「部活動」が好循環サイクルの起点に——小さな投資が会社を次のフェーズへ押し上げた
投資を止めることは簡単だ。しかし「投資をゼロにしてしまうのは非常にリスクが高い」と前田氏は断言する。営業CFが悪化すると技術投資が抑制され、開発速度が落ちて次の価値創出機会を失い、競争力が低下してさらに営業CFが悪化する——この悪循環サイクルに陥ると抜け出すことが極めて難しくなる。感覚的には「10%、20%でも小さな割合で投資を継続した方がよい」と前田氏は言う。
atama plusの部活動的AI活用は、経営陣との対話のきっかけとなり、「継続投資していきましょう」という意思決定へとつながっていった。小さな活動が「会社はまた次のフェーズに行ける」という自信を経営陣と共有する契機になった。
Netflixが踊り場を何度も経験しながらも投資を止めず——DVD事業から動画配信への転換、他社IPライセンスから自社オリジナルコンテンツへの転換——を繰り返して現在の覇権を握ってきたように、社内でイノベーションのジレンマを乗り越え続けることが重要だ。
AI投資の時代でも変わらない軸——「将来のキャッシュフローに繋がるか」が問いの中心
生成AIの普及により、技術投資の中身は大きく変わりつつある。前田氏によれば、AIへの投資は「ツール」というよりも採用・外注に近い位置づけになる。しかし人件費が固定費であるのに対し、AI投資は変動費だ。業務委託よりもさらに激しく変動するコスト構造に対して、どのように見込みを立てるかという新たな課題がある。
加えて、AIコーディングによってボトルネックが変わってきた。社内アンケートでも、コーディングへの課題感はほぼなく、設計・要件整理や、QA・リリース・運用といった前後の工程にボトルネックが移っているという声が上がっている。投資効果の見直しも会計年度(FY)単位では世の中の潮流に追いつけないため、少なくとも四半期(クオーター)単位での配分見直しが必要だと前田氏は考えている。
それでも強調するのは「変わらない軸がある」ということだ。「AIへの投資であれ何であれ、意思決定の根拠は常に、将来のキャッシュフローを作ることに繋がるかどうかだ」——この問いを起点に技術戦略を語ることで、経営と会計とエンジニアリングが初めてつながる。「経営の言葉で話す」とは、個々のミクロな技術投資を訳すことではない。会社をマクロに見た時の文脈に乗せて、投資の必要性を語ることだと前田氏は締め括った。
