セットアップはわずか1時間。自分専用のAIスパコン「DGX Spark」とは
AIを動かすための選択肢は、データセンターのスーパーコンピュータ、オンプレミスのワークステーション、クラウドのGPUインスタンスの3つが一般的だった。しかし、実はもう1つの選択肢がある。NVIDIAが「パーソナルAIスパコン」と呼ぶ、NVIDIA DGX Spark(以下、DGX Spark)だ。
DGX Sparkは、単行本を数冊積み上げたようなコンパクトなサイズで置き場には困らない。加えて、100V電源で動作するため、サーバー用の特別な設備や工事は不要である。静音性にも優れており、下山氏が「ノートパソコンより静かかもしれない」と言うほど、ファンの音はほとんど聞こえない。そのため、開発者のデスクサイドに置くことも可能だ。
下山氏は「絶対的な処理性能ならワークステーションが勝る。しかし、DGX Sparkはオフィスシーンでも一般的な100Vの電力で動作し、非常に静かである。開発者が即座に試行できる環境として、極めて魅力的である」と話す。スーパーコンピュータやワークステーションに比べて手軽に導入でき、固定費で運用できる。そして、開発者の「待ち」問題を解消できるのがDGX Sparkだ。
ワークステーションでAI開発を行う場合は、GPUカードを搭載したマシンを調達し、ドライバやCUDA環境を整える必要がある。例えば、Blackwellアーキテクチャを採用したGPU、NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Editionを使う場合、GPUメモリは96GBだ。コア性能やスループットなどの純粋な計算性能では、ワークステーションが優位に立つ。
一方DGX Sparkは、GPUカードの組み合わせではなく、セットアップ済みの完成品として提供されている。この製品のGPUにあたるのが「GB10」だ。このGB10は、GPUだけではなくCPUも統合されているチップであるところが大きな特徴だ。
GPUとCPUが統合されているため、ストレージからのデータ読み込み効率が高く、メモリ空間が広いため、RTX PRO 6000単体と同じサイズ感のモデルを動かすことができる。もし搭載メモリである128GBで不足する場合は、2台を連結して高速な分散推論や複数ユーザーでの利用に役立てることも可能だ。
また、導入の速さも魅力である。ワークステーションのような複雑なセットアップは不要で、最初からGPUドライバや必要な環境が整っている。加えて、NVIDIA NIMのような最新ソフトウェアスタックにもフルアクセスでき、すぐに開発を開始できる。
下山氏によると「電源を入れてネットワークにつなげば、30分ほどで基本的な環境が整う。生成AIの準備を含めても1時間あれば使い始められるだろう。Ubuntuベースのため、Linuxの知識があれば迷わず操作できるはずだ」と話す。
スーパーコンピュータ並みの性能を持ちながら、セットアップの手軽さはパソコン並みだ。さらに、スーパーコンピュータ同様のDGX OSがセットアップ済みのため、本番環境である大規模なDGXへの移行もシームレスに行える。手軽に導入できるため、DGX Sparkは開発者にとって「自分専用のAIスパコン」となり、従来のオンプレミス環境で発生していた「待ち」を解消できるため、実効性能が高い。
ガジェットとしての魅力も見逃せない。ミニPCのような外観でありながら、超高速ネットワークインターフェース(NVIDIA ConnectX-7)を備えた「自分専用のスパコン」をデスクに置けることは、開発者のモチベーション向上にも寄与するだろう。DGX Sparkは個人向けの販路もあり、高級PC数台分に相当する価格ながら、個人で購入するケースもあるほどだ。

