セキュリティ企業ではなく、開発者が使うツールを提供する企業に
そしてSnykの創設者であるガイポ氏はイスラエル軍そして、SanctumやIBMなどで長らくセキュリティ領域に関わってきた。その後Webパフォーマンスの世界に入り、2015年Snykを創設することとなる。
彼がどんな世界を見てきたのか。まず2002年に入社したWebアプリケーションセキュリティ会社のSanctumでは、AppScan(Vulnerability Scanner)を担当した。当時は、コストや効率性などの観点から、セキュリティに考慮した設計、開発を行う「シフトレフト」の波が来ていた頃だ。
しかしながら、開発しながらセキュリティを担保する方法として顧客がツールを導入したものの、ビルドにかかる時間が約4倍も伸びてしまったという。ビルドが壊れる可能性があるコーディングミスがあるとツールに表示されたので、開発チームが何時間もかけてコードを確認したところ、ようやく見つかったのは、些細なバグだった。そんなことが毎週のように発生した結果、いつしかその監査ツールが使われなくなるという経験をする。こうしたことは今も起きており、検知に時間がかかる、誤検知が多いなどの悩みはよく聞く話だ。
その後、Sanctumの買収先であるWatchfire、IBMを経て、2010年にWebサイト高速化ソリューションを提供するBlaze.ioを起業。FEO(Front End Optimization)技術を開発して提供していた。今では使われなくなったが、当時はSDNのようなWebパフォーマンスを向上させるためによく活用されていた技術だ。そして、VelocityなどDevOpsのカンファレンスに頻繁に顔を出し、その時の高揚感を語っている。
相澤氏は、CTOになりたかったガイポ氏にメンターが「起業してCTOを名乗ればいいよ」といったエピソードを紹介。まさにそのとおりに、ガイポ氏はBlaze.ioでCTOを名乗り、Akamaiに買収されたことで、AkamaiのWebパフォーマンス部門のCTOに就任することとなる。
その頃に、ガイポ氏は「人気を集めてクールな会社にも採用されている」と競合のFastlyに注目していた。当時、SDNの第一人者Akamaiに比べ、Fastlyは新興であり、DevOpsやアジャイルといった新しい開発手法にフィットしていた。
そして、2015年にAkamaiを退職し、Snykを立ち上げた。そして、古巣とも言えるセキュリティ領域の製品開発に取り組むようになる。その頃に口にしていたのが、「Snykは、セキュリティ企業ではなく、開発者が使うツールを提供する企業になるのだ」という言葉だ。それがSnykのアイデンティティとなっていく。