文化の違いの問題
文化の違いは、プロジェクトだけでなく、組織全体を作ったり壊したりする可能性があるため、特に重要です。以下は、Pankaj Ghemawat著『Redefining Global Strategy』(パンカシ=ゲマワット著『コークの味は国ごとに違うべきか』)からの引用です。
「ニュートンの法則を国際的な取引に当てはめると、2国間の取引は、その経済的規模に正比例し、その物理的および文化的距離に反比例する。」
(Newton's law adapted to international trade: Trade between two countries will be directly related to their economic sizes and inversely related to their physical and cultural distance.)
この証拠として、ほとんどのグローバルなプロジェクトは、文化的理解の欠如により失敗しています。文化は人間の行動、姿勢、価値、信念に影響を与えます。SP Robbinsは『Organizational Behavior』(ステファン・P. ロビンス著『組織行動のマネジメント』)の中で、次のように書いています。
「姿勢とは、物事に対して一貫して同じ反応を示す感情的な傾向である。姿勢は行動を引き起こす。信念とは、仮の真理であるのに対し、価値とは、特定の事情を他者よりも好む一般的な傾向である。」
(Attitude is an emotional tendency to react consistently to an object. Attitude leads to behavior. Belief is an assumed truth, while value is a broad tendency to prefer a certain state of affairs over others.)
組織の文化は、国際文化、国民文化、地域文化の上に、もう1つ別の複雑な層をもたらします。プロジェクトマネージャの目標は、これらの違いを理解し、時間をかけ、経験を重ねて、それらの違いを仲良く共存させることです。文化の達人になるため確実な方法はありませんが、図2のモデルは、違いがわからない場合に何をしたらよいかについてのガイドラインとして使用できます。
現在では、グローバルな技術マネジメントに焦点を当てた専門プログラムやMBAの学位さえあり、このようなマネジメントにおけるベストプラクティスや、文化の違いなど、さまざまな課題についての研究がされています。当代の複数の一流マネージャが、今日の最大の課題はグローバルマネジメントであると述べています。グローバルなプロジェクトマネジメントを仕事にする人ならば、このようなプログラムで学ぶことも有用でしょう。結局のところ、プロジェクトマネージャに必要な能力は、バーチャルな「チーム」を結びつけ、リスクと文化的な障害に対処し、ベストプラクティスをまとめることです。
この意味で、組織はどう国際化しているのでしょうか。組織に多国籍企業(MNC: Multi-National Corporation)という月並みな用語を使うのは簡単ですが、マネジメントの理論では、その概念が次のように分類されています。
- 国際組織(international organization)-経営者は、海外業務を国内業務の付属物と考えている。
- マルチドメスティック組織(multi-domestic organization)-経営者は、海外業務を独立したビジネスのポートフォリオと考えている。
- グローバル組織(global organization)-経営者は、海外業務を統一グローバル市場への販売パイプラインと考えている。
- 多国籍企業(Transnational)-経営者は、海外業務を共有の意思決定の環境と考えている。
各組織は、グローバルなプロジェクトマネジメントについて異なる種類の問題を抱えています。ベストプラクティスとして、プロジェクトマネージャは、顧客の組織のタイプを判別し、それに従って最良のマネジメントプロセスを策定する必要があります(図3を参照)。