SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

DeveloperZine(デベロッパージン)- エンジニアの意思決定を支える技術情報メディア ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

特集記事

なぜ、フルスタックエンジニアが必要とされているのか ~ 「ゆでガエル」になる前に

おわりに

 世の中を見渡すと、3Dプリンタや、脳波センサなどの各種センサ、Raspberry Piなどの安価な小型汎用デバイスの登場で、デバイスの世界が面白くなっています。これらのデバイスは個人でも簡単に利用・作成・改造ができます。こうしたデバイスをWebサービスを組み合わせて、誰も経験したことのない新しくて面白い体験を「個人」が提供する時代はすぐそこまで来ています。

 本稿はフルスタックWebエンジニアの話に絞ってしまいましたが、時代の流れを考えると、実はフルスタックエンジニアとは、「世の中の多くの人々に対して、サービスを通じた新たな価値観を提供できる個人」と言えるのではないでしょうか。

コラム:SIerはフルスタックエンジニアを目指すべきか

 筆者は、2002年から12年間SIerに勤務した後、B2BのWebサービスのベンチャー企業に身を転じました。そのせいか分かりませんが、SIerの方から「自分はフルスタックWebエンジニアを目指すべきか?」という質問を受けることがあります。

 一口にSIerの方といっても、担当業務などは人によって違いますから、返答に困ってしまいます。SIerの方を担当業務で大きく分けると、次の3つの領域に分かれます。

 

① お客様の情報システム部門と一緒にシステム企画業務をする方
② アプリケーション開発業務を中心とする方
③ インフラ構築を含むシステムの保守・運用業務を中心とする方

 

 ①の方は、お客様のビジネスと技術の進化の狭間で最適解を出すことが業務ですから、お客様のビジネスを勉強した上に、幅広くかつ深く技術の勉強をするのでは大変です。というわけで、①の方には「お客様のビジネスを成長させる上での最適なシステムを導くために必要な技術を浅く広く勉強していただき、実際の開発・運用は②、③の方にお任せした方がいいでしょう」と答えるようにしています。

 では、開発と保守・運用を主とする②、③の方はどうでしょうか。まず、図3をご覧ください。これは、縦軸を技術的難易度、横軸を案件規模にしたマトリックスです。

 

図3:技術的難易度 × 案件規模マトリクス
図3:技術的難易度 × 案件規模マトリクス

 

 これまで大手SIerはプロジェクトリスクを抑え、大規模な売上を得るために技術的難易度が低く(枯れた実績のある技術を活用する)、案件規模が大きい(複数年単位、大人数を要する)案件を多くこなしてきました。

 しかし、近年、お客様がプロジェクトリスクを低減するために大規模案件を小規模な案件に分割して発注したり、全体の予算を抑えて実施する、あるいは、クラウドを利用してインフラをアウトソースしたり、技術者を雇用して内製するといったケースが増えています。「大手SIerの狙う領域」(図3の右下)の案件数は、今後減少すると筆者は予測しています。

 一方で、IaaSなどのクラウドを駆使し、技術的難易度が高く、案件規模が比較的小さい「有望領域」(図3の左上)の案件を受注する中小規模のSIerが、最近好調だと言われています。お客様には、他社との差別化を図り競争力を高めるために、技術的難易度が高いプロジェクトを実施しなければならない場合があります。技術的難易度が高い案件はお客様にとってもリスクですから、案件規模を小さく始めたいところです。しかし、大手SIerはリスクが高い割に期待できる売上が小さいこの領域を嫌がることが多いのです。そのため、既存の大手SIerに代わって受注してくれる中小規模のSIerが好調になるというわけです。

 この領域の案件は予算規模が限られるので、SIerとしては短期間・少人数で挑まざるを得ません。結果、プロジェクトメンバーがカバーしなければならない技術の範囲は広くなります。こういった案件を数多くこなしたメンバーは、短期間で幅広い技術領域でバラエティに富んだ経験を積めるため、大きく成長してフルスタックWebエンジニアに近い存在になります。

 先ほどの②、③の方というのは、大手SIerの方、あるいは大手SIerとアライアンスを組んで大規模案件を中心に従事している中小規模のSIerの方といえます。もし、大手SIerと中小規模のSIerが図3の有望領域に活路を見いだすのであれば、フルスタックWebエンジニアを目指す必要があるでしょう。

 しかし、大手SIerが図3の有望領域に手を出しても、教育コストの問題やこの領域の案件数から考えて、現在雇用している人数を養うだけの売上を獲得するのは難しいでしょう。また、日本経済新聞電子版の2014年4月21日付の記事『IT技術者がいない みずほ不安の「2020年問題」』によれば、金融系、公共系の大型案件(注12)が始まりつつあり、少なくとも2020年まで、業界としては仕事があるようです。このような状況ですと、しばらく大手SIerは現状の方針を変えないでしょう。

 2020年以降、大手SIerがどうなるかは分かりません。いえるのは、大手SIerで図3の有望領域に活路を見いだしていた筆者の知り合いの多くは、Webサービス系企業、あるいは図3の有望領域を得意とする中小規模のSIerに転職していきました。筆者もその選択した1人です。

注12:現在、筆者の知る限りでも、大手都銀のシステム刷新、マイナンバー制の導入に伴う公共系案件による特需が見込まれています。

この記事は参考になりましたか?

連載通知を行うには会員登録(無料)が必要です。
既に会員の方はを行ってください。
特集記事連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

橋本 吉治(ハシモト ヨシハル)

 日本Javaユーザー会副会長。また、企業が持つWebサイトに対する全文検索システムをSaaSとして提供する企業株式会社SyncThoughtに所属。同社にて、主力サービスであるSyncSearchの開発とお客様向けのカスタマイズを中心に活動。同時に、同社サービスの技術的な魅力を対外的にお知らせするために、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/7813 2014/06/18 14:00

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー