デベロッパーがコードを書くことに専念できる環境を提供
Webアプリケーションの開発を始めるには、その前に実行環境をインストールし、構築しなければなりません。ときには、データベースなどのバックエンドサービスとアプリケーションとを連携させる必要があります。
BlueMixは、これらの面倒な作業を簡易化し、デベロッパーがすぐにプログラミングを始められる環境を提供します。BlueMixのダッシュボードでは、カタログから「ボイラープレート」「ランタイム」「サービス」を選ぶことで、簡単にアプリケーションの作成、デプロイを行うことができます。
ボイラープレート
ボイラープレートでは、ランタイム、サービス、コンテナなど、アプリケーションに必要な環境をすべて含むテンプレート的なアプリケーションを構築できます。次の4つが用意されています。
- Java Web Starter
- Node JS Web Starter
- Mobile Backend Starter
- Java+DB
ランタイム
ランタイムは、アプリケーションの実行環境です。標準では次の4つを利用可能です。
- Liberty for Java
- Node.js
- Ruby on Rails
- Ruby Sinatra
サービス
BlueMixでは、次の表に示すように、さまざまなカテゴリのバックエンドサービスを利用できます。
カテゴリ | サービス |
---|---|
Web/アプリケーションサービス |
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モバイルサービス |
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データ管理サービス ビッグデータ |
|
ベースはCloud Foundry
BlueMixは、オープンソースのPaaSソフトウェア「Cloud Foundry」をベースに開発されました。そのため、Cloud Foundry向けに作成された「Buildpack」を導入することで、開発環境を容易に拡張できます。
Buildpackは、ランタイム環境やフレームワークを提供するためのスクリプトです。標準で提供されているLiverty for JavaやNode.jsもBuildpackになります。Cloud Foundry向けに開発され、公開されているBuildpackを導入すれば、標準以外の言語や実行環境も利用可能です。
Buildpackの公開サイト
「Buildpack information for Cloud Foundry v2」
なお、Cloud Foundryはオープンソースソフトウェアであり、デベロッパーのコミュニティーではさまざまな活動が行われています。BlueMixだけでなく、Cloud Foundryのコミュニティーに参加することで、ドキュメントやチュートリアルをはじめ、開発時に役立つ情報を得ることができます。
BlueMixおよびCloud Foundryのコミュニティーサイト
・BlueMix Developers Community
・Cloud Foundry
・日本Cloud Foundryグループ
次のページから、現在提供されているBlueMixのベータ版で、アプリケーションの作成やデプロイを行ってみます。
BlueMixを利用するための登録と申請
では、BlueMixのベータ版を試してみましょう。最初に、BlueMixのベータ版を利用するためのユーザー登録と申請を行います。
1. BlueMixのWebサイトにアクセス
まず、ブラウザでBlueMixのWeb サイトを開きます。
2. IBM IDの登録
[Sign up for the free beta]ボタンをクリックすると、IBM IDの新規登録画面が表示されます。IBM IDをすでに持っている場合は新規登録の必要はありませんので、[Already have an IBM id?]をクリックし、次の画面でIBM IDを入力しサインインします。IBM IDを持っていない場合は、この画面にしたがって新規登録(無償)を行ってください。
すると、申請が受け付けられたことを表す画面が表示されます。
3. 利用申請の完了
利用申請が通ると、IBM IDとして登録したメールアドレス宛てに「Codename: BlueMix – 試用版の確認」というタイトルのメールが届きます。メールの「登録を完了するにはここをクリックしてください。」をクリックし、表示されたサインイン画面でIBM IDとパスワードを入力すると、BlueMixのダッシュボードにアクセスできます。
ダッシュボードでスターターアプリを作成
それでは、アプリケーションの作成を始めましょう。BlueMixでは、次の方法でアプリケーションを作成・デプロイできます。
- BlueMixのダッシュボードを利用する
- コマンドラインツール「cf」を利用する
- JazzHubなどの開発環境を利用する
本稿では、BlueMixのダッシュボードでアプリケーションの実行環境を作成し、そこにcfツールでコードをデプロイする方法を紹介します。手元の環境はWindowsです。
BlueMixのダッシュボードでは、ランタイムを選択してスターターアプリを簡単に作成できます。スターターアプリとは、BlueMixが自動生成するアプリケーションで、開発するアプリケーションのひな形になるものです。
1. カタログの表示
BlueMixにログインし、上部バナーの「CATALOG」をクリックしてカタログを表示します。
2. アプリケーションの追加
作成するアプリケーションのタイプを指定しますが、ここではNode.jsをクリックします。ダイアログボックスが表示されたら[CREATE APP]ボタンをクリックします。
3. アプリケーションの生成
[Name]にアプリケーション名、[Host]にホスト名を入力します。デフォルトでは[Name]に入力したアプリケーション名が[Host]に反映されます。
[CREATE]ボタンをクリックすると、アプリケーションが自動生成され、デプロイ後、起動します。
4. 作成したアプリケーションの表示
