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FileMaker Pro 実践チュートリアル(AD)

基幹システムやERPと連携したFileMaker Proの利用

最終回 RDBMSとの連携運用

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Webデータベースとの連携

 具体的な例として通販を行うWebデータベースとの連携に関して解説しておきましょう。

 例えば、MySQLとPHPによる通販サイトの構築を想像してみましょう。通販サイトに必要な商品検索、ショッピングカート機能、カード決済に関する一連の機能といったものは、MySQLとPHPの組み合わせが得意な分野になりますが、注文を受けた後のピッキングリストや納品書、各種集計表などの帳票類の作成、宅配伝票の印刷、商品マスタの管理や在庫状況の把握などといった機能はFileMaker Proが得意とする分野です。MySQLとFileMaker Proを連携させることで、これらの機能をFileMaker Proで受け持つことができ、かつWeb系システムとは切り離して運用できることも利点です。例えば、Web側システムが何らかの障害でストップしてしまったときに、出荷処理まで行えなくなってしまうのでは、ビジネスに打撃を与えてしまうかも知れません。

Webデータベースで使用しているMySQLと連携して、Webデータベースが不得手な部分をFileMaker Proで行う
Webデータベースで使用しているMySQLと連携して、Webデータベースが不得手な部分をFileMaker Proで行う

 また、商品マスタや在庫数などの管理もFileMaker Pro側で行い、ESSを使用してMySQL側の情報をFileMaker Pro側から更新するようにしておけば、CSVやExcelなどの中間アプリケーションソフトを介すことなく、直接FileMaker Proで各種処理を完結させることが可能となり、利用者の手間(間接的なコスト)も省くことが可能です。

完全なフロントエンドとしてFileMaker Proの採用は間違い

 FileMaker Proを使用すると、短期間で高機能なシステムを開発することは可能ですが、不可能なことも少なからず存在します。時々「FileMaker Proであれば何でもできてしまう」と錯覚してしまうこともありますし、現実的にそう言ったシステム開発の依頼も存在します。たとえば、バックエンドのRDBMSにOracleを採用して、ユーザが利用する機能の全てをFileMaker Proで開発するといった要望なのですが、決して不可能なことではないと思いますが、ユーザの利便性や、システム全体を俯瞰して見たときの完成度などを考えると、本当にそのような開発をしてしまっても良いのかは疑問が残ります。

 どのような開発ツールでも言えることですが、システムのエンドユーザーの業種などは選ばず開発が可能です。しかし、FileMaker Proの場合は次のような要件を求められる業務に関係するシステム開発は得意ではありません。

  • システムに高い堅牢性が求められる業務
  • データに冗長性が求められる業務
  • 高速な処理スピードが求められる業務
  • 命を預かるような業務

 このような要件は得意ではないだけで、ある程度実現することは可能ですが、FileMaker Proで開発をするメリットとリスクをよく分析をしてからFileMaker Proで開発するか、他のツールで開発をするかを判断すると良いでしょう。

FileMaker Pro導入が企業にもたらすメリットとは

 基幹システムやERPなどと連携してFileMaker Proを使用する場合、次のようなメリットが期待できます。

迅速導入によって得られるメリット

 FileMaker Proでシステム開発を行った場合、他のツールで行うシステム開発よりも短期間でシステム開発が可能であることは前述しました。

 いち早くシステムを使用できるということは、単に業務が便利になるという面だけではなく、開発したシステムが業務に対してフィットしているのかどうかも早い段階で検証することが可能です。一般的にERPなどを導入した場合、本番稼働から3ヶ月程度は安定稼働のために業務とシステムの調整に費やしますが、FileMaker Proで開発を行った機能については、容易に改修が可能ですので、業務とのズレを早急に修正でき、システムの安定稼働へ向けた取り組みにも向いていると言えます。

 また、基幹システムへの機能追加や、ERP導入時における追加機能の開発コストの上昇など、当初の予算を超えてしまうようこともあります。コストが合わないという理由で機能追加を断念してしまうケースなど、実際の現場では耳にすることもあると思います。そのような場合においても、FileMaker Proで追加機能の開発を検討することで、問題をクリアできる可能性も広がってくるでしょう。

ビジネスのスピードにシステムを連動させことが可能

 システムが安定稼働をした後も、企業のビジネスはとても速いスピードで変化していきます。その変化にシステムがついて行けず、ビジネスの変化に後付でシステムを合わせていかざるを得ないケースが存在します。基幹システムは時間をかけて改修ができたとしても、エンドユーザーが利用する機能だけでもビジネスの形態に合わせていかなければ、結果としてシステムがビジネスの足かせとなってしまいます。

 FileMaker Proという柔軟にシステム開発が行えるツールが、基幹システムと連動していれば、ビジネスの変化に対してシステムも追随、あるいはビジネスの変化と共にシステムも変化してゆけるのではないでしょうか。

FileMaker Pro 開発ベンダーとの協業

経験が豊富、あるいは教育を受けたFileMaker Proの開発ベンダーを見つける

 FileMaker Proは、システム開発を直感的に行うことができ、FileMaker Proに関する専門教育を受けていなくても比較的容易にある程度のシステムを開発してしまうことは可能です。しかし、いかにシステム開発が容易に行えてしまうFileMaker Proでも、開発時に知らなくてはならない作法や制限などが存在するのも事実です。これらを知っているか知らないかで、完成するシステムの完成度は大きく変わってきてしまいます。

 これから、自社のシステム開発にFileMaker Proを採用しようと計画していたり、ERPや基幹システムと組み合わせてFileMaker Proを使用したいと考えているような場合は、一度FileMaker Proによるシステム開発に精通したコンサルタントに相談することをお勧めします。

 基幹システムの開発者や情報システム部、ERPメーカーのコンサルタントとFileMaker Proに精通したコンサルタントがタッグを組むことで、エンドユーザーに対してより良いシステムを提供できると考えています。

参考

まとめ

 全12回にわたりFileMaker Proのエキスパート達による連載を続けて参りましたが、FileMaker Proをあまりご存じではなかった読者の皆様には、FileMaker Proの開発効率の良さと適応力の広さ・奥行きから、ビジネスへの優位性を何となくでもご理解いただけたのではないかと思います。また既にFileMaker Proをご利用になっている読者の皆様にとっては、FileMaker Proの良さを再確認していただけたのではないでしょうか。

 FileMaker Proは「口コミ」で広がるソフトウェアであると言われています。FileMaker Proに触れて業務で使用してみた人が、FileMaker Proの良さが分かると他の人に勧めたくなってしまうのでしょう。この連載の読者の皆さんが、FileMaker Proに触れてみたときに、「良いソフトだな」とお感じになりましたら、遠慮はいりません。どうぞ隣の席の人に「FileMaker Proでビジネスの効率を上げてみよう」と教えてあげて下さい。

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この記事の著者

高岡 幸生(タカオカ ユキオ)

株式会社ジェネコム 代表取締役。ソフトウェアハウス数社にて経験を積み、1995年 ジェネコム設立。10数年にわたりシステム開発や、エンドユーザコンピューティング・コンサルタントとしてビジネスを展開。クライアント企業のIT部門の代わりの役割を担い、多くのクライアントと二人三脚で企業内IT環境の導入およ...

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