レガシーシステムを塩漬けにする「4つの痛み」と「6割の現実」
開発現場においてモダナイゼーションを阻む要因は、単なる技術的な移行難易度だけではない。岡部氏は冒頭、企業が直面している課題を大きく4つの「痛み」として整理した。まず挙げられるのが、OSやミドルウェアのサポート終了(EOL/EOS)に対し、対応が後手に回っている状況だ。次に、長年の改修によりシステムの中身がブラックボックス化し、保守や改修が困難になっている点である。さらに深刻なのが人材確保の問題で、COBOLやVB.NETなどレガシー言語を扱えるエンジニアが減少し、採用難易度が高まっている。そして最後がシステムの複雑化であり、構造がスパゲッティ化したことで、軽微な改修であっても工数や費用が肥大化してしまう現状がある。
さらに岡部氏は、経済産業省が2025年5月に発表したレポート「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」を引用し、衝撃的なデータを提示した。それによれば、ユーザー企業の61%がいまだにレガシーシステムを保有しており、その半数以上が移行先さえ未定であるという。特に大企業ほど保有率は高く、現場からは「既存システムが複雑すぎて、モダン化が技術的に困難」という声が多く上がっている。岡部氏は、単なるツールの導入ではなく、この「複雑性」そのものを解きほぐすアプローチこそが求められていると指摘する。
「iPLAss」が目指すエンジニアのための「プロコード」領域
レガシー刷新の解として「ローコード開発」が挙げられることは多いが、エンジニアの中には「自由度が低く、複雑な要件に耐えられないのではないか」と懸念する向きもある。岡部氏は、ローコードツールを「ノーコード」「ローコード」「プロコード」の3つに分類し、同社が提供する「iPLAss(アイプラス)」の立ち位置を明確にした。
iPLAssがターゲットとするのは、業務部門が手軽にアプリを作る「ノーコード」ではなく、プロのエンジニアが開発効率を上げるための「プロコード(Pro-Code)」に近い領域だ。顧客接点となるWebフロントエンドや、大規模なトランザクションをさばくバックエンドなど、複雑なロジックや拡張性が求められるシステム開発を想定している。
「iPLAssは『複雑なシステムを早く作る』をコンセプトにした、Javaベースのローコード開発プラットフォームです」と岡部氏は説明する。裏側ではJavaが動作しており、標準機能でカバーできない要件はJavaやGroovyでコードを書いて拡張できるため、「ツールの制約で要件が満たせない」という壁を突破しやすいアーキテクチャになっている。また、iPLAssはオープンソース(OSS)として公開されている点も特徴だ(Enterprise Editionとは機能差分あり)。特定のベンダーにロックインされるリスクを回避し、長期的な保守性が求められる基幹システムの再構築において「オープン性」を担保できる点が、技術選定における重要なポイントとなる。
ソースコードから仕様書を逆生成する「CodeRebuild AI」の衝撃
ブラックボックス化したレガシーシステムを刷新する際、最大の障壁となるのが「現状把握」だ。ドキュメントが存在しない、あるいは実態と乖離しているコードを解析する作業は、熟練エンジニアが数カ月かけて解読を行う「考古学」のような泥臭い工程となりがちである。
岡部氏が提示した解決策は、生成AIによる「解析(CodeRebuild AI)」と、プラットフォームによる「再構築(iPLAss)」をパイプライン化したアプローチだ。モンスターラボ社と連携した「CodeRebuild AI」は、COBOL、PL/I、VB.NETといったレガシー言語のソースコードを読み込み、設計情報の復元、構造の可視化、そして新システムへのコード変換までを一気通貫で実行する。具体的には、ソースコードから外部仕様書や内部仕様書を逆生成し、処理フローやデータ構造を解析してブラックボックスの中身を可視化する。さらに、レガシーコードをiPLAss(Java)の実装パターンに即したコードへと変換していく。
