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クラウドネイティブ時代のデベロッパー生存戦略

AWSが普及すれば、プログラマが活躍できる世界になると思った――ソラコム 片山暁雄さんのキャリア

クラウドネイティブ時代のデベロッパー生存戦略 第1回(前編)


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 今や、アプリケーション開発者がクラウドを活用し、自分でインフラを作ることが当たり前になってきている。そういった中、そもそもなぜクラウドネイティブに作る必要があるのか、開発者がクラウドをどのように学ぶべきかといった迷いはつきない。この度CodeZineでは、吉羽龍太郎さんとタッグを組み、クラウドネイティブ時代に開発者が学ぶべきことを探っていく。第一弾では、吉羽さんが聞き手となり、クラウド時代の開発者のロールモデルとしてソラコム 片山暁雄さんへのインタビューを実施。IT業界でのキャリアをSIerからスタートし、AWS ソリューションアーキテクトを経て、現在は再び開発者の立場としてサービス開発を行う片山さんに、まずは自身のキャリアやAWS、コミュニティとの関わりについて聞いた。

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新卒の製造業からSIerへの転身、樹脂成形と違ってプログラムは何度でも練習できた

ソラコム プリンシパルソフトウェアエンジニア 片山暁雄さん

ソラコム プリンシパルソフトウェアエンジニア 片山暁雄さん

株式会社ソラコムにて、ソフトウェアエンジニアとしてソラコムの提供するIoTプラットフォームの設計構築を担当。

オープンソースのJavaフレームワークプロジェクトや、 AWSの日本ユーザーグループ(JAWS-UG)の立ち上げに関わり、2011年にアマゾンデータサービスジャパンに入社。日本でのクラウド普及をミッションとし、AWSソリューションアーキテクトとしてAWS利用のアーキテクチャ設計サポートや技術支援、イベントやセミナーでの講演などを行う。

著書として『AWSクラウドデザインパターン設計編/実装編』『Amazon Web Services 基礎からのネットワーク&サーバー構築』『Javaルールブック』『SORACOM入門』など。

1977年 大阪生まれ。芝浦工業大学工学部金属工学科卒。

吉羽 まず、片山さんの経歴を教えていただけますか?

片山 学生時代からソフトウェア工学を学んできた方とはちょっとキャリアパスが違っていて、新卒で入ったのはカギの会社だったんですね。なので、製造業なんです。

吉羽 カギって、あのドアをあけるカギ?

片山 そうです。当時は就職氷河期だったのと、僕は材料工学出身なのであんまり選択肢が多くなかったのと、ものづくりが好きだったので。ものづくりの会社で安定して暮らせたらいいな、と。で、内定が出た中でもよさそうだと思ったところに入りました。カギの会社なのですが、実際に配属されたのは、カギ周辺のドアハンドルを作る、樹脂成形のチームでした。

 その会社は日産の部品も作ってたんですが、入社して1年目のある時、ルノーと日産が資本提携してカルロス・ゴーンが来日したんですよ。カルロス・ゴーンは「日産が変わります」と言ったので、僕がいた会社の社長が社員を集めて「うちも変わらねば」という話をして、そして、人件費を下げることから始めたんですね。

 これはよくない兆候だと思いました。その時の先輩がちょうどお子さんが生まれるタイミングで、「週末に副業させてほしい」という相談を部長にしてたんです。「ああ、僕はこの会社にいても先がないな」と思えてしまって。僕の中の、定年退職までいる説はもろくも崩れ去ってしまいました。

吉羽 終身雇用がないと。

片山 そうそう、終身雇用なんかないんだなって思ったんですね。僕がやっていた樹脂成形って、スキルで先輩を抜かすのは結構難しいんです。なぜかというと、樹脂成形がうまくなるには材料である樹脂がいるんですよ。たくさんトライアルをしないとうまくならないのに、樹脂はお金がかかるからなかなかいろんなことが試せなくて。

吉羽 練習するチャンスすらあんまりなかった。

片山 なので、普段の業務の中で頑張ったとしても、なかなか先輩には追いつけない。あとは、会社の中でやってない先進的な取り組みはなかなかできないんです。

 例えば、樹脂成形に関する展示会に行くと、先行している人たちは、コンピュータを使って3Dモデルにしたり、金型の温度管理をして歩留まりを見たりしているのに、当時の現場では全くやっていなく、温度管理も厳密ではなくて。本当に、勘と経験、みたいな世界でやってたので、もし自分がこの会社にいられなくなっても、樹脂成形で次に渡り歩くのは難しいんじゃないかなって思ったんですね。

