「副業」がITエンジニアのリスクヘッジとなる
ahomu氏は、Webフロントエンドエンジニアとして、Web UIの開発・設計・品質向上を専門とし、前職のサイバーエージェントで始めた愛知からのリモートワークは、2019年から技術顧問を務める株式会社overflowでも引き続き実施しており、足掛け8年目を迎える。2022年からVPoEとなり、近年はエンジニアリングマネジャーとしてエンジニア組織の開発や各種戦略立案に携わり、同社の副業・転職プラットフォームサービス「Offers」のプロダクトオーナーとして企画開発も行なっている。
そんなahomu氏にとって、「副業」はキャリアを考える上で重要なキーワードであり、いわば「キャリアのリスクヘッジ」に該当するという。
本来リスクヘッジとは、危険を予測し、それを避けるように対策を図ることを指すが、”危険”には、「思いがけない事柄」や「回避が難しい状況」なども含まれる。キャリア上で言えば、たとえば「コンフォートゾーンの長期化」もその1つだ。仕事に慣れるに従い、居心地は良くなるがチャレンジがなく物足りなさを感じるようになる。キャリアアップしていくという意味ではリスクと言えるだろう。
また、「社内キャリアの行き詰まり」や「扱う技術のマンネリ、陳腐化」などへの危機感などもあげられる。タイミングによっては「成果の出る事業に関われないこと」もあれば、選考中のイメージと入社してからの雰囲気や業務が違うという「転職ガチャの失敗」もあるだろう。また、介護や育児などでフルタイム勤務が難しくなる「不意のライフステージ変化」も侮れない。
ahomu氏は、「そうしたキャリアのリスクヘッジのために『副業』を活かすことができるのではないか、その効果や可能性にはどのようなものがあるのか、ぜひ考えてみてほしい」と語る。
ITエンジニアの副業としては、近年さまざまなものがある。Webページのコーディングに始まり、アプリケーションの機能開発、インフラや基盤の整備、技術顧問のようなアドバイザー、他にも勉強会の講演、技術記事の執筆などもあるだろう。
そうした副業について「Offersに登録している人かつ正社員で、調査時点で副業をしているIT開発人材」を対象に調査を実施した結果が紹介された。それによると、副業の目的として「報酬」「スキルアップ」が突出している。
「副業の見つけ方」としては、媒体が最も多く、友人・知人からの紹介、エージェント、SNSと続く。「週あたりの稼働時間」については、4~8時間が26.4%と最も多く、驚いたことに、週32~48時間という人が6.6%もいたことだ。副業とはいえ、かなりパワフルに働いている人もいるということだろう。
なお自由記述欄には、「汎用的に必要となる技術の洗い出し」「個人で仕事を受ける力」「他社でどうやっているのかを知る」などスキルアップについて、また「テストエンジニアから開発エンジニアになるため副業で開発案件に携わっている」というリスキリングについてのコメントも多かったという。ahomu氏は「こうしたコメントからも、キャリアのリスクヘッジという目的を持っていることが伺える」と評した。
さらにahomu氏は、国の動きとして「労働移動の円滑化」を念頭に副業を推奨していることを紹介。「然るべきところに然るべき人材、成長分野に優秀な人材が移動することで、個人の賃金水準も国としての競争力も高まるという考え方をしている。エンジニアの副業としては需要も高く、就業形態としても親和性が高いため、政府が推進していなくても自然に増加していたとは思われる」と語った。