デプロイの簡略化
Rails 8.0では、デプロイツールKamal 2が標準で組み込まれ、デプロイ作業がシンプルなものになりました。Kamalは、SSH(Secure SHell)とDockerコンテナを使った軽量で柔軟なデプロイを実現するフレームワークで、クラウド上のVMやオンプレミス環境に対応しています。ゼロダウンタイムデプロイによるシームレスなデプロイやコンテナの管理機能を備えています。
同じく利用可能になったThrusterは、高速で安全な通信をサポートするHTTP/2プロキシで、コンテナにおいてPumaサーバのリバースプロキシとして動作します。このHTTP/2プロキシは、Pumaサーバの前段に配置されて、X-Sendfileの高速化、アセットのキャッシュと圧縮機能を提供します。NginxなどのWebサーバをリバースプロキシとして配置する必要がなく、コンテナがシンプルになります。
このようにRails 8.0で可能になったKamalを使ったデプロイは、第1回で紹介したDockerfileを対象としたものです。Railsアプリケーションを組み込んだDockerfileを作成するだけで、あとはホスト先の情報を適切に設定すれば、kamal setupコマンドを実行するだけでコンテナがデプロイされます。デプロイは、config/deploy.ymlファイルに基づいて実行されます。このファイルは初期状態で以下のようになっています(要変更と思われる箇所を抜粋)。
service: authapp # サービス名 image: your-user/authapp # DockerHubのレジストリパス servers: web: - 192.168.0.1 # サーバのIPアドレス proxy: ssl: true host: app.example.com # 独自に取得したドメインによるホスト名 registry: username: your-user # レジストリのユーザ名 password: - KAMAL_REGISTRY_PASSWORD # レジストリのパスワード(環境変数)
Dockerfileでは、従来はrailsコマンドが直接起動されていましたが、Thrusterの起動コマンドに置き換えられています。
# Start server via Thruster by default, this can be overwritten at runtime EXPOSE 80 CMD ["./bin/thrust", "./bin/rails", "server"]
なお、Kamal 2を使用しない場合には、アプリの作成時に--skip-kamalオプションを指定します。
まとめ
今回は、Ruby on Rails 8.0の新機能のうち、シンプルな組み込みの認証機能、デプロイツールKamal 2とHTTP/2プロキシThrusterによるデプロイの簡略化について紹介しました。
次回は、SQLite統合により利用可能になったSolid Adapter、汎用スクリプトのためのscriptフォルダとジェネレータ、デフォルトとなったPropshaft、そしてActive Recordの改善について紹介します。