いきなり転職はリスク!? 副業を活用した新たなキャリア形成のあり方
それでは「個人レベル」においては、副業とキャリアはどのような関係があり、相互に影響を及ぼすのか。まずは一例として、ahomu氏自身の副業とキャリアについて紹介された。
ahomu氏の副業としての経験は、2019年以前に技術誌寄稿やセミナー講師などからスタートする。とはいえ、寄稿や登壇には報酬が発生していなかったが、それを見た人からスカウトされ、有料のセミナー講師や書籍の執筆へと副業的な仕事が入ってくるようになったという。そして、2019年に技術顧問としてoverflowに参画し、2022年に同社にVPoEとして正社員採用となった今も、アドバイザリーとして他社で副業を行っている。
ahomu氏は「もちろん一例であり、必ずしも再現性があるものではないが、無償での活動を行なっているうちに市場価値が高まり、技術顧問を引き受けに至り、overflowに転職して新しいキャリアチェンジへとつながった」と語った。
そうした時、「本業・転職・副業」はそれぞれキャリアにおいてどのような位置づけになるのか。まず、本業はやはりキャリアの実績、主軸となりやすい。責任を担えるポジションで、かつ自己実績の“トロフィー”となる。さらにキャリアが設計された会社であれば、段階を踏んで成長することもできる。しかし一方で、社内ローカルなスキルに囚われてしまったり、クローズドな環境で市場価値を見失ってしまったりというリスクも否めない。
そんな時に、「転職」は行き詰まったキャリアを打開するための一つの脱出口とされている。社内昇給よりも転職したほうが年収が上がるということもよく聞く話だ。しかしながら、やはりリスクも大きく、入る前と話が違うという「転職ガチャ」のような環境要因の事故や、転職回数の多さはネガティブに見られて敬遠されることも多い。ハイリスクとは言わないまでも、ミドルリスク&ミドルターンくらいとはいえるだろう。
それでは、キャリアのための「副業」はというと、本業を維持したまま「新しいスキルや経験、コミュニティにアクセスできる」というメリットは大きく、転職のようにジョブホッパー扱いされないのもいいところ。ただし、単純に可処分時間を一定消費し、そもそも禁止されている会社も少なくない。
そこでahomu氏は「キャリア上のリスク」を再掲し、それと照らし合わせて「本業・転職・副業」の関係性から”よりよい可能性や選択肢”を考えることを提案。つまり、従来は本業が行き詰まったら「転職チャレンジ」で突破する一択だったが、今後については「副業でリスクヘッジ」しながらキャリアを積み上げるという可能性も考えるべきというわけだ。特にリモートワークが一般化する中で、副業はよりやりやすくなっており、今が好機ともいえる。
ahomu氏は「転職をゴールにする必要はなく、副業による副収入やもう1つのスキルがあるということは、心の余裕にもつながる」と語る。本業側から見れば、リスクテイクやチャレンジがしやすくなり、外部で得られた知見をフィードバックしてキャリアを高めていくこともできる。一方、転職側から見れば、トライアル的な就業体験になり「転職ガチャ」のリスクを減らし、本業以外の収入や人との接点があるということは、いざ本業でなにかあったときの支えにもなるというわけだ。ahomu氏は改めて「本業にも転職にも、副業によるリスクヘッジが有効に作用する」と強調した。