IPv6アドレスとNAT変換のアレコレ
総務省 IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会(第18回)配布資料(平成24年5月17日)には、図9のようなコメントが記載されています。
ここでいうNGNとは、東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社が提供するNGN(次世代ネットワーク)上で提供されるIPv6ネットワークサービスを指しており、NPTv6とはIPv6アドレスのネットワークプリフィックス部をNAT変換する「NPTv6: IPv6-to-IPv6 Network Prefix Translation」のソフトウェア実装を意味しています。すでに多くの報道や記事でレポートされていますので詳細は割愛しますが、東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社が提供するNGN上でサービスされているクローズドなIPv6ネットワーク環境と、ISP側から提供されるグローバルなIPv6アドレスとの混在環境で起こる通信の不具合への対処が提言されたものです(マルチプリフィックス問題)。
視点を変えて、こういった問題にルータ製造ベンダはどのように取り組んでいるのかについて、先行事例をみていきましょう。
図10は、NPTv6のソフトウェア実装を取り入れたアライドテレシスホールディングス株式会社の例です。具体的な内容は当該ページをみていただくとして、すでにNPTv6に関する取り組みが始まっているとご理解いただければとおもいます。
ここで、IPv6ネットワークを少なからず最近も検証されていた方ならご存知だとは思いますが、NPTv6のようなNAT66変換の取り組みが、Linux上ですでに取り込まれてきています。図11はip6tablesにおける拡張機能より抜粋したものです。DNAT,SNAT,SNPT,DNPT,NETMAP,MASQUERADEなどのNAT66変換に由来する機能拡張が、実に多くすでに取り込まれていることが分かります。
前述のNPTv6設定に関しても、図12のようにip6tablesの拡張機能を使うことでNAT66変換処理が行えることが分かります。20世紀から21世紀となった今でも、NAT変換は標準化とは遠い世界で、現実に即したソフトウェア開発が昔と変わらず続いているのです。
さらに図13は、ip6tablesにおけるNAT66設定例(IP MASQUERADE)を示したものです。
筆者も古い部類に入る人間なので、新しいシステムエンジニアの方がどこまでIPv6ネットワークの理解が深まっているか、とても悩ましいところではありますが、前述の結果を共有するために大文字で書いておきます(図14)。
最後に少し未来のクラウド環境におけるIPv6ネットワークの可能性を図示して、『いまさら聞けないモバイルとIPv6ネットワークのアレコレ』を終わりたいと思います(図15)。NAT44,NAT66,ネイティブIPv4,ネイティブIPv6通信環境が混在する世界は、もう手の届くところまで来ていて、あとはどのように組み合わせて使っていくか、ただそれを待っているだけの状態なのです。
次回予告
『いまさら聞けないモバイルとIPv6ネットワークのアレコレ(前編・中編・後編)』はお楽しみいただけましたでしょうか。今後もさくらインターネット研究所が取り組むちょっと未来の技術のお話を皆様に共有していければと思います。ご期待ください。