「皆一つで、組織に関係無く、全社員一丸になろう」を意味するキーワードだ。

 例えば、“フラッグシップ戦略”という施策では、事業領域毎にフラッグシップアプリを指定し、それ以外のアプリは、フラッグシップアプリに何かしらの貢献をすることが求められる。

 里山氏の所属するメディアカンパニーでは、「Yahoo! JAPANアプリ」という、圧倒的なDAU、MAUのアプリがある。それに対し、ニュースや路線、天気のようなアプリは、コンテンツの提供が価値貢献になる。Yahoo!ブラウザーやスマホ最適化、音声アシストなどのツール系のアプリは、機能提供を軸に貢献している。

図3 フラッグシップ戦略
図3 フラッグシップ戦略

 Yahoo!ブラウザーが実現しているブラウジング機能は、Webビューをタブ化して管理しなければならないため、かなり複雑なのだが、そこの部分をSDK化して社内OSSとして提供した。自分たちのサービス以外にも横断のプロジェクトを組織し、新機能の先行導入をYahoo!ブラウザーで実践した後、枯れた機能としてYahoo! JAPANアプリに提供している。こうすることで「プロダクトの価値をYahoo! JAPAN全体で最大化することができる」と里山氏は語る。

 以上のような取り組みの結果、調査会社App Annie社の調査によると、2014年、2015年はゲームを除くダウンロードパブリッシャーで国内No.1、最新の2016年は、ゲームも含むダウンロードパブリッシャーで国内No.1に選ばれている。

 里山氏は最後に「Yahoo! JAPANでは、圧倒的規模感のあるプロダクト開発が可能だし、また、ユーザーの課題と徹底的に向き合う体験が可能だ」と語り、セッションを閉じた。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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