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ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー

プロダクト開発を支えるのは、“組織力”――LayerXが高い課題解決力を持つ理由


 ブロックチェーンの雄として知られる株式会社LayerXは、主に金融領域におけるリーディングカンパニーと協業し、ブロックチェーン技術に関連するサービス開発、実証実験、技術コンサルティングを行う企業だ。同社の事業を支えている柱は、技術力だけではない。「プロダクト開発の“総合力”が高いことが、私たちの強み」と、シニアソフトウェアアーキテクトの高際隼氏は語る。過去のプロジェクトにおいて、エンジニアリングだけではなくプロダクトマネジメントの役割も担ってきた高際氏に、LayerXのプロダクト開発力の源泉について伺った。

積み上げてきた信用が、LayerXの土台を築いた

――LayerXはブロックチェーン技術に強みを持つ企業として知られています。2018年の創業当初から、対外的に高い信用を得ていたのでしょうか?

高際:創業して間もない頃は、まだ知名度も低かったので、現在ほどの信用は得られていなかったように思います。ですが、契約してくださったお客さまの期待値を超えるような仕事を続けていった結果、さまざまな企業さまから案件をご依頼いただけるようになりました。今では、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井物産、日本マイクロソフト株式会社といった有名企業さまとの協業も行えるようになっています。

株式会社LayerX シニアソフトウェアアーキテクト 高際隼氏
株式会社LayerX シニアソフトウェアアーキテクト 高際隼氏

――「社会的な認知度や実績がない状態から、徐々に信用を積み上げていく」ことは、LayerXに限らずどの企業にとっても重要なプロセスです。御社が信用を得られたのは、何を大切にしてきたからだと思われますか?

高際:各社さまの信用を築くうえで、いくつか重要だったポイントがあります。例えば、海外でのブロックチェーンの先行研究や導入事例について、入念なリサーチを続けてきたこと。その結果として高い提案力が身についたことです。

 日本以外の国、特に中国などではブロックチェーンの先進的な研究や事例が数多く登場しています。そういった情報は第一報が中国語で発信され、その後に英語に翻訳されます。ですが、翻訳者による意訳や認識違いが原因で、情報の誤りや欠落が生じるケースがあるのです。日本のメディアはその情報をもとに日本語に翻訳しますから、情報が日本に届くまでには時間もかかりますし、原文とニュアンスが大きく変わってしまうケースもあります。

 そうした課題を解決するため、LayerXのリサーチチームのメンバーは中国語で書かれた原文まで読み込み、ブロックチェーンに関する最新の事例や研究を徹底的に調査してきました。それらの情報のなかから、私たちの事業と関連性が高そうな要素を抽出し、お客さまに技術提案を行うことに役立ててきました。この調査内容は「LayerX Newsletter」として外部にも情報発信しており、誰でも閲覧できるようになっています。

――海外の先進的な情報をもとに技術提案できることは、企業としての大きな強みになるでしょうね。

高際:調査だけではなく、案件の要件定義や開発においても当社は強みを持っています。エンジニアチームには開発経験の豊富なメンバーが数多くおり、CTOやプロジェクトの技術責任者を務めたことのある者も複数所属しているのです。

 さらに、LayerXにはR&D(研究開発)を専門とするメンバーも所属しています。彼らは企業で研究開発の業務を担うだけではなく、ブロックチェーンの開発コミュニティに対しても多大なる貢献を続けてきました。さまざまな強みを持ったメンバーがおり、対応できる領域が広いこと、かつ高い専門性を持っていることが、企業としての信用を築けた理由なのではないかと考えています。

全員の認識を合わせることが、良いプロダクト開発の近道

――プロダクト開発を成功させるために、高際さんが工夫されてきたことはありますか?

高際:いくつかあります。まず、ステークホルダー全員の認識を合わせることですね。過去に私が担当したプロジェクトである、不動産の利用権をトークン化してプラットフォーム上で取引する「Cryptorealty(クリプトリアルティ)」を例にご説明します。

 「Cryptorealty」のプロジェクトには、事業を共同で進めてくださっている株式会社ツクルバの方々や、アセットマネジメント関連や会計監査関連の企業の方々など、多くのメンバーが参画していました。これらのステークホルダーの認識に相違があれば、プロジェクトの進行に支障が出ますし、手戻りが起きてしまう可能性もあります。

――複数企業が関わるプロジェクトでは、よくある話ですね。

高際:そうした事態を回避するため、プロジェクトの序盤に各ステークホルダーの認識を合わせるための合宿を行いました。各社のコアメンバー数名ずつが合宿に参加し、一緒にインセプションデッキ(プロジェクトの目的や背景、優先順位といった情報を端的に伝えるためのドキュメント)を作成していったのです。

 人数が多いですし各社の考えも違いますから、意見をまとめるのには時間がかかりました。ですが、初期の段階できちんと認識合わせができたことで、全員の一体感が生まれ、その後の進行も非常に円滑になりました。

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既存の仕組みを受け入れつつ、疑う

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この記事の著者

中薗 昴(ナカゾノ スバル)

 週の半分はエンジニア、もう半分はライター・編集者として働くパラレルキャリアの人。現職のエンジニアとして培った知識・経験を強みに、専門性の高いIT系コンテンツの制作を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(編集部)(オカダ カコ)

2017年7月よりCodeZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。JavaScript勉強中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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