マネジメント職への挑戦と出産・時短勤務
ベンチャー企業に入社して5年ほど経ち、桃井氏にシステム部の部長職の打診があった。技術職としてスキルアップに集中したいという思いや、自分に管理職が務まるのか……といった不安はあったものの、引き受けることにした。
「自分に向いているかどうかはやってみないとわからないので、とりあえずやってみようかな、と。一歩踏み出してみて、うまくいけばそのまま続ければいいし、ダメだったら降りればいいと考えての決断でした」
そうして始めた管理職は、「意外と楽しいと思えた」という。予算管理や進捗管理、人事評価など新しい業務に向き合うなかで、不安なことは抱え込まず、前任の部長やチームメンバーに相談していた。「どう思われるかよりも、問題を解決することが重要」だという意識で取り組んでいた。
そんな中で、大きな転機が訪れる。妊娠・出産、そして産休・育休の取得である。当時所属する会社では初の産休・育休取得メンバーとなった。メンバーはみんな協力的で、妊娠中も柔軟に働き、育休の期間を経て、時短勤務で復帰した。桃井氏は、同じ会社で第二子の出産、復帰も経験。その時には部長職を退いており、自分のペースで働ける環境に安心していた。
しかし、その頃から「最新技術の追求やスキルアップのために使う時間が圧倒的に足りていない」という不安を覚えるようになった。
「人事制度が変更になって、エンジニアはより技術力を求められるようになりました。私は時短勤務のため、業務時間外のメンテナンス作業などにはほとんど参加できず、他メンバーに対して追い目を感じるようになってしまったんです」
今後のためにもキャリアアップは目指したいけれど、子育てのためにもワークライフバランスは取りたい。いつか子どもに手がかからなくなって、学習の時間が取れたとしても、若手と同じ土俵で戦い続けることができるのか……などの悩みに向き合い始めた。
そこで「技術力の成長だけを追い続けるのは苦しい」と感じた桃井氏は、限られた時間の中で成果を出し、キャリアを築いていける方法を模索することにした。そして自身のスキルを考えた結果、マネジメント経験を生かし、人や組織を管理する力を伸ばそうと考え、「マネジメント力を高める転職」を決意した。
二度目のキャリア転機となった転職では、「マネジメント能力を高める」という軸に加えて、育児と仕事を両立するための2つの条件も決めていた。
一つ目は上流工程に携われるような職種であること。ベンチャー企業では上流から下流まで全てに携わるのが当たり前だったが、働く時間に限りがある桃井氏は、携わる範囲を絞ったほうがよいと考えたのだ。
もう一つは、時短勤務とリモートワーク。「家族との時間を大切にしているので、この条件は必須だった」と桃井氏。
最終面接まで行っても時短勤務とリモートワークの条件が通らず、断られることもあった。そんな中で現在のパーソルホールディングスは桃井氏の希望の働き方を尊重したうえで「ぜひ来てください」と声をかけてくれた。桃井氏は、その言葉に背中を押されて入社を決めた。