ダッシュボードには、作成したスターターアプリが表示されています。
5. アプリケーションの実行
ダッシュボートに表示されたアプリケーションの下にあるリンク(ここではBlueTest1.ng.bluemix.net)をクリックすると、そのアプリケーションを実行できます。
6. アプリケーションの概要を表示
ダッシュボードで作成してアプリケーションをクリックすると、アプリケーションの概要が表示されます。
7. スターターアプリのダウンロード
右上の歯車のアイコンをクリックして[View Guide]を選択すると、アプリケーションの修正方法が表示されます。「Download the starter application package」をクリックすると、作成したスターターアプリをダウンロードできます。これを修正しカスタマイズすることで、アプリケーションを構築できます。
なお、修正したアプリケーションを再度デプロイするには、次のページで説明するコマンドラインツール「cf」を利用します。
cfツールでアプリをデプロイ
cfは、BlueMixにアクセスし、ローカルで作成したアプリのデプロイなどを行うコマンドラインツールです。以下のように使用します。
1. cfのインストール
最初に、cfをインストールします。こちらのサイトからインストーラを入手し、任意の場所にcfをインストールしてください。
2. cfコマンドのパスの設定
コマンドプロンプトでcf -vコマンドを実行すると、cfのバージョンが表示されます。
3. BlueMixの場所を指定
cf apiコマンドを実行し、BlueMixの場所(https://api.ng.bluemix.net)を指定します。
4. BlueMixにログイン
cf loginコマンドでBlueMixにログインします。ログインにはIBM IDと、BlueMixで使用しているものと同じパスワードを指定します。
5. アプリケーションをBlueMixにデプロイ
cf pushコマンドで、ローカルで作成したアプリケーションをBlueMixにデプロイします。ここでは、BlueMixのドキュメントサイトからダウンロードできるサンプルコードを利用します。
サンプルコードを任意のディレクトリ(中は空であること)に展開したら、そのディレクトリに移動して、cf push <アプリ名>コマンドを実行します。cf pushコマンドは、ディレクトリの内容をすべてアップロードします。
6. アプリケーションの実行
デプロイが完了したら、ブラウザでアプリケーションにアクセスします(ここでは、bluetest2.ng.bluemix.net)。
7. デプロイしたアプリケーションを確認
BlueMixのダッシュボードを表示すると、デプロイしたアプリケーションを確認できます。
バックエンドサービスを追加
ダッシュボードでは、アプリケーションに対し、データベースなどのサービスを簡単に追加できます。ここからは、その手順を見ていきます。
1. サービスの一覧を表示
ダッシュボードの[Add a service]ボタンをクリックして、サービスの一覧を表示します。
2. 追加したいサービスを選択
サービスの一覧が表示されたら、アプリケーションに追加したいサービスをクリックし、[ADD TO APPLICATION]ボタンをクリックします。
3. サービスを追加するアプリケーションを選択
サービスを追加するアプリケーションを選択して、[CREATE]ボタンをクリックします。アプリケーションの再起動が必要というメッセージが表示されたら、[OK]ボタンをクリックします。
4. 追加したサービスを表示
ダッシュボードに、追加したサービスが表示されます。
ここまで見てきたように、BlueMixではさまざまなランタイム、サービスを利用して、簡単にアプリケーションを開発し、デプロイすることができます。
BlueMixを利用することで、デベロッパーは開発作業に専念でき、作業効率の向上が期待できます。ITマネージャーは、実行環境や検証環境の構築・運用管理作業を効率化できます。ビジネスリーダーは、ビジネス成長を実現する新しいアプリケーションの開発体制を確立し、急激な市場の変化にも迅速に対応できます。
三者三様の価値をもたらすBlueMixにぜひ一度トライしてみてください。
BlueMixで開発したアプリ・サービスのコンテストを開催
日本IBMでは、BlueMixを使用して開発したアプリケーションやサービスを競うコンテスト「IBM BlueMix Challenge」を、5月21日から開催します。募集要項や条件といったコンテストの詳細は、5月21日~22日に発表される予定です。
日本IBMでは、同社とのパートナービジネスに興味をお持ちのソフトウェア開発企業、サービスプロバイダーなどの中小企業、スタートアップ企業を対象に、パートナーエコシステム施策とBlueMix、およびパートナー先進事例を紹介するセミナー「IBM Software & Cloud Innovation」を開催します。
開催日は2014年5月13日で、セミナーが14:00~17:00、BlueMixパーティーが17:00~18:00に行われます。場所は六本木ヒルズ・森タワー49階 六本木アカデミーヒルズ。定員は200名です。
セミナーでは、ソフトウェア事業戦略「SMACS」や起業家支援プログラム「Global Entrepreneur Program」についても説明があります。
セミナーの詳細および参加のお申し込みは、こちらの日本IBMのWebサイトをご覧ください。
日本IBMでは、同社が誇るクラウド専門家(クラウド・マイスターズ)が日本各地を回り、SoftLayerを皆様に体験していただくイベント「IBM Cloud Exchange 2014」も開催します。ぜひご参加いただき、地方でこそメリットが最大化するIBMクラウドの魅力を直接感じてください。
開催地は札幌、大阪、福岡、金沢で、5月19日~6月4日に各会場で1日ずつ開催。参加費は無料(事前登録制)です!
開催日時・場所などの詳細情報、およびイベント参加のお申し込みはこちらの日本IBMのWebサイトをご覧ください。