AI進化に備えた「生データ」の先行蓄積が意味するもの
「Institutionalize」については、生成AIの現在地を俯瞰しながら、次の段階を見据えた。初期のプロンプトエンジニアリングが注目された時代から、主軸はコンテキストエンジニアリングへと移行してきた。一般解を特殊解に変え、汎用的な集合知を自社固有の競争力へ転化することが目的だ。しかし高坂氏はこれも通過点とみる。「何をしたいか、どういう制約のもとで進めるかという意図だけ伝えれば、AIが実行してくれる世界になっていきます」と述べた。
そこで足りなくなるのがデータだという。現在のアプリは生データを人手やモデルで加工してAIに渡しているが、モデルの性能向上とコンテキストウィンドウの拡張が進めば、将来は同じ生データからより豊かな変換が行えるようになる。今のうちに生のデータを蓄積しておくことが、先行投資になるという論理だ。
「このエージェントの仕組みを使っていただくことで、会議の録音データやミーティング計画といった生のデータが溜まっていきます」と高坂氏は明かす。今の業務効率化と同時に、将来に向けてデータを蓄積する視点をエージェント設計に組み込んでおくことが、長期的に効いてくるというのが高坂氏の考えだ。
特に重視するのは2種類のデータだ。1つは会議の録音データまたは文字起こし。もう1つはADR(Architecture Decision Record)であり、アーキテクチャ上の決定だけでなく、結論に至る議論の過程も含めて記録する。以前はGitHubで整形済みのMarkdownとして管理していたが、現在は議論チャットをそのまま保存する形に切り替えた。「今取っていないものは、3年後にAIが賢くなっても存在しないものになってしまいます。これを今残しておくことが重要なポイントです」と高坂氏は強調した。

