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イベントレポート

100万円未満でAmazon Goを再現!? 「横田deGo」の開発秘話とAmazonの文化に迫る

「Developers.IO 2018」セッション「Amazonの文化をハックせよ。100万円未満で無人レジの仕組みを作ってみた 〜横田deGoプロジェクト〜」レポート

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より良い顧客体験を生み出すため、「シーズン2」が始動

 お披露目を終えた横田deGoだが、まだ課題はいくつも残っていた。複数の人が同じ棚にいる場合に精度が落ちる、商品の判定にかかる時間が長い、などだ。これらの課題を解決し、より良い顧客体験を生み出すため、シーズン2が始動。速度・精度改善のために、どのような取り組みをしたのだろうか。

 「まず、サーバー側のロジックが複雑になっているという課題を解決する必要がありました。なぜ複雑なのか。それは、複数センサーの情報を独立操作し、すべての情報がそろったら次のステップに進む制御をする必要があったからです。この課題は、分散アプリケーションの制御を行ってくれる『AWS Step Functions』によって大幅に改善しました。

 さらに、お客さまがある棚から商品を取って別の棚に戻してしまう『イタズラ』の対策にも取り組みました。『Amazon SageMaker』を使って、商品オブジェクトの検出モデルを作成していったのです。最初は商品の表面画像のみを、後に裏面画像も学習させ、裏表どちらが上になっていても判定できるようになりました」

 より精度を高めるため、彼らは検知用のセンサーを増やした。測距計と呼ばれる、物体との距離を測るセンサーを取り付けることで、お客さまが商品棚に手を入れた場合に検知できるようにしたのだ。結果として、シーズン2の横田deGoは判定速度の大幅な改善を実現したという。

Developers.IO 2018の会場では「横田deGo シーズン2」のデモも実施された
Developers.IO 2018の会場では「横田deGo シーズン2」のデモも実施された

プロジェクトを通じて感じた「Amazonの文化」とは

 セッションを総括し、横田氏はプロジェクトを通じて得た学びについてこう語る。

 「未知の体験を作り出すプロジェクトの場合、文字や言葉で仕様を表現することは難しいです。今回は動画による要件定義を行ったことで、関係者全員がAmazon Goの体験をしていなかったにも関わらず、共通認識を持ってプロダクトを作ることができました。

 仮説に基づいて高速にプロトタイピングすることも大事です。シーズン1もシーズン2も、開発期間は実質3週間くらいでした。そのうち1週間はプログラミングで、2週間はセンサーやハードなどの設置や検証です。テストをくり返すことで、いくつもの課題を発見し、それに対する解決方法を見つけ出すことができました。

 エンジニアは今後、『総力戦』が求められる時代になってきます。今回のプロジェクトでは全レイヤーの知識を総合的に活用し、その結果良いプロダクトを生み出せました。『フロントサイドだけやる』『サーバーサイドだけやる』ではなく、各レイヤーの知識を学び、活用する姿勢が重要となるでしょう」

 横田氏は最後に、セッションのタイトルにもある「Amazonの文化」について語った。

 「彼らは、自分たちでリスクを冒しながら多数の実験と失敗を重ねてデータを蓄積しています。チームとして学習を続けながら、より安価かつ簡単にサービスを実現するための挑戦をくり返しているのです。

 Amazonは最近、非常に安価な電子レンジのオリジナル製品を発売しましたが、あれはおそらく膨大な量の実験が生み出した成果物のひとつです。技術によってどんな未来を描けるのか、彼ら自身が試行錯誤し続けているのだと思います」

横田氏が考える「Amazonの文化」
横田氏が考える「Amazonの文化」

 「考える」と「行動する」の間には、大きな隔たりがある。何かアイデアを考えついても、行動に移せる人間はほんのわずかだ。そして、いつの時代も「行動した人間」だけが、新しい道を切り開いてきた。

 机上の空論で終わらせないこと。まずやってみること。実験を重ねて改善し続けること。そうした行動を高速にくり返すことで新しい事業は立ち上がるのだと、本セッションは教えてくれた。

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この記事の著者

中薗 昴(ナカゾノ スバル)

 週の半分はエンジニア、もう半分はライター・編集者として働くパラレルキャリアの人。現職のエンジニアとして培った知識・経験を強みに、専門性の高いIT系コンテンツの制作を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/11153 2018/11/22 14:00

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