エンジニアがプロダクトや事業への理解を深める方法
――エンジニアが事業やプロダクトの成長に貢献することを考えた時、具体的に何から始めたらいいか分かりづらいと思います。何を足がかりにするといいでしょうか。
手塚:エモい表現ですが、事業やプロダクトに愛があるかだと思います。愛があるから、もっとこうしたい、よくしたいとか出てきて行動が変わってくる。愛がないなかで、事業やプロダクトをよくしようという発想はなかなか出てこない。プロダクトをわが子のように思うのは最初の前提として必要かなと思います。
――プロダクトマネジャーにお話を聞くと、プロダクトへの愛を重視する方は多いです。エンジニアがプロダクトに愛を持つためにどこに着目するか、何から始めるか、ご提案はありますか?
松本:自分のチャレンジでもあるのですが、エンジニアリングをしながら事業やプロダクトを自分ごとのように意識できるようになることは「没頭するにはどうすれば」という問いだと思います。
エンジニアに愛を持ってもらうには、プロダクトをまとめる人がプロダクトの情報を提供することや、どこが面白くて、なぜ自分が熱意を持てるのかを言語化して伝えられるかが大きいと思います。
だからエンジニアの問題ではなく、マネジメントや経営によるものだと思っています。先述した通り、かつてはエンジニアに伝わる情報が少なかった。まだその流れがあるなかで、エンジニアに経営目線を持てというのは無理が出てきます。そうした目線や文化を醸成していきたいのであれば、事業の情報を持つ人が情報を提供して情報の格差をなくす。かつそこにどれだけ熱意を込められるかが最初にやるべき大きなことかと思います。
手塚:とても大事なことですね!
――エンジニアからできることがあるとしたら、事業に通じる人たちと積極的にコミュニケーションとることになるのでしょうか
松本:そうですね。反応や関心がないなかで情報を与え続けるのはしんどいですから。もしエンジニアで事業やプロダクトに興味があり、キャリアのために何をすればいいかと考えているなら、機会があれば興味があることや、熱意をもって反応していくと、相手もより多く情報を出してくれるようになると思います。双方の努力や歩み寄りが必要ですね。
手塚:そのあたりはコロナで難しくなりましたよね。難しい話題を伝えるにしても、反応や熱量が分かりにくい。そうすると発信する側として迷いも生まれますし。「ただやめたら終わり」というのも分かるので、情報を発信し続けるのは重要です。
松本:オープンソースのコードを書いて、使ってもらう、反応してもらう時の楽しさは事業やプロダクトにも共通していると思います。プロダクトを実際に使ってもらった時の反応に触れてみるとか、そういう体験をするのもいいかと思います。
――組織のプラクティスというところまで視点を拡げると、何かポイントはありますか?
松本:ぼくだとスタートアップの人たちと関わったことが転機でした。事業やプロダクトの楽しさもあり、制限があるなかで技術もプロダクトも両方考えなくてはならない。お金がなかったら誰かにお願いするか、収益を上げる方法を考えなくてはならない。そうした苦労に直面している人たちと関わることで多くの学びがありました。すぐにはできないかもしれませんが、スタートアップのエンジニアまたはスタートアップに関わるエンジニアと接する機会があるといいかもしれません。目から鱗が落ちると思いますよ。最も刺激的な方法ではないかと思います。
手塚:これまでの流れと逆流するようで難しいのですが、これまで愛とスピードで突き進んできましたが、資金調達などを通じて「できないことができるように」なってきています。
企業の規模が大きくなるなかで生産性を高めることを考えると、(松本さんが言うように情報を与えるのとは対照的に)他の認知を与えずに集中する環境を作ることも大事な要素だと思っています。それぞれの職人が職人らしく仕事に没頭できる環境も重要だと思っていて、チームトポロジーの話になるのですが、無駄なコミュニケーションを必要としない組織設計も規模が大きくなるにつれて重要になると考えています。明確な答えはないのですけど。