LINE BOTはとにかくストレスフリーで作りやすい
――『LINE BOTを作ろう! Messaging APIを使ったチャットボットの基礎と利用例』はCodeZineでの連載が元になっていますが、この連載は大変好評になりました。立花さんご自身の手応えはどうでしたか?
立花:こんな反響があるとは予想しておらず、SNSでもいい反応をいただきました。これまでアプリについては書いてきましたが、BOTは初めてだったので、多くの方に興味を持っていただき嬉しく思っています。当時はBOTという技術自体が未知数だったものの、LINEの猛プッシュもあって熱い分野になりつつあるのを感じます。
――連載を始めるときからLINE BOTが盛り上がると予想されていたのでしょうか。
立花:いえ、そこはあまり想像していませんでした。まさかここまで、と驚いています。私自身は新しいことが好きなので、「何でも触ってみる」という中の一つがLINE BOTでした。作っていて楽しかったですし、なにより書いたコードがすぐ目に見える形になるのがよかったですね。ストレスなくリリースまで持っていける環境はモチベーションを保つのに重要です。
もちろん、LINE BOTはLINEが開発したものなので、ユーザー数の多さから期待はしていました。また、最初に触ったときSDKがよくできていると感じ、これからも継続してプッシュされるんだろうなという直感もありました。作りっぱなしのサービスや技術は多々ありますが、そうではないだろうと。早めに触っておけば、将来役に立つかもしれないと思っていました。
――現状、LINE BOTを用いたビジネスはどうですか?
立花:現時点でLINE BOTををビジネスに繋げられるのは、自社でお金が取れるコンテンツを持っていて、それの入り口としてBOTを使っている企業だけだと思います。アプリと同じようにサブスクリプションや課金制、バナー広告を掲載して、といった広告モデルはまだ難しいと思います。LINE BOTのインターフェイスに自然と入り込むようなビジネスモデルが可能になればいいですね。
――周りの方も注目されていますか?
立花:特にアプリを開発している人の注目度は高いです。本書も「買う」と言ってくださっています(笑)。
開発者としては、作るときにストレスを感じないことがLINE BOTの最大の利点です。そこに共感している人も多いのではないでしょうか。特別な開発環境やスペックの高いコンピューターは必要なく、フリーのエディターさえあれば作れますから。
やはり、アプリの開発者にとって開発環境を構築することや、機能の実装以外の余計な手間は大きなストレスです。かつては革新的だったiPhoneとAndroidも、今や無数の解像度に対応しなければならないなど、開発の手間が劇的に増えています。そのため、やっぱりWebがいいと思っている人も多い気がします。
LINE BOTはアプリ開発における面倒な部分をほとんど飛ばせるのが最高ですよね。デバッグも簡単ですし、LINEのアプリ内ですべて完結するので解像度も気にしなくていいんです。アプリの場合は全体工数のほとんどがデバッグや最適化だったりすることもよくあるので、このストレスフリーな開発を楽しんでみてもらいたいです。
あと、SDKの出来がかなりいいということは強調しておきたいですね。リリース当初の技術はSDKもバグだらけのことが多いですが、LINE BOTはそんなことはなく、とても作りやすいんです。やりたいことをシンプルに書いて、簡単に完成させることができます。プログラミング言語も、PHPやJavaなど6言語に対応しています。
LINEのスマートスピーカー「WAVE」に注目
――立花さんはLINE BOTで最初にどんなものを作ったのでしょうか。
立花:リバーシです。言葉を投げかけると言葉が返ってくるチャットボットはたくさんあったので、自分が同じことをやってもおもしろくありません。LINEの場合はゲームを作れるインターフェイスがあり、画像を返したり生成したりすることができたので、リバーシを作ってみました。
驚くことに、リリースしたら1日で2000人ほど友だち追加されたんですよ。口コミで広がったんでしょうね。
――今、LINE BOTは仕事と関わりがありますか?
立花:既存サービスをBOTに対応できないか検討し、できそうなら提案する、というようなことをやっています。こうした活動が私の仕事でありミッションです。
考えてみると、ほとんどの既存サービスにとってLINE BOTはメリットしかないんです。開発の工数は少ないですし、ユーザーは増えるし、バイラルの仕組みもあります。スマホに最適化されたWebサービスがあるなら、その入口をLINE BOTにしない手はないとも言えます。
本書ではLINE Loginの解説もしていますが、これを使うと運営者はユーザーの名前などの情報を取得でき、メッセージも送れるようになります。LINEのメッセージが読まれる割合はメール開封率の何倍もありますよね。ユーザーのほうも簡単にサービスにログインできるようになるので、双方にとってかなり大きなメリットがあるでしょう。
――新しい技術に触ってビジネスに応用する、というミッションに取り組む中で、大切にしていることやこだわりはありますか?
立花:IT業界はスピードが大事だと思っています。新しいものを1番に取り入れて、触ってみて、作ってみて、出してみる。これを繰り返していくと、そのうちどれかが当たります。当たれば、今度はそれに注力するわけです。このやり方はとても大切ですね。
――今注目している技術はありますか?
