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Developers Summit 2023 セッションレポート

ITエンジニア本大賞 2023、技術書とビジネス書の両部門で大賞決定!エンジニアが選ぶおすすめ本は?

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 ITエンジニアがおすすめしたい、読んでもらいたい本を選ぶ「ITエンジニア本大賞 2023」(主催・翔泳社)のプレゼン大会と最終投票が2月9日(木)に行われました。その結果、大賞が決定しました。技術書部門は『良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』(仙塲大也、技術評論社)、ビジネス書部門は『メタバース進化論』(バーチャル美少女ねむ、技術評論社)が大賞を受賞しました。受賞した著者が感極まって涙するシーンもあったプレゼン大会の模様をお伝えします。

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 CodeZineを運営する翔泳社が毎年開催している「ITエンジニア本大賞」は、ITエンジニアが同じITエンジニアにおすすめしたい本を選ぶイベントとして10年目を迎えました。

 出版不況、技術書の売上が落ち込んでいるなどと言われることもありますが、そんな風を吹き飛ばして一般投票で選ばれた6点の本の著者と翻訳者が、「ITエンジニア本大賞 2023」のプレゼン大会に臨みました。

 プレゼン後に行われた視聴者による最終投票で、技術書部門は仙塲大也さんによる『良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門 ―保守しやすい 成長し続けるコードの書き方』が大賞を受賞。

 ビジネス書部門はバーチャル美少女ねむさんによる『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』が大賞を受賞しました。

 仙塲大也さんは受賞の報を聞いて感極まり、言葉を失う瞬間も。また、ねむさんはITエンジニアと一緒にメタバースという未来を作っていきたいという思いを話してくださいました。

 今回は一般投票で選ばれた以下の6点について、著者と翻訳者の狙いや思い、本の魅力が語られたプレゼンを簡単に紹介します。

技術書部門

ビジネス書部門

ITエンジニア本大賞 2023 特設サイトへ

技術書部門:競技プログラミングの鉄則 ~アルゴリズム力と思考力を高める77の技術(米田 優峻、マイナビ出版)

競技プログラミングの鉄則

 登壇したのは著者の米田優峻さんです。競技プログラミング(競プロ)の世界を知ってもらうこと、そして初心者でも理解しやすい内容の本が少なかったということが本書を書いた理由だったとのこと。

 競プロはプログラミングの問題を解く大会です。取り組むメリットは2つ、プログラム実装力やアルゴリズムの知識、考える力などの現場で重要なスキルが身につくこと。そして、そうした学習をゲーム感覚で楽しめること。楽しんでスキルが身につくということで、近年競プロに参加するエンジニアは非常に増えているそうです(AtCoderの登録者は40万人以上)。

競技プログラミングの鉄則

 米田さんは本書を学業と両立しながら800時間かけて執筆。その結果、発売4か月で5刷と人気を博すことに。エンジニアとしてスキルアップを目指す人のためになる本として、また日本全体の技術力向上に貢献したいという思いが本書には込められていました。

技術書部門:ソフトウェアアーキテクチャの基礎 ―エンジニアリングに基づく体系的アプローチ(Mark Richardsほか、オライリー・ジャパン)

ソフトウェアアーキテクチャの基礎

 登壇したのは翻訳者の島田浩二さんです。本書は2020年に出版された『Fundamentals of Software Architecture : an Engineering Approach.』(O’Reilly)の邦訳で、「ソフトウェアアーキテクチャ」で必要とされる知識や技能の基礎を網羅的に解説した本です。

 ソフトウェアアーキテクチャ自体は1990年代に登場し、解説書は多く出版されてきました。良書は多いのですが、アジャイルやDevOps、クラウドやコンテナといった今や当たり前になっている技術が想定されていません。そのため、本書は現状を踏まえて過去の常識をアップデートするための本が必要だったと考えて執筆されたそうです。つまり、現代において変わった部分の見直しと、変わらない本質の語り直しが大きなテーマでした。

