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グローバルな技術プロジェクトのマネジメントに関するベストプラクティス

技術とマネジメントとの相互作用を上手に活用するスキルとは

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プロジェクトマネジメントモデルの例

 次に、さまざまなグローバルプロジェクトマネジメント状況に適したプロジェクトマネジメントモデルを2つ紹介します。

クロスファンクショナルモデル

 一般に、このモデルは製品主体の企業に当てはまります。欧州とインドの両方にオフィスを持つ「Zulu Inc.」という企業があるとしましょう。Zuluのコンサルティング部門は、顧客と連携して顧客に合ったソリューションを展開しています。一般に、これらのプロジェクトの契約期間は100時間で、Zuluのコンサルタントは一度に複数のプロジェクトにかかわることもあります。

 このケースでお勧めする組織構成は、顧客の地域には同じ文化を持つローカルのプロジェクトマネジメントチームを用意し、インドには納入コンサルタントのチームを用意することです。これにより、スウェーデン、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアにあるZuluオフィスのプロジェクトマネージャたちは顧客と直接会ってやり取りをし、インドにいる技術力の高い納入コンサルタントチームは各地のプロジェクトマネージャと連携して仕事を進めるという体制ができます。納入コンサルタントは1つの地域につき複数いる可能性がありますが、プロジェクトマネージャは1人のみであることに注意してください。これで、コスト効率性とローカル適応性との最適なバランスを実現できます。プロジェクトマネージャはローカルな顧客対応によって顧客満足の達成を図ることができ、リモートでの納入処理によってコスト効率性を最大化できます。

 このフレームワークの主な課題は、Zulu側で速やかな対応が必要であること、プロジェクト納期が短くなること、コンサルティングが必要になることです。対応に遅れがあると、納期に間に合わない可能性があります。このフレームワーク内でこうした問題やその他の問題を解決するためのベストプラクティスは、次のとおりです。

  1. チームを作成したら、チームリーダーがキックオフ電話会議を手配する必要がある。
  2. キックオフ電話会議を行う前に、キックオフ電子メールを送信して、すべてのチームメンバーが認識しておく必要があるビジネス用語やその他の有用な情報を分かち合う。
  3. キックオフ電話会議のときに、良好な仕事関係の土台を築くために全員を紹介する。その後で、プロジェクト、チームの組織構造について説明し、電子メールを使って、分かち合う情報についての簡単に質問を受ける。
  4. プロジェクトのビジョンと目標を明確に示し、必要に応じて、プロジェクトの各ポイントで十分すぎるくらいのコミュニケーションを取る。コミュニケーションはやり過ぎになることもあるが、これは、複数の地域にまたがって仕事をするときのいわば必要悪である。
  5. 帰宅前および朝1番に電子メールに返信する。帰宅前と朝1番でのメールの返信により、対応性が向上し、相手に作業が進行中であることを認識させることができ、どうなっているかを心配させることがなくなる。
  6. 時差に敏感になる。早く起床したり、定期的に少し残業したりする。
  7. すべてのミーティングで、事前に議題を設定し、会議終了後に活動項目を公開し、イントラネット上など、中央のアクセス可能な場所にその両方およびその他のすべての共有資料を置く。会議にまつわる全作業時間の1/3を事前準備、1/3を実際の会議、そして残りの1/3を会議のフォローに当てる。
  8. プロジェクトマネジメントの適切な制御権を持つ重要な利害関係者との1対1のミーティングをスケジュールする。

オフショアモデル

 プロジェクトの全体像は次のとおりです。「Hula Inc.」はサービス会社です。この会社は、インドにオフショア開発用の大きなオフィスを持っています。通常は、1年スパンの大規模なプロジェクトを請け負い、1人が1つのプロジェクトを担当します。ある2年契約のプロジェクトで、同社はWaldart Inc.のB2Cアプリケーションの作成を任されました。

 このケースでお勧めする組織構成は、Hulaの社内からWaldartのITオフィスに経験豊富なローカルの納入マネージャを配置することです。このマネージャがWaldartのIT部署のマネジメントとの関係を維持します。開発チームはインドに置きますが、プロジェクトマネージャはWaldartを必要に応じて訪問し、要件を収集して分析を実行します。この組織構成はかなり有望です。大きなチームをインドに置くため技術的な競争力を保ちつつコスト効率性を確保でき、さらに納入マネージャとプロジェクトマネージャがローカルにいて顧客とやり取りするため、ローカル適応性も維持されます。

 このモデルを長期的に成功させるためには、以下のことを実行します。

  1. 適切に定義されたプロジェクト方法論のフレームワークを用意する。
  2. 統合されたシステム、およびガバナンスと制御のための測定基準を導入する。
  3. 大規模なプロジェクトでは、スキルレベルを評価するためのメカニズムとなる認証を特定し、個人がスキルセットを身に付け、期待される適性を満たすことができるようにする。
  4. 測定基準に焦点を当て、進捗状況を文書化して問題を明らかにする。
  5. 専門分野の知識を持つ。
  6. 上層部からのコミットメントを得る。
  7. ナレッジマネジメントの戦略を導入する。

 要するに、学習とは長期にわたって継続的に発生する行動上の変化です。グローバルマネージャとして成功しようと思うならば、これらのベストプラクティスをただ読んで終わらせるのではなく、積極的に採用し、プロジェクトを通じて積極的に学習していきましょう。

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Puneet M. Sangal(Puneet M. Sangal)

プラクティスマネージャ。欧州、太平洋地域、インド、および米国で12年間にわたりグローバルマネジメント、プロジェクトマネジメント、営業サービス、コンサルティング、ソフトウェア開発に携わる。IIMコルコタでエグゼクティブマネジメントを学び、ノースイースタン大学(マサチューセッツ州ボストン)で理学修士号、...

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