既存の仕組みを受け入れつつ、疑う
――他に、開発を円滑に進める秘訣はあるでしょうか?
高際:既存の仕組みをまずは全面的に受け入れて、そのうえで疑うことですね。例えば、何か特定の業種に携わるようなプロジェクトを担当した場合、エンジニアの目から見て「この文化や慣習には、何の意味があるのだろうか」と疑問に感じることがあるかもしれません。
ですが、ルールがあるからには、作られた背景や理由が必ずあるはずです。コンテキストを理解せずに「無駄なものだから、無くしてしまおう」と考えてはいけません。どのような意図で、文化や慣習が生まれたのかを私は調べるようにしています。調査したうえで「なるほど。だから必要なのか」とわかることも多いですし、逆に「仕組みを変えても大丈夫そうだ」と判明することもあります。
例えばある企業において、「○○に機密情報を置いてはならない」というルールがあるとします。その本質的な理由が顧客情報の保護のためであるならば、アクセス権限の制御を行う、アカウント管理を行うといった方法をとることで、セキュリティを担保しながら既存のルールを変えられる可能性が出てくるわけです。
――既存の業種や企業の仕組みを変えていく際に、参考にしたい考え方ですね。
高際:「既存の仕組みを変えていく」といった意味でいうと、より抽象度の高い別の話もあります。「より効率の良いプロダクト開発のためには、企業の意思決定のプロセスも変えていく必要がある」というものです。
近年流行しているソフトウェア開発の手法として、アジャイル開発がありますよね。これは、さまざまな施策を小さく試しながら、良い部分は継続し、悪い部分はふり返って改善を続けていくという手法です。
ですがこの考え方は、大規模なプロジェクトなどで用いられる「多くの方々の合意を得て、間違えないように着実に前へと進めていく」思想と相反する部分があります。それぞれの手法における、意思決定のプロセスが衝突してしまうわけです。
プロダクト開発をより良い形で推進するには、プロジェクト担当者が自発的に意思決定のプロセスに介入し、開発の流れがよりアジャイル的になるように変えていく必要があると感じています。
開発力を支えるのは組織力
――高際さんが、プロダクト開発においてさまざまな工夫をされてきたことが伝わりました。こうした知見は、社内でも情報共有されていますか?
高際:していますね。LayerXには、自分たちが学んだことを積極的にチーム内で共有する文化があります。冒頭でもお話しした、海外の先進的なブロックチェーン研究・事例についての取り組みはその好例です。また当社では、社員同士が知見を共有しあうための時間が毎日確保されており、技術情報はもちろん業界研究や役に立った本など、多種多様な情報をメンバーが紹介しています。
「チーム全員で知識を高めていく」という姿勢は、LayerXの重要な文化です。1人のエンジニアが調べられることには限りがありますが、チームが一丸となって調査・学習することで、何十人もの力を合わせられるのでレバレッジが効きます。
――LayerXの組織としての強みが伝わります。最後に伺いたいのですが、高際さんは「プロダクト開発を牽引していく人に必要なマインド」とは何だと思われますか?
高際:「学び続けて改善し続ける姿勢」だと考えています。個人としてだけではなく、組織や企業においてもその姿勢は同様に必要です。だからこそ「改善し続けられるチームをつくる」ことは重要だといえます。
先ほどお話ししたように、1人では実現できないようなことも、チーム全員で力を合わせればきっと実現できます。良いチームをつくることが、プロジェクトの成功にもつながるはずです。
――プロダクト開発者にとって、学びの多い言葉ばかりでした。今回はどうもありがとうございました!