ソフトウェアアーキテクチャの基礎

 派手なトピックがあったわけではありませんが、本書には大きな反響がありました。その要因として、島田さんはソフトウェアアーキテクチャの重要性が増し、問題意識が高まっていることを挙げます。例えば、企業内で連携するソフトウェアの数や範囲が拡大しており、その安定にはソフトウェアシステムのための構造が必要です。また、ビジネス側の要請に従って機能をデリバリーするだけでは足りず、変化に追従してシステムのメンテナンスを続けなければなりません。

 こうした課題に対し、一エンジニアが立ち向かうための力を身につけ、ソフトウェアアーキテクチャに責任を持てるようになるのが本書なのだと島田さんは話してくれました。

技術書部門:良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門 ―保守しやすい 成長し続けるコードの書き方(仙塲 大也、技術評論社)

良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門

 登壇したのは著者の仙塲 大也さんです。本書は2022年4月末に発売され、3万部を超えて売れています。繁体字(台湾)版と韓国語版も出版予定であり、これほど売れている技術書がどんな本なのかが気になります。

 仙塲さんは本書を変更容易性の設計入門書と位置づけます。変更容易性とはソフトウェア品質特性の1つで、バグを埋め込まずにどれだけ素早く正確にコード変更可能かを示す指標です。経済産業省の資料によれば、2025年以降に技術的負債によって毎年12兆円以上の経済損失が生まれるとされています。バグが増大し、開発費が高騰し、新機能のリリースも困難に……そんな技術的負債を作らない、残さないようにするために必要なことがプログラムの変更容易性です。

 本書はまさに、プログラムを開発する際に変更容易性を高めるための手法が解説された本なのです。技術的負債は一握りの強いエンジニアだけでは対処できない、だからこそ多くの人読んでもらいたい、と仙塲さんは強調します。

良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門

 内容としては、初学者が中級者になるための橋渡しとなる役割を担い、初学者が陥りがちなアンチパターンが取り上げられています。問題のあるコードが提示され、何が問題でなぜ問題となるのかを解説。そして変更容易性の高いコードが提示され、その理由が説明されるという流れです。

 また、仙塲さんは本書を昔の自分に向けて書いたと話します。仙塲さんは炎上プロジェクトの技術的負債に苦しめられた経験があり、そのときにこの本があればどれだけ助かったか、という強い思いが。仙塲さんは「同じ境遇で苦しんでいるエンジニアに届いてほしい」とプレゼンを締めくくりました。

ビジネス書部門:エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法(James Stanier、オライリー・ジャパン)

エンジニアリングマネージャーのしごと

 登壇したのは翻訳者の1人、永瀬美穂さんです(永瀬さんは『チームトポロジー』の翻訳もされています)。原著は2020年発売の『Become an Effective Software Engineering Manager』(Pragmatic Bookshelf)。本書ではエンジニアリングマネージャーの主人公が様々な課題・困難に出くわし、それを解決していくという形でエンジニアリングマネージャーに必要な考え方やスキルが解説されていきます。

 その主人公が最初に受ける洗礼が、「こんにちは! よろヒヒーン」という言葉。これは原著で「Hello! new neigh-bor!」となっているところで、隣人を意味するneighborと馬のいななきを意味するneighをかけて「よろヒヒーン」としたそうです。

 さて、本書ではテックの業界の危機に言及されます。というのは、元々コードを書いていた現場の人が給料を上げるために仕方なくエンジニアリングマネージャーになり、十分な準備や教育がないまま職務に就いているから。下図のように、登場するエピソードには「あるある」とつい頷きたくなってしまうものもあるのではないでしょうか。永瀬さんは特に、部下との1on1で何を話したらいいのかわからず話題をググったというエピソードに共感されていました。

エンジニアリングマネージャーのしごと

 永瀬さんは最後に、最終章に書かれてある読者へのメッセージを紹介してくれました。「将来あなたと同じような道を選びたい他の人を助けられる最高のポジションにいます」。

ビジネス書部門:チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計(マシュー・スケルトンほか、日本能率協会マネジメントセンター)

