画像認識技術できゅうりの等級判別をサポート
今回が1回目となる「GeekOutナイト」。テーマは「GeekOut」の「インタビュー・コラム」でもたびたび取り上げられており、読者の関心も高い「画像認識技術」だ。
しかし、「画像認識技術に関心はあるものの、どの辺りから取り組めばよいかよくわからない」「どのくらいの量のデータが必要なのかわからない」などの悩みから、具体的な行動に移せていないエンジニアも多い。そんな悩みを解消するには、実際に画像認識技術を実サービスや製品に適用すべく、日々開発に取り組んでいるエンジニアの話を聞くのが得策だ。
このイベントでは個人や企業、それぞれの立場から、画像認識技術に取り組んでいる3人のエンジニアが登壇。プレゼンテーションとパネルディスカッションを行った。
最初に登壇したのは、ディープラーニングを活用し、きゅうりの等級を自動で判別する選果機を個人で開発した小池誠氏。小池氏は元・自動車関連の組み込み系エンジニアで、7年間、業務に従事した後、4年前より実家のきゅうり農家を継いだ。
農業の機械化は進んでいるものの、「きゅうりやトマトなどの果菜類は、手作業が多い」と小池氏は話す。その作業のひとつである出荷時の選別作業を効率化すべく、AIを活用することにしたという。
きゅうりは長さ、太さ、色、つや、曲がり具合などで9つの等級に選別される。「仕分けに定量的な基準はないが、各農家の主観、こだわりが反映される。それが統一されていることが卸売市場関係者の信頼につながるが、その基準を身に付けるのはなかなか難しい」と小池氏は説明。そこで、ディープラーニングを使った画像認識に着目したというわけだ。
試作1号機は2475枚の画像集めから装置の開発までを含めて1週間で作成。80%の正答率だったため、可能性を感じ、試作2号機の開発に着手した。そこで、より人間の作業に近づけるよう、カメラの台数を上下横の3方向に増やし、8500組もの画像データを2カ月かけて収集。7000組学習させたところ、91.6%の正答率を達成した。
しかし、ベルトコンベアで仕分け箱に入れる仕組みを作成し、組み合わせたところ、作業が遅く、しかもきゅうりに傷が付いてしまったことから実用化は断念することになる。
そこで、コンセプトを「作業の自動化から人間の判断のサポート」に変更して3号機を作成。同機は複数のきゅうりをテーブルに並べてカメラで画像を取得、ディープラーニングのネットワークによりきゅうりの等級を判別し、表示するシステムだ。
1カ月かけて集めた画像は36000枚。画像以外にも長さ、表面積などの情報を入力して判断している。収穫時期によって異なるきゅうりの太さにも対応できるよう、キャリブレーションの仕組みも搭載した。カメラの台数を減らしたことにより認識率は8割弱と2号機よりも落ちたが、「従来作業の1.4倍のスピードアップが図れた」と小池氏は語る。現在はさらに改良した4号機を開発しており、8月には完成を目指している。