面談中の要点抽出で、営業職の生産性向上に寄与する「ブリングアウト」
東京大学の100%子会社として、世界に向けたイノベーション拡大を目的に、アカデミア関連ベンチャー、研究者、技術者のための投資事業・起業支援・DEEP TECH DIVEなどに取り組む東大IPC。総額500億円規模のファンドを運用し、投資先企業数は約50社、支援先企業数は約60社にも上る。
その1社として注目を集めているのが、2020年12月に設立したブリングアウトだ。営業商談で「必要な質問」ができているかを可視化し、その要点を抽出することで、合意事項を適切に満たしているかどうかを確認できる。日本の就労人口の12.6%を占める販売従業員(営業職)の“生産性”を高めることが、同社の提供価値というわけだ。
CTOを務める小原正大(こはら・しょうた)氏は、「開発職の場合、プルリクエストを送って皆からレビューが返されて改善するというサイクルになっており、それによって効率や品質を高めることに成功している。しかし、営業職では商談中の発言内容はクローズで、振り返りがなされずに気合と行動量でなんとかする、という立ち振る舞いが多かった。ブリングアウトのサービスは、このブラックボックスを開いて高精度に要点抽出を行い、商材ごとにチューニングできる」と事業について紹介した。
実際に人が話す内容から要点抽出を行うことは、人間でもなかなか難しい。それを高精度に行い、例えば、テストクロージング(商談途中での購買意思の確認)などで「聞くべきことを聞けているかどうか」を可視化するというわけだ。実際に行った調査では、上司が8割は聞けていると思っていたものが4割程度しか聞けていないことが判明し、その内容も確認できた。現在リクルートなど営業を強みとする大手企業に採用されており、顧客企業ごとにカスタムを行い、精度を高めて提供されているという。
「PDCAが回るインフラを実装し、あらゆる活動を日々より良いものにしていくサービスを今後も展開していく」と小原氏は語り、「コンサルティングやソフトウェア、自然言語処理エンジニアなど、メンバーを増やしていきたい」とアピールした。
最先端のXR技術で「見る」ではなく「する」ためのバーチャル体験を創出する「イマクリエイト」
続いて紹介されたイマクリエイトもまた、「さまざまな可能性をもっと身近に」をパーパスとし、最先端のテクノロジーで注目される企業だ。CTOの川崎仁史(かわさき・ひとし)氏は「インターネットなどで『知る』が容易になったが、『する』には場所や知識、道具、設備などのハードルがある。それをなくすために、『見る』ためでなく『する』ためのバーチャル技術で体験そのものを進化させようとしている」と事業について説明する。
バーチャル空間なら場所に制限なく、できることが一気に増える。例えば、見えないものを可視化したり、物体の内部を透過したり、重力や速度を自在にコントロールしたりすることができる。
それらを活かして開発したものとして、「VRけん玉トレーニングシステム」が紹介された。そのシステムでは、ゆっくりと玉を動かしたり、熟練者の様子を第三者の視点で見たりすることができ、それによって難しい技の習得が容易になるという。これによって体験者1128人中1087人が新しい技を習得できた。
また「VR溶接トレーニングシステム」では、熟練者の作業を録画して3D化し、そのお手本をまねして学習できる。溶接はマスクをして手元が暗い状況で作業する場合が多いが、作業を見やすくするためにマスクを外した状態で練習することもできる。これによって共同開発社のコペルコE&Mでは、新人研修で実技以上の習熟効果を確認できたという。
川崎氏は「“本当にできるようになる”という効果性にコミットし、『バーチャルのほうが便利』という事例を多数作っていく。例えば、習得したい技術を体にダウンロードさせたり、意識下で練習したり、究極的には体を動かさずに技術習得ができる。夢は映画『マトリックス』のトレーニングシステムを実現すること」と述べ、「すべての人が自由に便利に使えるバーチャル空間の提供によって、『現実でやってみる』のほかに、『XRでやってみる』という選択肢が当たり前に存在する世の中を実現したい」と語った。
そして、新しいもの、話題となるものではなく、現実をより良いものにしていける手段として「バーチャル技術って便利!」と感じてもらえるような価値を世の中に届け、実感してもらえるよう、研究開発を進めていくという。川崎氏は「そうした『するXR』の技術・事業を支えるUnityエンジニア、デザイナー、モデラーを募集している。興味がある人はぜひ参画してほしい」と訴えた。