チームトポロジー

 登壇したのは翻訳者の吉羽龍太郎さんです(吉羽さんは『エンジニアリングマネージャーのしごと』の翻訳もされています)。原著は『Team Topologies: Organizing Business and Technology Teams for Fast Flow』(It Revolution Pr)。

 そもそもチームトポロジーとは、顧客に「素早く」「頻繁に」「安定的に」価値を届けるための適応型の組織設計モデルのこと。チームの目的と責任を明確にし、チーム間の相互関係の向上を目指すことが掲げられています。そして本書には、マネージャー、リーダー、シニアレベルの人が知っておくべきソフトウェア開発組織の知恵がすべて解説されているそうです。

 本書の根底にある考え方はコンウェイの法則です。つまり、「システムを設計する組織は、そのコミュニケーション構造をそっくりまねた構造の設計を生み出してしまう」ということ。これに対抗するために、本書では逆コンウェイ戦略を取ります。吉羽さんは特に「チームを価値提供の基本単位にする」ことを挙げました。

 また、具体的な組織のあり方として4つのチームタイプと3つのインタラクションモードが解説されています。これについては下図をご覧ください。

チームトポロジー

 ポイントはチームやコミュニケーションを見える化すること。見える化することで共通認識を形成でき、課題に対処しやすくなるわけです。吉羽さんはチームトポロジーの始め方や内容を解説する日本語版のインフォグラフィックを紹介してくれましたので、こちらもぜひチェックしてください。

チームトポロジーの始め方 - インフォグラフィック(VPNに接続しているとページが開かない場合があります)

ビジネス書部門:メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界(バーチャル美少女ねむ、技術評論社)

メタバース進化論

 登壇したのは著者のバーチャル美少女ねむさんです。ねむさんはVRChatの自室から登壇、ITエンジニア本大賞では初めてのスタイルですが、メタバースに馴染みのある方にはごく当たり前の風景です。本書はそのメタバースの現状をヘビーユーザー、いわゆる原住民の視点で解説したもので、ねむさんが実施した「ソーシャルVR国勢調査」といった大規模調査の内容も活用されています。

 ねむさんが本書を執筆したのは、近年の盛り上がりからメタバースがWeb3やNFTと混同・誤解されることが増え、実際のところを説明したかったからだそうです。既にVRChatをはじめメタバースは数百万人が利用しており、「空間や自己認識まで自在にデザインできる人類400万年史を覆す革新」だと言います。

 例えば、男女ともよく使うアバターは女性型が79%。なりたい姿になれるため、植物や動物のアバターを使用する人も少なくありません。また、メタバース内での恋愛では相手の生物学的な性別は重要ではないと答えた人が75%に上ります。本書ではこうしたメタバースの革命性が自己認識、社会、経済の3つの観点から解説されています。

メタバース進化論

 ねむさんは本書を「人生のすべてをまとめた活動の集大成」とし、ITエンジニアの皆さんにメタバースをもっとよく知ってもらい、一緒に新しい世界を作っていきたいとプレゼンを締めくくりました。

大賞と特別賞

 大賞はお伝えしたように、技術書部門は仙塲大也さんによる『良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門 ―保守しやすい 成長し続けるコードの書き方』、ビジネス書部門はバーチャル美少女ねむさんによる『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』となりました。改めて、おめでとうございました!

 また、特別ゲストの2人による特別賞も決まりました。「ITエンジニア本大賞 2022」で技術書部門の大賞を受賞された角谷信太郎さんは『チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計』、同じくビジネス書部門の大賞を受賞された小城久美子さんは『エンジニアリングマネージャーのしごと』を選出。こちらもおめでとうございます!

大賞と特別賞

 これにて「ITエンジニア本大賞 2023」の閉幕です。本に代わる手段が次々に登場している現代においても、一般投票やプレゼン大会を通してITエンジニアにとって本がまだまだ重要な存在であることが見えてきました。次回の「ITエンジニア本大賞」にもご期待ください!

ITエンジニア本大賞 2023 特設サイトへ

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/17351 2023/02/14 13:00

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