※本記事に記載されている数値などの情報はいずれも、イベント開催時点のもの。
「クックパッドのレシピ検索とレシピコミュニティ」
料理レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」は、膨大なデータを扱っているサービスだ。国内レシピの数は2019年6月30日時点で約310万品、つくれぽ(クックパッドに投稿されているレシピをもとにユーザーが料理をつくり、その感想を写真付きで投稿するという機能)の数は約2200万件、国内の月間の利用者数は約5400万人。想像もできないほどの数値である。
多量なデータがある中で「良いレシピが簡単に見つかる」「投稿したレシピにつくれぽが届く」というユーザー体験を創出するには「検索エンジンをどう最適化し、どのようなランキングを表示するか」が、極めて重要となる。
「クックパッドの検索結果には『新着順』と『人気順』によるランキングがあります。『新着順』から新しいレシピを見ているのはおおむね無料ユーザーで、有料ユーザーは古いレシピも含めて『人気順』をよく見ている傾向があります。利用者の大多数は無料ユーザーであることを踏まえると、『料理を投稿すれば、つくれぽがすぐに来て、レシピ投稿者がうれしい気持ちになる』というユーザー体験を創出するには『新着順』をどう機能させるかが重要になるわけです」(兼山氏)
また、「新着順」の表示内容には別の工夫も施している。ユーザーが目的のレシピを探しやすくなるように、関連検索を利用し先回りして検索する「リランク」という操作を行っているのだ。
例えば、ユーザーが「ローストビーフ」と検索した場合を考えてみよう。クックパッドには数多くのレシピが投稿されているため、単純に投稿時間が新しい順に表示すると「ローストビーフ丼」や「ローストビーフのタレの作り方」などユーザーの目的に沿っていないレシピも数多く出てきてしまう。「ローストビーフ」という検索クエリから考えると、もっとも目的に沿っているのは「ローストビーフの作り方」だろう。
「こうした事態を防ぎ、ユーザーにとって有益な検索結果を実現するために、リランクを活用しています。特定のキーワードで検索したユーザーが、次に何を検索するかというデータを集計しておきます。そのデータを用いて、次に検索する可能性が高いものを、ランキング上部に重複しない形で表示しているのです」(兼山氏)
だが、この仕様にはジレンマもある。先頭に関連性の高いレシピを集めると、ポジションバイアスによって閲覧されるレシピが偏ってしまう。つまり、多くのレシピを見てもらう機会が減るのだ。「ユーザーニーズとの関連性が高い検索結果」と「より多様性のある検索結果」のバランスを取るために、同社では日々、検索アルゴリズムの改善が行われており、進化を続けている。
また、「人気順」の工夫についても兼山氏は解説する。「人気順」によるランキングにおいては、当然ながらレシピの人気度が非常に重要だ。加えて、検索クエリとレシピの関連性も重要になる。それらを鑑みた適切なランキングを実現するため、前日のクリック情報をもとに順位を調整し、リランクしているという。その結果として「普段と同じ検索キーワードでも、新しい発見がある」というユーザー体験の創出につながるのだ。
クックパッドの利用者にとって「検索結果にどのようなレシピが表示されるか」は、サービスの利便性そのものを左右する極めて重要な要素である。検索機能において、同社が数多くの工夫を行っていることが伝わるセッションとなった。