はじめに
「ベストプラクティス」の話をするときには、まずこの言葉が何を指しているかを定義しなければなりません。ここでは、ベストプラクティスとは次のようなものであると考えます。
- 機能するもの
- うまく機能するもの
- 繰り返しうまく機能するもの
- 競争上の優位をもたらすもの
- 事業計画の中で明確化できるもの
- 企業を問題から守るもの
本稿では、グローバルな技術プロジェクトのマネジメントに関して、さまざまな経験やリソースから得られたベストプラクティスを示します。また、近年ますます重要になりつつある技術とマネジメントとの相互作用をうまく活用するために必要なスキルを紹介します。
さまざまな地域にまたがる技術プロジェクトのマネジメントでは多様性がどうしても生じてくるため、考え方の再構築が必要になります。グローバリゼーションのおかげで、グローバルな(つまり国際的な)性質を持つプロジェクトの需要は拡大し、さらに広がりを見せています。さまざまな種類の国や文化、ベストプラクティスといったものになじみのないプロジェクトマネージャは、このような国際的プロジェクトを国内のプロジェクトマネジメントの成功事例と同じ手法でマネジメントしようとしますが、それが大きな問題を生み、結果的に失敗や資金の無駄遣いに終わることもありえます。このような事態を避けるには、プロジェクトマネージャはコスト効率性とローカル適応性とのバランスを考えながら、顧客満足の達成を目指す必要があります(図1を参照)。
それぞれの用語は次のことを意味します。
- コスト効率性(cost efficiency)-作業の質と効率性を維持しつつコストを削減すること。コスト効率性を高める方策としては、アウトソーシングやオフショア開発などがある。
- ローカル適応性(local responsiveness)-現地で、顧客と同じ地域において、場合によっては顧客と同じ文化や言語のバックグラウンドを共有して活動すること。
- 顧客満足(customer satisfaction)-さまざまな状況、プロジェクト、顧客の要件を踏まえてローカル適応性とコスト効率性との微妙なバランスを取り、結果的に顧客を満足させること。
この話をシェークスピア風にまとめたら次のようになるでしょう。
おお!このフラット化した世界
もはや距離は問題ではない
コスト効率性かローカル適応性か、それが問題だ
グローバルな観点でプランニングするときには、適切なプロジェクトマネジメントフレームワークが役立ちます。このフレームワークは静的なものではありません。特定のプロジェクトの方法論、契約の種類(短期か長期か)、顧客の種類、要件、文化の違いなどに従ってカスタマイズする必要があり、経験と共に進化します。