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Developers CAREER Boost 2024 セッションレポート(AD)

エンジニア人生、振り返るとキャリアの糧になった経験は?──"偶発性"を最大限活かすためのコツ

【B-5】異なる技術領域で描くキャリア戦略~リクルートグループでの挑戦と軌跡~

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 リクルートとニジボックスの最前線で活躍する2人が、エンジニアのキャリア戦略について語り合った。古川陽介氏はニジボックス デベロップメント室 室長のほかにもNode.js日本ユーザーグループ代表を務め、遠峯康夫氏はニジボックス データエンジニアリング室 室長を務めている。2人は自身の経験も振り返りながら、エンジニアとして大切にしている価値観を共有した。

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低レイヤーの経験はエンジニアの勘どころを培う

 最初にニジボックスについて、簡単に紹介しておこう。ニジボックスはリクルートから2010年に分社独立したグループ会社だ。「Grow All」を合言葉に、デザインやフロントエンド技術などを通じて顧客のビジネス成長を支援している。フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、データエンジニア、開発ディレクターなど130名以上のエンジニアが在籍している。

株式会社リクルート/株式会社ニジボックス データエンジニアリング室 室長 遠峯 康夫氏
株式会社リクルート/株式会社ニジボックス データエンジニアリング室 室長 遠峯 康夫氏

 遠峯康夫氏は2010年にヤフー(現LINEヤフー)に入社し、Hadoopの基盤構築や運用、データ利活用ツールなどデータマネジメントを担当していた。2018年にリクルートに転職し、複数の事業領域を横断するデータプロダクトの企画や運営に携わった。2023年からはニジボックスに兼務し、データエンジニアリング室の立ち上げからかかわる。遠峯氏はこれまでのキャリアを振り返り、「経験してよかった」と思えることを3つ挙げた。

遠峯氏が考える、これまでに経験してよかった3つのこと

 1つ目は低レイヤーの技術領域の経験だ。遠峯氏が入社したころは大規模なデータ分析が始まり、分散処理技術としてHadoopが使われていた。こうした環境で「ネットワーク設計の議論に陪席(ばいせき)するほか、Hadoopクラスタ構築を経験できたのはよかった」と遠峯氏は言う。

 ヤフーともなると、データセンターに物理サーバーが数千台規模で並ぶ。まれにロット不良に遭遇するなど、ハードウェア故障も身近に経験していた。学生時代にはジャンクパーツを購入して自作サーバーを構築していたこともあり、低レイヤーに直接触れる経験があることで「クラウドを活用する立場になっても、障害が起きるとあの機材や部品が壊れたのかな」と想像できるという。

 古川氏もこの点において、「フロントエンドにも通じるところがある」と同意する。今では既存のライブラリを使用することが多いが、低レイヤーでの経験があると「壊れているところがなんとなく想像できる。その勘どころは大きい」と話す。

社長室に呼ばれるほどの修羅場で気づいたこと

 2つ目は社長室に呼ばれるレベルの修羅場経験だ。スマートフォンが使われ始めたころ、ロギング方式を入れ替えることになり、そのプロジェクトのリーダーを担当した。ところがリリース直前に品質保証で問題が発覚し、リリース延期に。広告の契約があったため、クライアントに謝罪しなくてはならない事態になってしまった。

 プロジェクトリーダーだった遠峯氏は状況を説明するために社長室に呼ばれた。20代後半だったため「これでクビになるのか」と心配したものの、クビにはならなかった。お叱りはあったものの、当時の副社長が「新しいことをしているから失敗はある。みんなで乗り切ることが大事」と諭してくれて胸をなで下ろした。

 規模の違いはあれど、誰しもが何らかの痛い失敗をしているのではないだろうか。エンジニアなら、自分のバグで障害やクラッシュを発生させてしまうなどだ。古川氏は「問題を起こした時は視座が上がる瞬間でもありますよね。いい経験だったと思います」と述べて、自身の失敗談も開示した。

株式会社リクルート/株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 古川 陽介氏
株式会社リクルート/株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 古川 陽介氏

 古川氏は前職のDeNA時代にモバゲーのサービスを数分止めてしまったことがあったという。重要なテーブルをロックしてしまったのだ。ゲームで使うスタミナや課金などで参照するテーブルをロックしてしまったため、どのユーザーもテーブルからの応答が止まり、すなわちゲームが止まるという事態になった。当時を振り返り古川氏は、「心臓の鼓動が激しく高まり、死ぬかと思った」と明かす。後日、振り返りの会議で釈明したそうだ。

 遠峯氏は「自分のリスク管理の甘さや、周囲へのコミュニケーションの不足を実感した。やはり一人では仕事はできない、と。エンジニアリングはがんばっていたつもりだったが、リーダーとしてビジネスとして押さえるべきポイントを逃していた。今振り返ればいい気づき・転機だったと思う。当時はあまりのショックで本気で泣いた」と当時を振り返る。古川氏は「こういう経験があると、マネージャーになった時に先の副社長みたいなコメントができるようになる」と言う。

 3つ目はよく学ぶ先輩・同僚と一緒に働いた経験だ。誰しもそうだが、若手のうちは先輩のスキルに圧倒される。遠峯氏も入社前にサーバー自作やプログラミング経験があったのでそれなりに自信があったにもかかわらず、1つ上の先輩の技術レベルを目にして「1年後にこうなれるだろうか」と自信が揺らぎ、焦りも覚えた。

 そのほか7年上の先輩があまりにHadoopに詳しく、圧倒されたという。その先輩は普段から文献にもよく目を通し、ブログも書き、業界では有名人だった。再び「7年後にこんなことをできるだろうか」と不安に感じつつも、今度は冷静に「当たり前ですけど、イケてる人はみんな総じてよく勉強している」と気づくことができた。

 あらためて遠峯氏は「よく学ぶ先輩や同僚と一緒に働いた経験は、いい意味でプレッシャーを感じたが、自分の成長にはいい経験になった」と話す。常にそばにいるので「何を読んでいるんですか?」と質問しやすく、勉強方法を学ぶにはいい環境だった。

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計画的偶発性理論が鍵──好奇心、継続性、柔軟性、楽観主義、リスクを恐れない

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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