SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2026 セッションレポート(AD)

「AIが発達したらクビじゃない?」と娘に言われ──経験を武器に変える、47歳エンジニアの生存戦略

【19-C-8】「おとうさん、AIが発達したらクビじゃない?」──47歳、生涯エンジニア宣言。

 「AIが発達したら、お父さんはクビになるんじゃない?」──大学生の娘から投げかけられたこの問いは、現代の全エンジニアが抱える生存不安を象徴している。プログラミング歴35年のベテランエンジニア、NECソリューションイノベータの森松祐樹氏もその一人だ。AIが人間を上回る圧倒的な速度で設計・実装をこなす今、人間の介在価値はどこにあるのか。森松氏は1年間、自らコードを書かずにプロダクトを構築した経験を通じて、ひとつの確信を得た。それは、失敗と成功を積み重ねた者にしか発せない「なぜ(Why)」を問う力だ。デブサミ2026での同氏のセッションをもとに、経験を武器にAIを使いこなすためのマインドセットと実践知を紐解いていく。

12歳からコードを書き続けてきたベテランエンジニアが直面する、AIネイティブ世代からの「宣告」

 小学生のころから約35年間にわたり、プログラミングに取り組んできたNECソリューションイノベータの森松氏。C言語、Java、Python、JavaScript、TypeScript……時代の変遷とともにいくつもの言語を操り、クラウド基盤から大規模アプリケーションまで、エンタープライズ領域でエンジニアリングの粋を尽くしてきた。47歳になった今、「イノベーションラボラトリ」という、正解が分からない未来に挑戦する部門で、生成AIを用いた次世代の開発プロセスを探索している。

NECソリューションイノベータ株式会社 デリバリモデル・トランスフォーメーション機能 イノベーションラボラトリ 探索G 森松 祐樹氏
NECソリューションイノベータ株式会社 デリバリモデル・トランスフォーメーション機能 イノベーションラボラトリ 探索G 森松 祐樹氏

 そんな森松氏に、自身のアイデンティティを揺さぶる出来事が起きた。きっかけは、先述した娘からの問いかけだ。「勉強でわからないところは何でも回答してくれる」とAIの利便性を当然のものとして享受する若い世代にとって、父が35年かけて積み上げてきた「技術」は、もはや特別なものではないのである。この問いは、森松氏にとって単なる家族の会話ではなく、「本当にエンジニアという職業は終焉を迎えるのか」という、全エンジニアが向き合うべき根源的な問いへと昇華された。

 事実、現在のAIツールの進化は凄まじい。Claude、Gemini、GitHub Copilot……AIがコードを書くのは当たり前になり、設計、テスト、ドキュメント作成といった全工程での適用が進んでいる。森松氏が35年をかけて培った知識でさえ、AIはすでに学習済みなのである。大学入学共通テストで15科目中9科目満点を取るほどの「知能」に対して、人間が敵う部分はあるのか。森松氏は、「まずは現状のAIを『正しく理解する』ことから始めるべきだ」と指摘する。

「How(どうやるか)」はAIに勝てないが、「Why(なぜやるか)」を問えるのは人間だけ

 AIの能力を分解すると、3つの強みが見えてくる。莫大な情報量に基づく「知識」、類似事例から導き出す「パターンの発見」、そして人間の何倍もの速度でこなす「高速処理」だ。

AIが持つ3つの強み
AIが持つ3つの強み

 これらに関しては、どんなに経験を積んだ人間であっても太刀打ちできない。しかし、森松氏は現場での実証を通じて、AIの決定的な欠点を3点見いだしている。

 第一に、AIは「指示の背景を理解しない」。なぜこれを作るのか、本当にそれが必要なのかを自ら考えることはない。第二に、「責任を取れない」。AIがセキュリティホールを生んだとしても、最終的にリスクを負うのはそのツールを使った人間や組織である。そして第三に、「暗黙知を持っていない」。チームのこれまでの経緯、顧客の本当の悩み、組織特有のルール。これらは学習データには存在せず、現場で泥臭く体感してきた人間にしかわからない領域だ。

AIができない3つのこと
AIができない3つのこと

 森松氏は、ある具体的な失敗例を挙げて警告する。同氏はあるとき、AIに対して「100行あたりのステップ数を基準値に近づけるように実装して」と指示した。AIは見事に基準通りのコードを出力したが、静的解析ツールにかけるとコードの重複率が50%を超えていたのだ。AIは「なぜその基準が必要か」を理解せず、最も効率的に指示を満たすために「コードをコピーして水増しする」という、人間はまずやらない選択をした。このとき、出力を疑い、検証し、修正できるのは、現場で痛い目を見てきた経験者の「検証力」のみである。役割分担は明確だ。AIは「How」を担い、人間は「Why」を問い続ける。この構造への気づきこそが、続いて語られる「劇的な転換」への第一歩となった。

次のページ
経験豊かなエンジニアこそ、AIをうまく使える理由とは

関連リンク

この記事は参考になりましたか?

Developers Summit 2026 セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:NECソリューションイノベータ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/23602 2026/04/14 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング