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IT Women Summit セッションレポート

これさえあれば安心な「ガラスの靴」はもうない──先が見通せない時代、自分自身を幸せにするキャリアのつかみ方とは?

【Session5】シンデレラなんかになりたくない!ガラスの靴が割れた時代にどう歩く?

他人の決めたハッピーエンドを拒絶し、自分の足で歩き出す

 セッションの後半、野溝氏は本講演のタイトルおよびテーマの核心として、藤子・F・不二雄の漫画『チンプイ』を引用し、現代のエンジニアが持つべきマインドセットを提示した。主人公の春日エリは、宇宙一の富と権力を持つマール星の王子ルルロフ殿下のお妃として突然選ばれ、周囲からは「宇宙一の光栄で幸せなことだ」と絶賛される。しかし、エリは「王子様に見出されて結婚することこそが女の幸せ」という押し付けられた価値観を拒絶し、シンデレラなんかになりたくないと自分の意志でその求婚を蹴り続けるのである。

 この漫画の連載が開始された1985年は、日本で男女雇用機会均等法が成立した年と重なる。それまでは女性が結婚したら退職するのが当たり前、あるいは30歳で定年を迎えるのが普通であった社会構造に対し、先人たちが闘って選択肢を切り開いてきた歴史の転換点でもあった。「こうした変化が激しい時代こそ、エリちゃんのように自分の幸せを自分でつかみに行く意思が大切なのではないでしょうか」と野溝氏は語る。

 社会を構成する前提条件は良い部分も悪い部分も変わり続けており、それに伴い未来も変化していく。日本では半数の人がAIによって自分の雇用が脅かされる心配をしており、野溝氏は特に若い人から不安を聞くことが多いという。AnthropicのCEOであるダリオ・アモデイ氏も、「初級レベルのホワイトカラー職の半分の仕事が失われる」と予測しているという。

前提となる条件は変わり続け、未来も変化する
前提となる条件は変わり続け、未来も変化する

 この状況について、野溝氏は前提こそ違うものの、「若い人が仕事を奪われるという点が就職氷河期と似ている」と指摘。就職氷河期には「女性は大学に行っても意味がない」という風潮が世の中に広がったが、これは野溝氏にとっての呪いだった。AIが進化を続ける現代においては「AIがエンジニアの仕事を代替するから目指しても仕方ない、学んでも意味がない」という言説が出てきたが、これもまた呪いであり、正しいかどうかはわからないと野溝氏は疑問視する。

 未来がどうなるかは誰も知らない。「だからこそ大事なのは、選択のタイミングが来た際に自分で選ぶことです。自分の人生の責任を取れるのは自分だけですから」と野溝氏は語る。

 AIによってできることが広がったからこそ、勉強や仕事、振り返りなどで準備することは、選択のタイミングが訪れた際に自分で意思決定するための備えになる。予測不能な未来に怯えて、誰かが用意した正解のルートという名の王子様を待つのではなく、エリちゃんのように、自分の幸せは自分でつかみに行くという強い意志こそが、今もっとも求められているのだ。

 さらに野溝氏は「未来だけでなく、過去も変えられる」と語る。過去に起きたことを自ら消化していかに意味付けするかが重要で、今の自分にとってどのような意味があったのか、振り返りをすることで過去も変わっていく。

大ギュられ時代を生き抜くために、明日から実践したい3つのアクション

 野溝氏自身も、これまでのキャリアにおいて周囲の環境や古い価値観に流されて選択してきた経験があるからこそ、自らの人生に責任を持つことの重要性を説いている。同氏がこれからの時代を歩むエンジニアに向けて提示した「自分なりに歩き出すための原則」は、3つのアクションに集約される。

 第一に、人生において重大な選択のタイミングが訪れたとき、周囲の意見や環境に流されず、必ず自分の意志で選ぶこと。第二に、日々の業務に追われるだけの状態を脱し、意識的に振り返りのための余白を確保して、これまでの過去の経験を新しい視点で意味付けし直すこと。そして第三に、まだ見ぬ未来に右往左往するのをやめ、今この瞬間を大切にしてできることをやっていくという点である。

 セッションの最後に行われた質疑応答で、参加者から寄せられた「過去の大きな決断を間違えたとモヤモヤしたとき、どう向き合うべきか」という切実な問いに対し、野溝氏は深く共感しながらも、次のように回答した。

 「過去の決断についてモヤモヤすることは誰にでもあります。しかし、そのような後悔があったからこそ起きたこともあるはずです。それに目を向けて、今の自分にとってどのような意味があったのかを振り返れば、私たちはいくらでも過去を変えられ、自分自身をを幸せにできます」。野溝氏はこう力強く語り、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

CodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

関口 達朗(セキグチ タツロウ)

フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。

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https://codezine.jp/article/detail/24531 2026/06/30 10:00

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