AIモデルはコモディティ、差別化はコンテキストにある
基調講演の冒頭に登壇したのは、アトラシアン株式会社 マーケティング統括マネージャーの朝岡絵里子氏だ。アトラシアン日本法人の13周年を参加者とともに振り返ったうえで、本日のテーマを「AIネイティブな組織」と設定した。AIネイティブな組織では実行プロセスをAIエージェントが担い、人間は目的の設定・判断・トレードオフの見極めにシフトする。
「AIモデルがもたらす知識や推論力は、もはやコモディティです。誰もがお金を出せば同じモデルを使える今、モデルそのものは持続的な差別化要因にはなりません」と朝岡氏は述べた。差別化を生むのは、過去の決断の背景やプロジェクトの経緯といった「組織の記憶」であり、アトラシアンユーザーがすでに蓄積しているその資産を「Teamwork Graph」と呼ぶ。「インテリジェンスがエンジンなら、コンテキストは燃料です」——この方程式を具体的なプロダクトとして実現する詳細を、エンタープライズ部門プロダクトマネジメント責任者のRae Wang氏が引き継いだ。
コードがグラフに入り、AIが開発計画を立てる
アトラシアンが「Teamwork Graph」と呼ぶ知識グラフは、JiraのタスクやConfluenceのページ、コード、Loomの会議録画、Microsoft Teamsのチャット履歴がノードとして繋がるデータ基盤だ。日常の業務を行うだけでグラフが自動的に積み上がり、組織固有の知識が複利的に蓄積される。Wang氏は「仕事をすることで構造が生まれる」と表現した。
今回の基調講演では、グラフへのコネクタが大幅に強化された。Google Driveでは画像内テキストの検索対応、Salesforceではフィールドレベルのインデックス制御、Microsoft Teamsでは会議トランスクリプトの検索対応、GitHubではリアルタイム変更の10分以内インデックス化が実現した。フルスキャン速度は従来比40倍に向上し、サードパーティを含むコネクタ数は約100種類に達する。「管理者はどのデータをインデックス化するかを、完全な可視性と制御をもって正確に決定できる」とWang氏は述べた。
さらに今回は、コードそのものもTeamwork Graphの一部となった。新たに発表されたのはCode Intelligence in Rovo(早期アクセス)だ。数千にも及ぶ複雑なリポジトリに対して瞬時に質問できるようになる。「単なるパターンマッチングではなく、すべてのモジュール、すべての関数、ファイルの意図を実際に理解する」とWang氏は述べた。コードがグラフに入ることで、AIコーディングエージェントは「より高品質な結果を、より速く、はるかに少ないトークンで得られる」という。
Code Intelligence in Rovoを活用する新機能が「AI Planner」だ。Jiraのボードから新機能追加の概要を入力するだけで、Rovoはコードベースをセマンティックにスキャンしながらビジネスドキュメントや設計書を横断参照し、変更が影響する複数のリポジトリを特定する。アーキテクチャ上の意思決定を選択肢の形で提示し、承認するとWork Breakdownが自動実行され、コードの変更履歴を参照しながら適切なタスクと担当者を推薦。コーディングエージェント(Claude CodeやCursorなど)への割り当ても提案され、Jiraにアイテムがアサインされると自動化ルールによってエージェントが作業を開始する。
JiraはAIエージェントの管制塔になる
今回の発表のもう一つの柱は、Agents in JiraがすべてのJiraカスタマーに提供されることだ。MCP経由で任意のエージェントをJiraに接続でき、GitHub Copilotは標準搭載となる。近日中にClaude Code、Cursor、OpenAI Codexのサポートも加わる予定だ。「Jiraから直接、すべてのエージェントの作業をオーケストレーションできる」とWang氏は述べた。月間5億回を超えるエージェント呼び出しがすでに行われており、その数は増え続けているという。
ナレッジワーカーを含むすべての役割がJiraボードから直接エージェントを割り当て、進捗を確認できる環境が整いつつある。Jiraのワークアイテムへのエージェント割り当ては自動的にRovoチャットセッションを作成し、デスクトップでもモバイルでも状況確認や追加指示が行えるようになっている。
