はじめに
このコーナーは、「1.集まる」「2.つなげる」「3.広げる」「4.未来を作り出す」という、とても単純な4つのパラグラフで構成します。今回はその1つ目、「集まる」という部分がテーマです!
「社内ナレッジ共有を目指すのだ!」と言ってしまえば、とってもかっこよく響きますが、そんなに仰々しいものではなく、あくまで「気軽で」「楽しく」「効果のある」活動をはじめる実践のヒントになれば幸いです。
コミュニティへの参加で運命が変わる?!
みなさんは、「隣に座っているメンバーの仕事は知ってるけど、隣の部署ともなると誰が何をやってるのかよくわかんない」ということはないですか。「まさかぁ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、同じ会社・同じ建物の中で働いていてもこんな状況になってしまうことは、実はあり得るのではないでしょか。
組込みソフトウェア開発は、10年前と比べて、その様相が大きく変わってきています。一昔前は、ハードウェア設計ではできないことを、小さなソフトウェア(アセンブラ設計など)が補なうというようなイメージを持たれていました。しかし、今日では機器全体の設計も複雑になり、組込みソフトウェア開発もエンタープライズ開発と同等か、もしくはそれ以上の難易度を抱えるようになってきています。
このような現状の中で、私たち設計・開発エンジニアは、新しい技術や、市場の動向、ソフトウェアプロセスの変化などを敏感につかみ、必要なノウハウを取り込み、開発現場を迅速に変化させていくことを常に求められています。
エンジニア同士のヒューマンネットワーク
そんなエンジニアにとって、重要な情報収集媒体となっているものの1つが、社外に存在するコミュニティです。NPO規模のもの、定期的にイベントを開催しているものから、興味がある人をまず集めて活動を始めたばかりの小さなものまで、さまざまなコミュニティが日本国内にも非常に多く存在しています。昨年行われた翔泳社主催のデブサミ2007でも、約50のコミュニティが参加していました。
エンジニアは、社外コミュニティに参加することで、さまざまな技術動向や、ノウハウを共有できるだけではなく、開発の現場で実際に苦労している事例なども、社内情報に触れない範囲で赤裸々に聞くことができます。そして、最も大きな収穫となるのは、エンジニア同士のヒューマンネットワークを構築できることです。
このような社外コミュニティへの参加をきっかけに、エンジニアとして大きな転機を迎えた方や、ご自身の運命が変わってしまった方もいらっしゃるでしょう。そこまででなくとも、コミュニティで手に入れたノウハウを活かしながら開発に応用された経験を持つ方も多いと思います。筆者自身も、社外コミュニティからいろいろな刺激をもらい、人生の羅針盤に多大な影響を与えられています。
忙しい人ほど参加している
みなさんの周りのエンジニアを見た場合はどうでしょうか。コミュニティは身近なところに山のように存在しているのに、実際に参加するというメンバーは意外と少なく、コミュニティが主催するイベントやセミナーに上司命令で出張し、受動的に見学するだけというパターンも多いのではないでしょうか。
筆者も社内のSEPGとして、部署のエンジニアたちに「興味を持ったコミュニティには、どんどん参加して、ともかく世の中の現状を見てきて」とは伝えるのですが、参加してくれる人は決して多くありません。「本当は行ってみたいんだけど、忙しくて、そんな暇がないんだよぉ」という一言は耳にします。
もちろん、それはよくわかるのですが、そのバタバタ状態を打破するヒントを獲得するために、社外コミュニティに参加するわけですし、実際、社外コミュニティに参加している人は、時間が有り余っているような暇な人ばかりというわけでは決してなく、どちらかというと「よくそんな時間がありますよね」と、思わず聞きたくなるような業界のキーマンが自発的に多数参加しているのが実情なのですけどね……。