CTOが求める人物像と関西のIT事情
「スタートアップ企業のCTOは、担うべき業務領域が非常に広い」――民輪氏はそう解説する。なぜならスタートアップ企業のCTOは、CTO・VPoP・VPoEそれぞれが持つ職務のすべてを一手に引き受けるケースが多いからだ。技術の方針策定やコーディングはもちろん、採用やマネジメント、経営方針を踏まえたプロダクト成長プランの策定、ビジネス拡大のための営業・マーケティングなど、担当業務は枚挙にいとまがない。
そんなCTOはいったい「どんなエンジニアがチームにいてほしい」と考えるのだろうか。その答えは「CTOを助ける人材」「チームを助ける人材」「会社全体に求められる人材」だと民輪氏は語る。
「CTOはかなり忙しいですから、自分の業務の一部をはぎ取ってくれる人はとても貴重です。それから、CTOにも必ず欠点があるので、弱い部分を補完してくれる人はありがたいと感じます。
チームを助ける人材としては、報・連・相が正確な人や、仕事に精度の高さと細やかさがある人などです。SlackのメッセージやPull Requestのコメントなどにわかりやすい説明を書いてくれるエンジニアは、一緒に働いていてとても助かります。
それから会社全体に求められる人材としては、自己研磨や自省ができる人。要するに自分自身でPDCAを回せる人です。それから、自分で方針を考えて実行できる人も重要な存在です。基本的にスタートアップ企業は常に人材不足。自走する意識を持って、アクションを起こしてくれる人が必要なんです」
民輪氏は次に、関西のIT事情について触れた。「現状は、関東と比べると関西でIT企業を経営するのは少し苦しい」と本音をこぼす。関西のエンジニア求人数や勉強会の開催数は、東京の数分の一ほどだ。IT企業にとって、関西はまだまだ土壌文化づくりのフェーズにあるという。
採用においても課題がある。関東にあるメガベンチャーの人事担当者が関西に出向き、主要大学の優秀な学生を発掘して、関東のインターンでそのまま内定を出してしまうケースが多いのだという。また、関東のベンチャーキャピタルが関西発のスタートアップに出資し、一定規模まで成長してから関東に所在地を移転してしまうケースもある。関西において、人材と企業の空洞化が起きているのだ。
だが、「けして悪い面ばかりではない」と民輪氏は語る。ここ数年ほどの間で、関東で成長したベンチャー企業が関西に進出するケースが増えてきた。市などの行政によるアクセラレーションプログラムの実施も盛んになってきている。加えて、コミュニティが小さいからこそ各エンジニアが密接につながりやすいといった利点もある。「2025年には大阪万博も控えているため、今後は経済的な成長も期待できる」と前向きだ。
関西は関東と比べると最新情報に触れる機会が少ないため、いかにして情報収集をするかが重要となる。技術系ブログや技術系メディア、TechCrunchなどのニュースメディアなど、インターネットからの情報収集は不可欠だ。民輪氏はSlackに専用のチャンネルを作成し、RSSを利用して自動的に情報収集をしているそうだ。また、積極的な勉強会への参加やプライベートな時間を利用した新技術への挑戦など、自己研さんの意識が重要だと語った。