アプリの利便性が向上するほど「データのサイロ化」と「部分最適なAI」が生まれる
スマートフォンには“アプリ”という形でいろんな機能が搭載されている。通話機能はもちろん、メールやブラウザなどのコミュニケーションツール、そしてカメラ、計算機、音声レコーダーまで。それぞれのガジェットを個別に持たなくてすむ利便性があり、プラットフォームとして普及してきた。
クラウドサービスも似たような側面がある。IaaSやSaaSのクラウドサービスでは、管理画面から必要なリソースやサービスを選択し、好きな分だけそれぞれの機能を使用することができる。スマートフォン同様にクラウドも、ユーザーがほしい分だけ使えるプラットフォームとしての価値を提供することで普及が進んだ。
では、ソフトウェアサービスの場合はどうだろうか。AIとデータプラットフォームを提供するDevRevの鈴木孝規氏は、現在起きていることについて「企業では多くのSaaSアプリケーションが利用されています。私たちはこれらSaaSのアプリケーションをガジェットと呼んでいます。各ガジェットではAI対応が進み、個別に進化していますが、ガジェットごとにデータが点在しています」と指摘する。
DevRev 鈴木孝規氏
撮影場所:WeWork 渋谷スクランブルスクエア(以下、同様)
それぞれのSaaSが個別に機能拡張を続け、充実していく一方、肝心のデータは分断されたままだ。例えば、営業活動に関するデータはSalesforceに、サポートの履歴はZendeskに、そして社内のコミュニケーションはSlackやTeamsなどに個別に溜まってしまう。それぞれにAI機能が搭載されて部分的には最適化が進んでいるものの、鈴木氏は「全部のデータがサイロ化して、それぞれに閉じ込められています。ガジェットが進化しても、横のつながりがないのです」とその課題に言及した。
サイロ化によって、具体的にどんな問題が起きるのだろう。例えば顧客の識別を、サポートチームの利用するSaaSでは“顧客ID”、営業チームの利用するSaaSでは“アカウントID”で登録したとする。顧客から問い合わせがあった際、サポートチームは”顧客ID”でその履歴を管理するが、”アカウントID”で登録している営業チームには情報が伝わらない。
あるいは、開発チームが機能ごとに分かれている場合、自分たちが開発している機能をどの顧客がどのようなソリューションで利用しているのか把握しづらい。実際に、営業など人づてにサービス利用の実情を聞いて、初めて知ることもある。
DevRevが提供する「Computer」は、サポートチーム、営業、開発チームなど、それぞれに点在しているデータをまとめ、ガジェット間、あるいは各チームのつながりを生み出すサービスだ。先ほどの開発チームの例でいえば、CRMのデータと開発者側で管理するデータをつなげて、それぞれの機能をいま何人の顧客が利用し、そこには何件の案件が存在し、いくらのインパクトがあるか、開発チーム内でもそれらを把握することができる。
「Computer」を利用することの利点は、ガジェットの乗り換えによるデータ移行コストの削減にもある。このサービスがガジェット間をつなげることで、私たちはAI機能を始めとした各SaaSサービスの進化に左右されず、今まで使っているツールを使い続けたまま必要な情報を手に入れることができるのだ。

