優秀なエンジニアがさらに成長できる場を目指して
本セッションに登壇した森田氏はグリーに入社して10年目。マネージャー歴7年、シニアマネージャー歴5年という中堅で、グリーの男性社員初の長期育児休暇を2回取るなど公私のバランスを取りながら働いてきた。所属部門は、インフラや情シス、データ、デザイン、セキュリティなど、事業部を横断的に見る開発本部で、森田氏が見ているアナリシス&データエンジニアリンググループは3人のマネージャーに15人のメンバー、その半分がエンジニアといった構成だ。
森田氏は、高い技術力でカリスマ的に引っ張っていくタイプではなく、自分よりも優秀なメンバーもいる中で「マネジメント」に課題感を持ってチーム運営に取り組んできた。会場ではマネージャー職にある聴講者の3分の1ほどが「部門に自分よりも技術力の高いエンジニアがいる」と答えており、他の組織でも多い悩み・課題のようだ。
「一般的に、優秀なエンジニアがさらなる成長を求めて旅立ってしまうことは多いと思う。もちろん、個人的なキャリアを考えれば転職は悪いことではないが、マネージャーとしては優秀なメンバーには残ってほしいので、そのために組織として何ができるのかを考える必要があった。また、中途採用社員の入社の判断基準の多くが『自分が成長できる環境か』であることもあり、競合他社より成長を支援できる環境を用意できないかと考えた」
事業貢献は自分の職務に対する制約条件と割り切る
成長支援を考える上で大切なのが「WILL=本人が望む成長」「CAN=できること」「MUST=組織がメンバーに望む成長」のフレームワーク。マネージャーは、WILL / CAN / MUSTの重なりが大きくなるよう努力する必要がある。その中で本セッションで語られた成長支援は「CANを動かすこと」に該当し、後半に出てくる事例のほとんどはCANに相当する。
WILL / CAN / MUSTの重なりはどのようにして大きくできるのだろうか。まず、組織が求めながらも、そのスキルや意欲を持つ人がいない時、どうするのだろう。森田氏は、既存チームの外にいてWILLを持っている人を見つけだし、その人をチームに組み込み専門職集団として組織化していくことでMUSTへの対応を行っているという。また、事業ニーズのハックによってMUSTを動かすこともあるという。
また、WILLについては、「良い先輩、良いコード、良いビジョンが重要で、良いものが周りにあれば正しい方向にWILLが向くはず」と語った。
次に、マネージャーとして成長にコミットする事を目的とした場合、「事業貢献」をどう考えればいいのか。森田氏は「もうここはポジショントークでいいのでないか」と語り、「最適化には目的関数と制約条件があるが、事業貢献は自分の職務に対する目的条件でなく、制約条件であると割り切っていいのではないか」と言い切った。
「目標や予算はコミットするが、目標を超えた利益追及を求めることはしない。それよりも組織としての成長を最大化すべき目的としたい。もちろん利益追求を目的関数としているマネージャーもいるべきで、組織の中でのバランスを取れたらと考えている」
例えば既に事業目標の達成が見込めている場合、事業貢献効果が高くともWILLにマッチしないプロジェクトは寝かせるといった判断を、意識的に行うわけだ。