エンジニアとしてやってきたことをマネージャー業務に応用するには
こうしたエンジニアとして行なってきたことを、チームマネジメントに応用できないか。その気付きのもと、添田氏が1年間にわたり、マネージャーとして実践してきたことが紹介された。
見積もりや振り返りのためデータ収集をする
チーム全員の工数を集計し、アウトプットの実績と突き合わせることによって、チームおよび個人の生産性やアウトプットが可視化され、目標設定やリソース配分などの適正化に活かされている。これを繰り返すことで、チームを成長サイクルに乗せることができる。
TODO分解で着実にゴールに迫る
ゴールから逆算してTODOを分解することを一人ひとりに徹底。さまざまな仕組みに乗せることで、進めるべきものを進め、着実にゴールに到達することができるようになった。
緊急度・重要度を見極め迷いなく
チケットや年間計画の優先順位を決めて迷わない状態を作り、確実にすべきことを明確化した。その結果、急な割り込みが入っても、的確な判断ができるようになった。また、仕組み化しておくことで、無駄なメンテナンス作業が減り、共有が楽になった。
さらにマネージャーとして取り組むべき「本題」として、冒頭で述べた「サブシステムの保守体制強化」と「プログラマーとしての能力強化」をあげ、チームの知識・技術の底上げのために行なっていることが紹介された。
モブワーク
リモートワークが当たり前になり、ちょっと質問することも難しくなり、突発的に数人が集まって仕事をすることも難しくなった。スクラム、アジャイルなどチームで成果をあげることが重要となる中で、週に1回意図的に「モブワーク(みんなで何かをやる時間)」を行なうこととした。約1年間で51回以上実施しており、基本的に企画者は挙手制・指名制で、モブプロ、ハンズオン、打鍵、あつ読み、サブ勉強会、雑談会などさまざまなことを行なっている。
ノーガードサブ対策
守備範囲の網羅性を高めるために、ノウハウや知識をチーム内の共有知とし、メンバー同士で助け合うこと、新入者のキャッチアップ速度を高めて即戦力化することを意図する。それまで不足していたストックドキュメントや自習課題・育成コンテンツなどを拡充するために、週3回30分ずつ、年間60回以上サブキャッチアップの時間を確保した。
他にも、個人的に誰かと毎日ペアプロや1on1を行なっており、またメンバー同士でのペアプロも実施されるようになってきている。
その成果として、不具合修正は1件あたりの工数が減少傾向にあり、バージョン単位の対応件数も右肩上がりとなっている。また、ベテランが1人抜けて新人2人が合流したものの、対応領域の網羅性も高まってきている。
添田氏はマネージャーとしての1年間にわたる施策や取り組みを振り返り、「チームとして成長サイクルに乗せることができたと思う。その仕組みづくりとアクションプランは以前から行なってきたことの応用。そのスキルがピンチのときの支えになった」と述べ、「これはと思うものがあれば、ぜひとりいれてほしい」と語った。
そして、マネージャーとして変わらず考えてきたこととして、「チームの成果を最大化・最速化したい」「隣のチームに負けたくない」「自分を追い越していく、匹敵するメンバーと仕事したい「今までの自分の成果×人数以上の成果を常に出したい」の4つをあげ、「チームが成長し続けられるよう、メンバーが成長し活躍できる機会を作り出すことが最重要。そのためにさまざまなアクションプランや仕組みづくりを行い、今後も試行錯誤しながら進めていく」と意欲を見せた。
最後に「マネージャーとして、メンバー時代の延長線上のスキルでやれることも多い。一方で、『成果を出す』ことから『成果を出させる』ことに役割が変わるので、スキルの使い方も変わる。他者の成長・成果のために自分のスキルを使える人が、マネージャーにふさわしい。才能や天性の素質ではなく、愚直に戦略を練り、逆算思考や仮説検証で問題と対峙できれば、誰にでもチャンスがある」と熱く語り、セッションを終えた。