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ますます便利になるPHPの新機能を探ろう!

より使いやすくなったPHP 8.5の新機能──パイプライン演算子や新しいアトリビュートなど言語仕様の強化ポイント

ますます便利になるPHPの新機能を探ろう! 第7回

パイプ演算子

 PHP 8.5では、パイプ演算子により、入れ子になった関数を左から順に記述できるようになりました。従来は、関数呼び出しを入れ子にするには、引数として記述する必要があるため、階層が深くなるとカッコが何重にもなり、可読性を妨げる要因となっていました。あるいは、一時的に関数の戻り値を格納する変数など、冗長な記述を生み出していました。

 以下のリストは、文字列をさまざまな関数で加工するものです。

リスト pipe_operator.php(パイプ演算子を利用しない場合)
// 関数を入れ子で呼び出して文字列を加工
$temp = "<p>Hello, world!!</p>";
$result = join("", array_filter(	// 配列の'<', '>'でない要素を結合
    array_map(strtolower(...), 		// 配列要素を小文字に変換
        str_split(htmlentities($temp))),	// 文字列をHTMLと見なしてエンティティ化、配列へ分割
    fn($v) => $v != '<' && $v != '>'));
print $result . PHP_EOL;	// <p>hello, world!!<p>

// 関数の引数と結果受け取りに一時変数を使って文字列を加工
$temp = htmlentities($temp);	// 文字列をHTMLと見なしてエンティティ化
$temp = str_split($temp);	// 文字列を配列に分割
$temp = array_map(strtolower(...), $temp);	// 各要素を小文字に変換
$temp = array_filter($temp, fn($v) => $v != '<' && $v != '>');	// 配列から'<', '>'を除去
$result = join("", $temp);	// 配列を結合して文字列化
print $result . PHP_EOL;	// <p>hello, world!!<p>

[NOTE]関数引数の「...」

 上のリストで、例えばstrtolower関数の引数になっている(ように見える)「...」は、PHP 8.1から利用できるようになったクロージャを生成する記法です。この場合、strtolower関数の呼び出しがクロージャになり、array_map関数に渡されます。なお、可変長引数を表す「...」とは意味が異なります。

 パイプ演算子(|>)を使うことで、関数の戻り値をcallableに渡すことができ、これによって関数呼び出しのチェインを分かりやすく記述することができます。

 mixed |> callable

 callableは、以下のリストのように引数を1個受け取り、処理結果を返すように記述します。なお、callableをアロー関数で記述する場合には、全体をカッコ「()」で囲む必要があります。

リスト pipe_operator.php
// パイプ演算子で文字列を加工
$result = "<p>Hello, world!!</p>"
    |> htmlentities(...)
    |> str_split(...)
    |> (fn($x) => array_map(strtolower(...), $x))
    |> (fn($x) => array_filter($x, fn($v) => $v != '<' && $v != '>'))
    |> (fn($x) => join("", $x));
print $result . PHP_EOL;	// &lt;p&gt;hello, world!!&lt;p&gt;

 カッコを何重にも重ねていたり、一時変数を使用したりしていたコードに比べると、「何を実現したいのか」という意図がはっきり伝わってきます。

クローン時のプロパティ設定

 PHP 8.5では、cloneキーワードが拡張され、オブジェクトのクローン時にプロパティを変更できるようになりました。従来は、クローン後に個々のプロパティを書き換える必要がありました。

リスト clone_property.php(従来のclone命令での書き方)
class MyClass {
    public int $a = 10;
    public int $b = 20;
}

$array = [	// 書き換え用の配列
    "a" => 100,
    "b" => 200,
];

$obj = new MyClass();
$cloned = clone $obj;			// クローン
foreach ($array as $key => $value) {	// ここで書き換える
    $cloned->{$key} = $value;
}
print_r($cloned);	// [a] => 100, [b] => 200

 PHP 8.5のcloneでは、第2引数に書き換えるプロパティの連想配列を与えることで、クローンとプロパティの書き換えを同時に行うことができます。

リスト clone_property.php
$array = [	// 書き換え用の配列
    "a" => 1000,
    "b" => 2000,
];
$cloned = clone($obj, $array);	// クローン+プロパティの書き換え
print_r($cloned);	// [a] => 1000, [b] => 2000

finalプロパティプロモーション

 PHP 8.5では、コンストラクタプロパティプロモーションにfinalプロパティを指定できるようになりました。

 これにより、オーバーライドできないプロパティを明示できます。コンストラクタプロパティプロモーションは、PHP 8.0で導入された、プロパティの宣言と初期化を同時に実行できる構文です。

リスト final_property_promotion.php
class MyClass {
    public function __construct(	// コンストラクタプロパティプロモーション
        public int $x	// プロパティ
    ) {}
}

 そして、finalプロパティは、PHP 8.4で導入された、プロパティをオーバーライド不可にするキーワードです。これまで、コンストラクタプロパティプロモーションではプロパティにfinalを指定できませんでしたが、PHP 8.5においてこれが可能になりました。

 以下のリストではプロパティ$xはfinal指定されているので、継承側でオーバーライドしようとしてもエラーとなります。

リスト final_property_promotion.php
class MyClass {
    public function __construct(
        final public int $x	// finalを付加してオーバーライド不許可
    ) {}
}

class YourClass extends MyClass {
    public function __construct(
        public int $x	// Fatal error: Cannot override final property MyClass::$x
    ) {
        parent::__construct($x);
    }
}

定数のアトリビュート

 PHP 8.5では、定数にアトリビュートを指定できるようになりました。これにより、クラスや関数、変数に指定できていたアトリビュートが、定数にも指定できるように拡張されました。

 アトリビュートとは、PHP 8.0で導入された、クラスや関数にメタデータを与えるための構文です。

リスト constant_attribute.php
// MyAttributeアトリビュートを定義
#[Attribute(Attribute::TARGET_ALL)]
class MyAttribute {
    public function __construct(public string $message) {}
}

#[\MyAttribute("This is a constant")]
const MyConstant = 100;

 アトリビュートは、単一の定数宣言に対して使用できます。また、constキーワードで宣言される定数に対してのみ有効で、define()を使った定数宣言に使用することはできません。

リスト constant_attribute.php
#[\MyAttribute]
const MyConstant2 = 200, MyConstatnt3 = 300;	// 複数の定数宣言→エラー

#[\MyAttribute]
define('MyConstant4', 400);	// define()による定数宣言→エラー

次のページ
静的プロパティの非対称な可視性

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 山内 直(WINGSプロジェクト ヤマウチ ナオ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook <個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。出版社を経てフリーランスとして独立。ライター、エディター、デベロッパー、講師業に従事。屋号は「たまデジ。」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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