SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

IDDD本から理解するドメイン駆動設計

実践DDD本 第7章「ドメインサービス」~複数の物を扱うビジネスルール~

IDDD本から理解するドメイン駆動設計 第7回


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ドメイン駆動設計(DDD)は、顧客と開発者が業務を戦略的に理解し、共通の言葉を用いてシステムを発展させていく設計手法です。前回は「値オブジェクト」について紹介しました。7回目となる今回は「ドメインサービス」について紹介します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

DDDにおけるサービスとは

 DDDでは、エンティティ値オブジェクト、集約といった「ドメインオブジェクト」だけではなく、それらの外に記述したほうがよいロジックも存在します。そのようなときに、状態を持たないステートレスな「サービス」を使用できます。サービスには、大きく分けて次の2つが存在します。

  1. ドメインサービス:エンティティや値オブジェクトの責務ではないドメインモデルのロジック(複数のドメインオブジェクトを使って計算する処理やファサード)
  2. アプリケーションサービス(詳細は14章):非常に薄く、ドメインモデル上のタスクの調整に使うロジック(腐敗防止層の変換・アダプター等)
DDDにおけるサービス
DDDにおけるサービス

ドメインサービスの特徴

 ドメインサービスの特徴は、ドメイン層の中に含まれ、ビジネスロジックを持つことができる点にあります。本章では、このドメインサービスを中心にご紹介します。

アプリケーションサービスの特徴

 ドメインサービスに対して、アプリケーションサービスはドメイン層を使うアプリケーション層に含まれ、トランザクションやセキュリティのような調整的な処理を行います。

 アプリケーションサービスを活用する例として、コンテキストの統合時に使われる「変換サービス」も存在します。他のコンテキストと連携し、腐敗防止層(3章)を実装する際に、専用のアダプターと変換サービスを用い、ドメインモデルの変換を行う場合があります。この詳細は、境界づけられたコンテキストの統合(13章)にて紹介します。

DDDの「ドメインサービス」と一般的な「サービス」の違い

 一般的な「サービス」という言葉には、複雑なビジネスロジックを使いやすい粒度にまとめたコンポーネントというイメージがあります。また、4章のサービス指向アーキテクチャー(SOA)やRESTで紹介した、リモートプロシージャ呼び出し(RPC)やメッセージ指向ミドルウェア(MoM)を使って、分散システム間で協調する処理を担うことを指す場合もあります。

 しかし、DDDの「ドメインサービス」は従来の「サービス」が示すものとは異なります。「ドメインサービス」は粒度が粗いコンポーネントではなく、トランザクションの責務を担うわけでもありません。

 ドメインサービスの役割は、ドメインモデルが扱う「粒度の細かい処理」を担うものです。その処理がエンティティ(5章)/値オブジェクト(6章)/集約(10章)でもない場合に、ドメインサービスとして実装します。そのため、ドメインサービスはユビキタス言語として表現されます。

ドメインサービスで実装する内容

 ドメインサービスで実装する主な内容としては「さまざまなエンティティ/値オブジェクト/集約を利用して計算するビジネスルール」が挙げられます。また、クライアント側が複雑にならないように、ドメインオブジェクトの構成を変換したり、ビジネスロジックをまとめたりする際にもドメインサービスは使用されます。

DDD本におけるドメインサービスの解説

 IDDD本では、ドメインサービスの説明として、エヴァンス氏の次の説明を引用しています。

 ときには、単純に「物」とはできないこともある。……ドメインにおける重要なプロセスや変換処理が、エンティティや値オブジェクトの自然な責務ではない場合、その操作は、サービスとして宣言される独立したインターフェイスとしてモデルに追加すること。モデルの言語を用いてインターフェイスを定義し、操作名が必ずユビキタス言語の一部になるようにすること。サービスには状態を持たせないこと。

 このように、エヴァンス氏はドメインオブジェクトの責務に適さない重要な操作をドメインサービスとして実装する方向性を示しています。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
ドメインサービスの例

この記事は参考になりましたか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
IDDD本から理解するドメイン駆動設計連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

WINGSプロジェクト 青木 淳夫(アオキ アツオ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/10318 2017/09/05 16:32

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング