バーンアウト、障害の多発、人間関係の悪化──事業とエンジニアリングのギャップはなぜ生まれるのか?
佐藤大典氏は、Eコマース企業やスタートアップで開発組織の責任者を務め、現在は、自ら立ち上げた企業で技術組織支援に携わっている。他にも、エンジニア向けにマネジメントについて記された『エンジニアのためのマネジメント入門』も著し、組織運営と事業理解をテーマに発信を続けている。本セッションでは「エンジニアが事業に向き合うために必要だったこと」を軸に、事業貢献の本質を語った。
冒頭で佐藤氏は、エンジニアにとって「経営」が「縁遠いもの」になっている現実を指摘する。デブサミには多彩なセッションが並ぶが、事業運営や経営構造に踏み込む内容は多くない。佐藤氏自身もかつては「技術に閉じこもっていた」と話すが、「やはり、エンジニアが事業貢献を考える入口として『経営』を知ることは重要だ」というのが、現在の考えだ。
続いて佐藤氏は、参加者に向かって「あなたにとって『事業貢献』とは何をすることですか?」と問いかける。日々行っている開発行為は、果たして事業に結びついているのか?そう再考を促したのである。
そのうえで取り上げたのが、開発現場で語られがちな「事業に貢献している“つもり”の行為」である。納期遵守、技術的負債の返済、生産性向上、プロダクトKPI(重要業績評価指標)の達成、さらには個人目標の達成──どれも重要だが、佐藤氏は「これらは必ずしも事業価値の向上に直結しない」と断じる。
「納期に間に合わせたものの、商談は失注した」「1年以上かけて技術的負債を返済した直後に、サービスが終了した」「生産性を高めてみたものの、会社全体の売上が停滞した」……。いずれも、現場の努力が事業貢献にはつながらなかったケースだ。
他にも、プロダクト目標の達成が事業成長に反映されず、販売部門の不振が原因で会社が資金難に陥った例、個人目標の達成が事業成果に一切寄与しなかった例も紹介された。このような“空回り”を続けていると、最悪の場合には、バーンアウトや障害の多発、人間関係の悪化、組織間対立、大量退職といった“逆事業貢献”に転落することすらあるというのだ。
こうした齟齬は、経営陣が「会社・従業員・ステークホルダーを守るため」に意思決定する一方で、現場のエンジニアは「自分の開発組織を守るため」に動く、という視点の違いから生じる。エンジニアが「真の事業貢献とは何か」を誤解したままでは、どれほど技術的努力を積み重ねても、事業価値には転化しないのだ。