岡部氏は「AIによる自動生成だけでなく、専門家による最適化を組み合わせる」と強調する。生成AIの出力は100%ではないため、最終的にはエンジニアがアーキテクチャや業務ロジックをレビューし、現代の要件に合わせて「最適化」を行う必要がある。単なる言語変換(リホスト/リライト)ではなく、仕様を見直して作り直す「リビルド」を目指す点がこのサービスの大きな特徴である。
データモデル定義から即座にアプリが稼働──Javaエンジニアが違和感なく使える実装プロセス
解析・変換されたロジックを受け止める実装基盤としてのiPLAssの機能についても、デモ動画を用いて解説が行われた。デモでは、開発者コンソール(Admin Console)を用いて、アプリケーションが構築されていく様子が紹介された。
まずGUI上でエンティティ(テーブル)を作成し、カラムの型やバリデーションを定義する。すると、その定義に基づき、CRUD(登録・参照・更新・削除)機能を持つ管理画面が即座に自動生成される。さらに、ドラッグ&ドロップで「汎用検索」機能を追加したり、必要に応じてJavaでカスタムロジックを実装し組み込んだりする様子も示された。
基本的なCRUDや認証・認可、権限管理といった機能が自動生成されることで、エンジニアは「そのシステム独自の価値」であるビジネスロジックの実装に集中できる。デモ画面からは、Eclipseベースの開発環境やプロパティ設定画面など、Javaエンジニアが違和感なく入れる開発者体験(DX)が意識されていることが見て取れた。
「工数40%削減」は序章に過ぎない──AI×ローコードがもたらす「属人化解消」という真の価値
この「AI × ローコード」のアプローチは、実際のプロジェクトでどの程度の成果を上げているのか。岡部氏は具体的な検証結果を提示した。ある輸送機械部品製造システムの刷新プロジェクト(PL/IからC#への移行)では、生成AIを活用することで、レビュー・ブラッシュアップ、単体テスト、コーディングといった工程全体で約40%の工数削減を実現した。また、予約管理システムの刷新(VB.NETからC#)においても約30%の削減効果が見られたという。
数値的なインパクト以上に岡部氏が強調したのが、「属人化の解消」という定性的な効果だ。「従来は、旧システムの言語に精通したシニアエンジニアがいなければプロジェクトが回りませんでした。しかし、生成AIが翻訳・解説を行うことで、ジュニアエンジニアが担当できる範囲が増え、少数のシニアエンジニアと複数のジュニアエンジニアでチームを構成できるようになる」と岡部氏は語る。
特定のエンジニアに依存するリスクを排除し、若手エンジニアをモダナイゼーションの戦力として組み込める点は、組織にとって大きなメリットとなる。また、生成AIが出力する成果物は一定の標準化がなされるため、品質が個人のスキルレベルに左右されにくくなる効果もある。岡部氏は「3〜6割程度の削減効果」を見込みつつ、浮いたリソースを「To Be(あるべき姿)」を描くための設計やビジネス価値の創出に充てるべきだと提言した。
「2025年の崖」を越えるための現実解──オープンソースと標準技術が支える持続可能なモダナイゼーション
セッションの締めくくりとして、岡部氏はレガシーモダナイゼーションにおける「現実解」について言及した。CodeRebuild AIのようなツールが泥臭い解析作業を肩代わりし、iPLAssのようなプロコード志向のプラットフォームが実装を加速させることで、エンジニアは本来注力すべきアーキテクチャ設計や価値創出に向き合えるようになる。
また、iPLAssが「オープンソースであること」「Java標準技術ベースであること」は、将来的な技術的負債を防ぐための重要な要素だ。透明性の高いアーキテクチャを選択することは、ベンダーロックインを回避し、持続可能なシステム運用を実現する第一歩となる。iPLAssはエンタープライズ版だけでなく、無償で利用可能なオープンソース版も公開されており、技術ドキュメントも整備されている。
「CodeRebuild AIとiPLAssの組み合わせにより、柔軟性・開発効率性が高く、オープンなアーキテクチャを実現できる。両者を活用し、モダナイズに向けた新たな一歩を踏み出していただきたい」と岡部氏は語り、セッションを締めた。
「ローコード開発ツールで満足のいくシステムが作れなかった」などの課題をお持ちの方におすすめです
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