ユーザ事例と技術情報のトラックでのセッション
FileMaker Conference 2009の午後からは、2か所の会場に分かれてのセッションが行われた。ユーザ自身がFileMakerを使って業務改善を行ったことをレポートする「ソリューショントラック」と、テクニカル情報を提供するための「テクニカルトラック」が並行して実施された。残念ながら筆者1人で両方をレポートすることはできないので、本レポートはテクニカルトラックのみとさせていただく。ソリューショントラックについてはタイトルと講演者のみのご紹介となる点をご了承いただきたい。
1. | 既製の ERP パッケージでは難しかった希望通りの詳細な管理業務が可能に。しかも、開発コストも期間も、大幅に削減。 | 株式会社ジェネコム |
2. | 医療 IT システムは医療現場で作られる! ― J-SUMMITS がつなぐユーザーメードの輪 ― | 名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター長 CMIO(Chief Medical Information Officer) 吉田 茂 氏 |
3. | お客様と社員、社員同士のコミュニケーションを促進させるため、全社的に横断するワークフローを構築。営業力の強化、食の安全確保、迅速なクレーム対応を実現。 | 日本ピュアフード株式会社 管理グループ経営管理チーム 高橋 徹 氏 |
旧バージョンからの移行の問題に応えるセッション
テクニカルトラックの1つ目のセッションは、株式会社レクレアルの茂田克格氏による「すっきり解決! バージョン6以前からの移行テクニック」と題されたセッションが開催された。2004年にリリースされたFileMaker 7は以前の「バージョン6」とは大きく変わり、そのままの移行が難しい場合が発生していた。そしてそこから5年、現在もバージョン6以前の FileMakerのままで実際に業務を運用している場合も少なくない。ユーザも開発者も、何らかのタイミングでアップデートを検討するが、どんな点に注意が必要なのかということは作り込んだソリューションほど見えにくくなる。結果、放置ということにもなり、5年が経過した今でも「移行の問題」は終わらないのである。
茂田氏は移行をする理由、そしてしない理由を挙げ、移行の難しさを示し、実際にどういう理由で移行した結果動かなくなってしまうのかということを、実例を交えながら解説した。また、動作が違っている点や、バージョン6までにあったToday関数の実例を交えながら、移行の勘所をデモした。そして、最後にポイントとして、フィールド名の整理を旧バージョンで行った上で、まずはファイルの変換のみに単純な移行をして様子を見て、少しずつFileMaker 7以降の仕組みに適合させるのがポイントであることが説明された。また、タイトルとは異なるが、FileMakerのデータベース修復機能についての注意点も説明された。修復はあくまでデータをなんとか復活させるための手段であり、修復したデータベースを使い続けることは新たな崩壊にもつながる危険性があることを知っておく必要があると警告した。
開発者にとって知っておくべきセキュリティの知識
2つの目のトラックは、株式会社スプラッシュ竹内康二氏による「セキュリティ ベストプラクティス」というセッションだ。FileMaker 7以降セキュリティモデルが変更されたが、開発者やあるいは利用現場でそれが十分に浸透して活かされているわけではないことも事実だ。竹内氏のセッションでは、機能を理解するための勘所と、実際のソリューションに適用するためにどのような配慮が必要かということが分かりやすく説明された。
まず、アカウントとアクセス権を分けて考えるという基本的な概念を説明し、アカウントにはディレクトリサービスを利用できる点などを説明した。そして実際にセキュリティを実現するための手法として、GUIを工夫する「表面的なコントロール」とアクセス権設定をしっかりおこなう「いばらの道」の2通りがあることを説明し、それぞれの手法について特徴や方法などが具体的に説明された。また、FileMaker Serverのネットワーク通信は設定を変更しないと暗号化されないことや、Adminという名前は使わない方がいいこと、そしてユーザ名と同じパスワードや1つのアカウントを共有することの危険性などを説明し、セキュリティ的な問題点を具体的に示した。さらに、ユーザのテーブルを持つ場合でのアカウント管理の手法が実例で示された。最後に、「現在は情報を流出させた側も罪が問われる」ことを指摘し、開発者がセキュリティに対する高い意識を持つ必要性を説いた。