「メルカリ商品検索のUI/UXと新たな挑戦」
株式会社メルカリでは近年、検索チームの採用強化を行い、検索基盤の刷新とマッチング精の大幅改善を行った。その結果、購買転換率だけでなく、出品転換率などの主要KPIも軒並み改善。その結果として生じる事業インパクトは月間GMV(取引総額)で約20億円/月と試算されたというから驚きである。
「検索アルゴリズムをきちんと改善すると、購入だけではなく出品も伸びるのが『メルカリ』らしいところです。なぜなら、メルカリで検索をする方の中には『商品を買いたくて検索する人』と『商品を売りたくて検索する人』の両方が共存しているからです。後者の方は、SOLDアイテムの価格を見て、その商品がどれくらいの金額で売れそうかを見ています」(森山氏)
では、どのような手法を用いて検索の精度改善を行ったのだろうか。森山氏は、その鍵は、膨大な検索データから構築したシノニム(同義語や打ち間違い)自動処理によるゼロマッチ経験率の改善と、検索キーワードと商品との関連性に新着性を巧みにブレンドしたランキングの最適化にあると語った。そして、それを実現した具体的なアーキテクチャについて解説した。改善のポイントとして「メルカリにおいては、一般的な検索キーワードとの関連性を向上させるだけでは、逆にKPIが悪化するケースもあるため注意が必要」と森山氏は続ける。
「メルカリの場合、情報検索のセオリーに沿った検索アルゴリズム最適化を適用するだけでは、お客さまの行動指標は目に見えて悪化します。上の図の左と右の違いはわかりますか? ほぼ同じような検索結果に見えますが、右側はクリック率が10分の1になっています。その理由は新着性を失っているからです。右側は検索アルゴリズムにおいて『新しく出品された商品であること』を優先せずにランキングが生成されるため、何度検索しても結果がほとんど一緒なんです。
左側は新着性と関連性のバランスを重視するアルゴリズムであるため、キーワードによっては何回も検索するとどんどん検索結果が変わっていきます。特にメルカリでは、商品によっては毎日どんどん新しい商品が出品されるため、もっと安くて良いものを探しているユーザーの購買行動へ強く結びついており、ビジネスへのインパクトが大きいわけです」(森山氏)
また、メルカリでは最近、特定の商品カテゴリにおいて、検索結果のUIを変更した。例えば、自動車などがそれに当たる。これはなぜか。例えば「軽トラック」を検索しているユーザーは「どのような見た目なのか」をほとんど気にしない。どのメーカーの軽トラックも、それほど外見には大差なく、ユーザーも外見の良さを選定基準にしているわけではないからだ。むしろ、年式や走行距離、地域などが、選定基準として重要になるだろう。
そうした場合に、メルカリのデフォルトの検索結果画面のように、商品の写真と価格だけが大量に並んでいるUIは、ユーザーにとって便利とは言い難いだろう。そのため、下図のように「その商品を探している人にとって本当に必要な、比較するために必要な情報」が表示されるUIに変更したのだ。
「その結果、確かにクリック率は下がりました。ですが、お客さまにとっての利便性は向上しています。なぜなら、『それまでは、何度もクリックしなければ閲覧できなかった比較するための情報が、クリックしなくても閲覧できるようになった』からです」(森山氏)
「クリック率が高いことは良いことだ」と無意識に判断してしまう企業は多い。しかし、「特定の指標が動いた場合には、それが何を意味しているのか根本的な理由を考えなければならない」と森山氏は強調した。