立花:やはり人工知能ですね。その中でもLINEが3月に発表したクラウドAIプラットフォームのClova、それを用いたスマートスピーカーのWAVEには強く注目しています。スマホは基本的に指以外で入力できませんが、声で入力できるWAVEがあれば、我々の生活はけっこう変わるのではないでしょうか。
※WAVEとは
話かけると音声で会話をしたり、ニュース、天気・占い情報、コマース、カレンダー、翻訳などのコンテンツ・サービスや、音声で家の電気のオンオフなどを行うホームコントール、音声専用コンテンツとして読み聞かせなどができるオーディオブックなどが利用できるようになります。
これからはスマホを触ることすら面倒になる時代が来ると思います。あるいは既に、スマホでゲームをしていたりニュースを読んでいたりすると他のことができません。そんなとき「今日の天気は?」とWAVEに尋ねるだけで答えが返ってくるんです。玄関で靴を履いているときに「今日は傘が必要」と教えてもらうこともできるでしょう。
他にもたとえば、私は料理が好きなんですが、料理しているときは両手が汚れていてスマホに触れません。でも、レシピを見て確認したいときは何度もあります。そこでスマートスピーカーがあれば便利です。いろいろな使い方が考えられますね。
LINE BOTは常識になる
――本書についてうかがいます。狙いはどういったことでしょうか。
立花:既にLINE BOTを作っている方ではなく、これからやってみようという方に楽しんでもらうことを目標にしました。初心者向けですし、そもそもLINE BOTは技術的に難しくはありません。まずは作ってみてほしいですね。
アプリを作ったり、Web開発をしたり、プログラミングで何かしたことがある方なら誰でも理解できると思います。JavaScript等のシンプルなプログラミングの経験だけでも大丈夫です。それ以上の知識があるならもちろん問題ありません。本書より易しい解説書はないでしょう。
――新人の方が研修を終わった段階でも作れますか?
立花:大丈夫です。中学高校でプログラミングを習った方もいると思いますので、その程度の知識でも作れるはずです。
――楽しさやおもしろさを求めて取り組むのはもちろんありとして、LINE BOTをより効果的に活用できるのはどういう方でしょうか。
立花:やはりコンテンツを持っている企業の方ですね。既にアプリでユーザーに公開しているなら、それをLINE BOTにするだけでメリットがあるでしょう。ただ、これからはアプリよりBOTになっていくと思うので、すべてのエンジニアに読んでおいてほしいと考えています。受託の案件でも増えていくはずです。
先に取り組んでおけばアドバンテージを得られますから、今自分のビジネスとは関係ないと思っている方もぜひ読んでみてください。LINE BOTは常識になると思います。LINE@も常識になりましたからね。
LINE BOTの勉強は本書だけで充分
――本書ではどこまでのことができるようになりますか?
立花:LINE BOTでできることはほぼすべて解説しているので、大体のことができるようになります。全8章でWebのAPI、画像、グループトーク、Login、人工知能を網羅していますね。そして形にするだけでなく、公開するところまでフォローしています。
――内容についても簡単に紹介していただけますか?
立花:「Chapter 1 チャットボット(BOT)とは?」ではまずBOTの概念や展望を解説します。「Chapter 2 LINE BOTを作るための準備をしよう」は開発環境、動作環境の解説です。「Chapter 3 LINE BOTアプリの基礎知識とひな形の作成」ではLINE BOTの基本的な機能と使い方を説明し、サンプルを作ってみます。
下地を整えたら、Chapter 4からLINE BOTを作成していきます。「Chapter 4 お天気BOTを作ろう」ではWeb APIを扱い、天気を教えてくれるBOTを作ります。「Chapter 5 リバーシBOTを作ろう」は画像の合成とデータベースです。画像の合成ができるようになれば、できることが増えていきます。どうしても表示画面が小さいので工夫する必要がありますが、それも解説しています。バナー広告やリッチメニューを作るときも画像を扱うので、その手順も学べます。
「Chapter 6 ビンゴBOTを作ろう」は仮想のルームで複数の友だちと一緒に遊ぶ方法を解説します。「Chapter 7 LINE Loginと連携しよう」は先ほどお話ししたようなWebとの連携ですね。「Chapter 8 対話BOTを作ろう」では、IBMのWatson Conversationサービスを利用してWebから会話を設定し、BOTからアクセスできるようにします。カスタマーサポートやスマートホームのシミュレーションを作ってみます。
BOTに関してはこれでひととおり理解できますので、学習には本書だけで充分です。これ以上学ぶことは特になく、次のフェーズは何を作るか考えることがメインになるでしょう。
――おもしろいものを作るコツはありますか?
立花:普段から自分が不満に思ったことや問題点を蓄積しておくことですね。私は昔からやっているんですが、それをどうやって解決するかを考えると自然とアイデアが生まれ出てきます。ブログではアイデアや実際に作ったBOTを紹介しています。
実際、BOTはアイデアを思いついたら半日で作れます。Chapter 3で作る雛形を使えばすぐですし、Chapter 4以降で作るBOTもサンプルとして使えると思います。APIを使うならChapter 4、データベースを使うならChapter 5といった感じです。
――では最後に、読者にメッセージがあればお願いします。
立花:チャットボットはもちろん、スマートスピーカーの発売も控えています。LINE BOTの技術は絶対に欠かせない技術になると思うので、ぜひ本を読んでいただき、一緒に作っていきましょう!