グローバル展開ゆえの課題も
クラウド・マーケットプレイスは公開されてまだ日が浅い。サービスとして未完成な部分も残されているようだ。紫関氏からは、これから改善すべきところとして「UX(ユーザーエクスペリエンス)の統一と強化」「グローバルにサービスを展開するための仕組みの整備」の2つが挙げられた。
UXの統一と強化
紫関氏は、クラウド・マーケットプレイスは大きなショッピングモールであるといい、サービスを提供するサイトは「アンカーストア」(総合スーパーマーケット)と「スペシャリティ」(個別専門店)の2種類に大別できると説明する。アンカーストアに該当するのはSoftLayerやBluemix。スペシャリティはビジネスアプリケーション(SaaS)や「IBM PureApplication Systemのパターン」といった多種多様なサービスを提供するサイトである。
この区別は、1つ目に挙げた課題であるUXの統一と関係する。SoftLayerやBluemixは、それぞれサービスの探索から購入、運用までの仕組みが完全に構築されている。これらに対し、クラウド・マーケットプレイスで同様の機能を提供するのは屋上屋を架す無駄である。クラウド・マーケットプレイスはサービスを紹介する役割に止まり、試用、購入などはSoftLayerやBluemixに移動して行う形を残す。
一方、スペシャリティの多くには購入、運用に至る仕組みは備わっておらず、サイト画面もサイトごとにまちまちであることから、ユーザーの利便性を阻害する部分がある。そこで、スペシャリティで提供している製品・サービスについては、クラウド・マーケットプレイス内での取り扱いを目指す方向だ。
また、UXの強化という面では、現在サービスの探索方法がカテゴリ―サーチのみであるのを、キーワードサーチも追加することが挙げられた。使いたい機能を提供するサービスの名前や分類が明確に分かっていない場合、キーワードによる探索が不可欠だ。実装が待たれる機能の1つである。
グローバルにサービスを展開するための仕組みの整備
もう1つの改善点に挙げられた、各国IBMのクラウド・マーケットプレイスでグローバルにサービスを展開するための仕組みの整備に関しては、多国間のビジネスプロセスと、サービス提供者(ビジネスパートナー)のサポート体制、この2つが課題であるという。
クラウド・マーケットプレイスではビジネスパートナーと利用者の双方が国をまたがるため、m対nの国際取引が発生する。そのためビジネスパートナーは、まず米国IBMとサービス販売に関する契約を結び、次に各国IBMが自国のクラウド・マーケットプレイスでそのサービスを購入できるようにする。10月2日現在、日本IBMのクラウド・マーケットプレイスから購入できるビジネスパートナーサービスは限定的であるが、日本のビジネスパートナーのサービス登録申請はすでに始まっている。今後大幅なサービスメニュー拡大が期待される。
また、クラウド・マーケットプレイスでサービス提供を開始すると、ビジネスパートナーは世界各国のユーザーからの問い合わせに対応しなければならなくなる。日本国内のビジネスパートナーの場合、英語での問い合わせに対応できる企業は少なくないだろうが、その他の外国語での問い合わせにまで対応できるところは限られるのではないだろうか。
IBMでは、ビジネスパートナーがどの国のクラウド・マーケットプレイスでサービスを提供するかを決められるなどの仕組み作りを進めている。ビジネスパートナー側でも、グローバル展開を前提としたサービスの開発・提供の仕組みを検討する必要に迫られるだろう。
なお、ユーザーからの問い合わせ窓口業務は、各国のIBMが行ってくれる。IBMはクラウド・マーケットプレイス自体に関する問い合わせのみ自社で対応し、それ以外のサービスに関係する問い合わせはビジネスパートナーに転送する。