SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

「作りたい!」を形にする個人開発。AIと叶える「あなただけのスタックチャン」開発入門

「ロボットの死」をオープンソースで救いたい! 1万人規模のコミュニティへと育つ「スタックチャン」の原点と生成AIが描く未来

生成AIがもたらす変革とスタックチャンが描く未来

── 生成AIの進化は、スタックチャンのようなコミュニケーションロボットや、個人の創作活動にどのような影響を与えると思われますか?

 生成AIの進化がコミュニケーションロボットに与える影響は、控えめに言っても劇的であり、非常に大きいと言えます。

 生成AIが登場する以前、私も大学院などで対話システムの研究をしていました。当時、少なくとも実用・商用のコミュニケーションロボットの会話は、ルールベースやシナリオベースの設計が中心でした。「人間がAと話したら、ロボットはBと返す」というルールやシナリオを膨大に作り込み、いかに現場に最適化させるかという泥臭い開発が主流だったのです。

 しかし生成AIの登場によって、何の下準備もなしに、即座にロボットと人間が「文脈の通った会話」をできるようになりました。これは、これまでの研究の歴史から見ても本当に凄まじい衝撃です。

 実際、私のメイカー仲間であるrobo8080さんは、OpenAIのAPIが一般公開された翌日に、自身のスタックチャンにその機能を組み込んでいました。そしてその様子を「会話ができるAIスタックチャン」としてSNSに投稿し、凄まじい反響を呼びました。こうしたエンジニアならではのスピード感でロボットが進化していく姿は、見ていて本当にワクワクします。

 また、生成AIの進化は、私たちエンジニアの「創作活動そのもののレイヤー」をも劇的に引き上げてくれています。私自身、最近のスタックチャンのファームウェア開発(ModdableへのOpenAI Realtime APIの対応など)では、全面的にAIエージェントを活用してコーディングを行っています。

 以前は、AIの用途は数十行のコードスニペットを出力してもらう程度のものでした。しかし現在では、大まかな設計さえこちらで決めれば、面倒な実装はすべてAIにお任せできるようになっています。

 さらに最近では、「今、こういう仕様の方向性に迷っている」と状況を人間の言葉で説明すると、AIのほうから「それなら、このような機能を実装してみてはどうですか?」と、上流の提案までしてくれるようになっています。自分がコードを書くというより、開発全体のレイヤーが上がっている感覚です。

 SNSの作例を見ていても、「今までハードウェアもプログラミングも未経験だったけれど、コーディングAIに質問しながら作ったら、1から独自のスタックチャン用アプリが作れた」という初心者の声が驚くほど増えています。

 生成AIは、エンジニアの職を脅かす危機感も与えつつ、それ以上に個人の創作活動のハードルを過去最高にまで引き下げてくれる最高のパートナーになっていると感じます。

── 今後のスタックチャンへの展望を教えてください。、そして最後に、個人開発をしている、または始めようと思っているエンジニアに向けてメッセージをお願いします。

 実は、スタックチャンの開発を始めた当初から、「10カ年計画」というロードマップを立てています。内容は「全世界で1万人規模のコミュニティに育てる」という壮大な目標です。

 現在5年目を迎えてちょうど折り返し地点なのですが、ありがたいことにM5Stack版のキットがすでに数千台規模で販売されており、計画としては非常に順調なペースで目標に向かっています。

 これまでは日本国内のエンジニアコミュニティが中心でしたが、今後は海外に向けてももっとスタックチャンの輪を広げていきたいと考えています。日本人のモノづくりの熱量と、海外のエンジニアたちの熱量がどのように異なり、どのように融合していくのか、これからがとても楽しみです。

 また技術的なチャレンジとしては、スタックチャンの「手のひらサイズで安価」という特性を活かして、「1対多」や「多対多」のロボット間コミュニケーションを実現したいと思っています。

 従来のAIロボットは「人間1人に対してロボット1台」が基本でした。しかし、スタックチャンを部屋にたくさん並べてロボット同士が楽しそうに雑談し、人間はそれを横でなんとなく眺めながら、気になる話題があれば「その話、僕も混ぜてよ」と会話の輪に入っていく。そんな、一見何の役に立つかはわからないけれど、そこにいるだけで家庭が楽しくなるような、新しいコミュニケーションの未来を形にしてみたいです。

── 最後に個人開発をしている、または始めようと思っているエンジニアに向けてメッセージをお願いします。

 現代は、生成AIをはじめとした強力なツールが揃っており、モノづくりを始めるにあたって歴史上で最もハードルが下がっている素晴らしい時代です。これまで「ハードウェアに触ったことがない」「プログラミングが苦手だ」と諦めていた方も、一歩の勇気を持って、まずは自分の作りたいものに向き合ってみてほしいです。

 個人開発の最大の強みは、ビジネスではないからこそ誰の許可も取る必要がなく、自身の初期衝動のままに「やりたいようにやれる」という点にあります。

 お金の損得勘定を抜きにして、自分の脳内にあるアイデアが物理世界で動き出す瞬間の、鳥肌が立つような感動をぜひ皆さんにも味わっていただきたいです。

 環境は完全に整っています。あとは飛び込むだけです。皆さんの自由で、想像を超えるような創作に出会えることを楽しみにしています!

この記事は参考になりましたか?

この記事の著者

小玉 莉子(編集部)(コダマ リコ)

 2022年に新卒で翔泳社へ入社し、CodeZine編集部に配属。 公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科卒。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

関口 達朗(セキグチ タツロウ)

フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/24339 2026/06/05 08:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング