場をつくり出すシナプスって?
参加者が増えないのが現実でも、このまま放置したままにしたくはありません。身の回りのエンジニアを救うため、社内のエンジニアを救うため……というと、少し大げさかもしれませんが、まずは社外コミュニティにも負けない、なんらかの「場」をつくることが必要だと考えました。
- 毎日の設計・開発業務に追われながら、精一杯の努力をしているのだけれども、どうしても引きこもって1人で格闘しがちなエンジニアに、ちょっとした解決へのヒントを得る機会をつくる
- 新しい取組みをやってみたいのだけど、雑誌や書籍だけで得た情報だけでは、導入に踏み込むことができず足踏みをしているエンジニアに、ちょっとした勇気を得る機会をつくる
- 自分自身の設計開発スキルは本当にこのままでいいのか不安を感じ、立ち位置が確信できないエンジニアに、ちょっとした自信を得る機会をつくる
- たくさんのノウハウやスキルを持っているのだが、紹介することができず不完全燃焼しているエンジニアに、ちょっとした横展開の機会をつくる
これらの機会をつくる「場」は、社外コミュニティに期待するまでもなく、もしかすると社内で簡単に実現することはできないでしょうか。
社内シナプスの活性化
組込み業界には、メーカーとその子会社という組織体系を持つ場合も多いですし、所属の会社名が違っていても、グループとしては協力体制ができていたりもします。わざわざ社外に出なくとも、同じ土俵で気軽に話せるエンジニアが、実は身近にたくさんいるという場合がほとんどではないでしょうか。もちろん、会社内にいろいろな「しがらみ」があり、次第に部署の壁が厚くなってしまい、エンジニア同士の横のつながりが少なくなってしまっている場合も少なくはありませんけど。
とはいえ、社内のエンジニア集団で1つの大きな「脳」が作られていると考えた場合、それぞれのエンジニアを神経細胞と考えてみると、すごい量の記憶情報が蓄積されているはずです。しかし、それらをつなげるための「シナプス」が十分機能できていないとは考えられないでしょうか。
例えば、社外コミュニティからの情報は、それぞれの持つ感覚機能(つまり、参加したエンジニア1人ひとりの目と耳と脳)が働いているため、集団の大きな脳の中にいったん情報として伝達はされているはずなのですが、それらを脳の中に整理蓄積したのち、次のアクションを引き出すための運動機能へ伝えることができていないと分析することができませんか。
まずは、社内の巨大な脳に目を向けてみて、社内のシナプスを活性化させる「社内コミュニティ」の活用方法についてまとめてみたいと思います。
「きっかけ」をつかむ
みなさんもそうだと思いますが、エンジニアは自分の仕事に自信を持っています。そして、自信を持っているからこそ、日光東照宮のサル達とは正反対の行動をとろうとします。つまり、新しい技術や自分達の技術などを「言いたい」「聞きたい」「見たい」と日頃から思い続けているはずです。エンジニアは、この3つの欲望を常に抱いているわけですので、アンテナさえ敏感にしていれば「きっかけ」は、すぐにでもやってきます。
「X.PUG」のきっかけも同じようなものでした。筆者は、前職の上司が本を書いたという噂をたまたま耳にし、話を聞きに行きました。そのときの本が『eXtreme Programming実践レポート』(翔泳社)という、日本XPユーザグループ関西支部のメンバーの共同執筆による書籍でした。その上司から喫茶店でなが~いXPの講義を受講したあと、数日後にはXPユーザグループにスタッフとして参加することになりました。そして、このユーザグループには、偶然にも自分が所属している会社から、私以外に2人もスタッフとして参加していました。
同じ会社の2人に社外で会い、いろいろと話をするうちに、自社でもXPが実践されていることを知りました。当時は筆者も開発現場にいましたので、自分自身で少しずつ取り組んでみようという勇気をもらいました。しかし、これだけでは「たまたま知り合いができて、ヒントをもらいました」という自己満足だけで終わってしまいます。当時は、まだまだXPも日本に来たばかり、本当に開発現場に適応できるものなのか、効果があるものなのかはグレーな状態でした。せっかく同じ会社のメンバーが3人も集まったのだから、興味を持っている人たちをもっと社内で集めて、それぞれの現場でのトライや、困っていることを共有していくべきだという結論に行き着きました。これが、「X.PUG」の立ち上げという次のアクションにつながることになります。
そのままにしとくともったいない
その後、自社でいろいろと調べていくうちに、日本XPユーザグループには参加していないものの、XPに興味を持っている人、実際に導入を始めている人もいることが情報として伝わってきました。何らかのアクションにつなげようという強い思いがあったから、みんなのアンテナが敏感になっていたのでしょう。自然に噂が噂を引き込んでしまったという効果が出始めるわけです。
まだ名前も決まっていない社内ユーザグループは、7人の手によって飲み会形式のキックオフからスタートすることになりました。このように、きっかけは探し出すというよりも、アンテナさえ張っていれば自然と転がり込んでくるものなのかもしれません。
- 社内の技術発表会で発表している人に興味を持ち、声を掛けてみた
- 社外コミュニティのセミナーなどで、偶然同じ会社のエンジニアがスタッフをしていた
- 同期が飲み会につれてきた他部署のメンバーと、意外にも共通の話題で盛り上がってしまった
- mixiコミュニティに参加してたら、偶然に同じ会社の人を見つけた
などなど、きっかけなんてほんの些細なものかもしれません。重要なことは、そのきっかけを「そのままにしとくともったいないよね」と感じられるかどうかだと思います。人の縁は一期一会なのですから、きっかけを単なる偶然として片付けてしまい、つかみ損ねれば、目の前から簡単に流れていってしまいます。「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ」とは草枕の冒頭ですが、いやいや、そんなに窮屈でもないですよ。だって、ちっちゃなアクションでは、まだまだ角が立つなんてことはないですしね。ほんのちっちゃな角で痛い思いをするのは、足の小指ぐらいですってば。
