情シスSlackは「バーチャル同僚感」
長谷川氏は、「キャリアパーク!」「就活会議」などのサービスを展開するポート株式会社のVPoEとして、開発部門の運営やマネジメントの責任者を務めている。過去にはWebエンジニアや人事、情シス・業務改善などさまざまな分野に携わっていた。そんな長谷川氏は「自分の歴史は『情シスSlack以前』と『情シスSlack以降』に分かれる」と話す。
長谷川氏が転職して情シスを業務で担当するようになったのは39歳のころ。わからないことをTwitter(当時)で質問すると、情シスの担当者たちが親身に助けてくれたそうだ。
「情シスの皆さんが優しかったので、相談できる仲間がほしいと思いました。しかし、自分はプロフェッショナル職ではないので、提供できる知識は少ない。代わりに提供できるものはなんだろうと考えたときに、集まる場所を提供しようと思いつきました。自分にできる役回りを考え、勉強会の旗振り役を務めるようになったのが始まりです」(長谷川氏)
そのような経緯で長谷川氏が開催した勉強会から立ち上がったのが「情シスSlack」だった。情シス担当者が社内に1人、2人だけという企業は珍しくない。いわゆる「ひとり情シス」で、社内に相談相手がいないという悩みを抱えがちだ。情シスSlackでは、業種や会社の垣根を超えて情シス担当者たちが集まり、質問や相談、情報交換を行っている。「『バーチャル同僚感』という表現がぴったり(参考:広報担当向けのSlack分報コミュニティ#PRFunho を作った理由)」と、長谷川氏はその存在意義を語る。
規模が大きくなるにつれて各種メディアの取材を受けたり、情シス転職候補者向けの転職イベントを開催したりと、活動の幅も広がっている。また、情シスのポジションに特化したエージェントであるWARC Inc.のデータによると、年収1千万円以上の求人も増えているそうだ。長谷川氏によると、情シスSlackの活動が、「職種認知度や給与水準の上昇にも貢献しているのではないか」という。
最後に、情シスSlackの運営を通して得た知見について長谷川氏は次のように振り返った。
「行動したことで、素晴らしい方々との出会いがありました。今では、得たものを業界に還元するという循環の意識が大切だと感じています。エンジニアの方々はさまざまなオープンソースのサービスを利用していると思いますが、使うだけではなく、このような場で発表したりアウトプットしたりすることで情報の循環が生まれ、成長につながることを知っていただきたいです。
これまでの自分のキャリアイメージは、あくまで本業が中心にあり、そのほかの自己学習や副業などがつながっていなかったように思います。しかし、業務外での活動を持つことで、貢献したい世界観や理想像が見えてきて、そこに向かって本業や自己学習などがつながっているという実感を持てるようになりました。行動することでキャリアの幅が広がっています。
なお、情シスでは、イベントや外部発信、複雑な物事を整理して実装していく視点など、エンジニアの領域で培ったキャリアやスキルを活かせます。よかったら情シスという仕事自体にも興味をもってもらえるとうれしいです」(長谷川氏)