ロジカルシンキングやPDCA……リーダーに必要な知識をまとめた1冊がほしかった
司会者から簡単な紹介を受けて話を始めた著者の和智右桂氏。「まず最初にアンケートを取らせてください」と言って、「チームのリーダーを務める人」「メンバーとして動いている人」と順番に尋ねた。挙がった手はどちらも半数程度だ。「今日は参加者の方同士で議論をしていくワークショップなので、活発なものになることを期待しています」と話し、セッションがスタート。
まず、和智氏は自らの仕事について、また今回の書籍執筆に至った経緯について触れた。現在和智氏は、エンタテインメント商材を扱う商社、株式会社ハピネットの情報システム部において、プロジェクトマネジメントに従事している。これまではSIerとして、フレームワークの構築、課題管理ツール開発、運用保守、基幹システムのリプレイスなどを行っていた。同時に、技術本の翻訳などにも携わったが、自身が著者となって書き下ろしたのは今回が初めてだ。和智氏が「リーダー」をテーマに筆を執ったのには、以下のような理由があったという。
「SIerとして長く働いてきた私が、現在のユーザー企業に転職をした際、変化が訪れました。1つは職場が変わることで、自分の中で当たり前だったことが、そうではなくなったということ。わざわざ言葉に出さなくても自然と周りと連携できていたことも、言葉にする必要が出てきました。もう1つは、責任範囲の拡大です。ある程度何を作ればよいか決まったうえで、作る部分を任されていた前職とは異なり、自分たちで何を作るかを決める。決めることがこんなに大変だとは思いませんでした。今までのやり方が通用しなくなった状況で、仕事の仕方を見つめ直す必要がありました」
そういった変化の中で、和智氏は、改めて「組織と向き合わなければいけない」ことに気づいたという。そこで、実際に組織と向き合い、チームを運営しようとすると、勉強すべきことの多さに驚いた。計画作りや進捗管理といったプロジェクトマネジメントに留まらず、ロジカルシンキングや、ファシリテーションテクニック、PDCA、さらには感情のコントロールに至るまで。和智氏は、自身が実際に勉強した内容を列挙しつつ、いかにリーダーの学習すべき知識が幅広く、網羅するのが困難であるかを強調した。そして、これらの内容が1冊にまとまった本がないことにもどかしさを覚え、「ならば、自分で作ってしまおう」と、この書籍の執筆を決めたと話した。こういった経験を背景に書かれたこの本は、特定のトピックを深く掘るのではなく、リーダーとしてやるべきこと、考え方を幅広く捉えたものになっている。
「ジグソー法」ワークショップとは何か
続いて和智氏は、今回の読書会で実践する「ジグソー法」について解説した。
「これは、講義を聴いたり資料を読んだりするだけではなく、アウトプット、つまり自分の言葉で説明したり、人の話に積極的に反応したりすることで、知識や考え方を身につけていく方法です」
まず、参加者にはA・B・Cの3種類のうち、いずれかの資料が配布された。これは書籍の中でも「チームでの議論」を軸に抜粋した3パートだ。そのうえで、今回の読書会ワークショップでは、以下の3ステップで「ジグソー法」が実践された。
- 各々手元の資料を読み、まずは内容を理解する
- 同じパートを読んだ人同士、3人ずつで話し合い、理解を深める
- 別々のパートを読んだ人同士ディスカッションする
また、用意された3種類の資料は、以下の3種類である。
- A:議論は具体的にしよう (本文102~110ページ)
- B:図解力を磨く (本文111~119ページ)
- C:まずは意見を表明してもらうところから (本文138~145ページ)
これらは書籍では3章、4章に書かれている内容なので、読者の方には参照していただきたい。和智氏は、今回のワークショップを「自分の目の前にあるテキストを読み込んだ後、全く違うテキストを読んだ人と議論をすることによって、知識をジグソーパズルのように組み合わせて理解するという趣旨です」と説明し、1つ目のステップに入っていった。