 なので、ちょっと違う職として、ソフトウェアの会社に行こうと思ったんですね。理由はいくつかあるんですけど、学生時代にパソコンを作ることが好きだったんですよ。あの、自転車みたいなもんじゃないですか。材料工学出身でフィジカルなもの方が得意だったので、CPUの表面を削ってクロック数を上げるようなことを楽しんでやってました。学校でも、ダイヤルアップサーバやUNIXがあったりして。

吉羽 その時代か。

片山 だからテレホタイムになったら電話をかけて朝までやって。FTPやHTTPは分かっていたので、IT業界に行こうと。職を探して、次に入ったのが金融系のSIerです。

吉羽 それがAWSに来る直前までいた会社?

片山 そうですね。まずはどこかの会社に入らないと、次のキャリアはないなと思って、まあ少なくとも3年は働こうかな、という感じで入ったのが実際のところですね。

吉羽 実際は10年くらいいた?

片山 そうです。2000年から2011年までいたので。11年ぐらいはいましたね。

吉羽 すごい。ということは、大学時代にITは多少かじっていたけれど、実質は未経験として転職したってことですね。

片山 そんな感じですね。コードもそれほど書けたわけではないですし、深い決心もなかったけど、ただ、ものを作るってことは、僕の中でフィジカルとバーチャルであんまり変わらないんですよ。プログラムを書くにしても、頭の中の自分なりのイメージを実現するために、どう組み合わせるだとか、こうはめるとちょっと気持ち悪い、みたいな感覚でものが作れる。ソフトウェアであっても自分のやりたいこととあまり差はないため、ものづくりの手段としてソフトウェアが使えたらいいなと思って。しかもプログラミングだと、パソコンがあればコンパイルできるじゃないですか。それってある意味、樹脂の成形機を使い放題であることと同じなんですよ。

吉羽 いくらでも練習できるってことね。

片山 これはいいぞ、と。あとは、頑張ればキャリアアップしやすそうだなっていう、打算的なところもあって。それが職種を変えた主な理由ですね。

吉羽 そこでJavaを始めた?

片山 そうですね、Javaを始めたのはその時です。製造業時代にたまたまJavaを知ってる同僚がいて、「Javaで書いておくとLinuxでもWindowsでも両方動くからいい」と言っていて、それはいいなって。シンタックスも分かりやすかったし、インターフェイスや継承なども、自分のものづくりのイメージにすごく近かった。なので、Javaが使える会社、という基準で転職先を選びました。入社後はもう長い間、Javaを使っていました。

吉羽 それって受託開発? それともサービス開発で?

片山 受託開発で金融系のフロントエンド寄りの領域をやっていました。例えば、住宅ローンや年金のシミュレーションや、保険の自動設計、一番効率的に投資するにはどうしたらいいといった、きれい目の画面でお客さんにシミュレーションを見せて、金融商品を販売するっていう。

吉羽 じゃあ基幹系というよりは販促系のツールなんですね。

片山 そうです。ただ年金計算や投資モデルの計算などはやっていました。基幹系のシステムはつなぎ先って感じですね。

吉羽 その時は要件定義も自分でやっていたんですか?

片山 やってた時もありますね。入社した当初は、もちろんプログラマとして働いてはいたんですが、3年ほどたったころPM(プロジェクトマネージャー)をやるように言われて。PMっていってもコードは自分で書くんですけど。要件定義して、設計して、実装してました。ハードウェアはIBMに用意してもらって、WebSphereまでは入れてもらう、という感じですね。

吉羽 じゃあ、小規模チームのPM兼開発者ということ。

片山 そんなに大きい会社ではなかったので、何でも屋さんでした。それにプラスして自社サービスもやっていたので、それを設計したりはしていましたね。

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この記事の著者

吉羽 龍太郎(Ryuzee.com)(ヨシバ リュウタロウ)

 クラウドコンピューティング、DevOps、インフラ構築自動化、アジャイル開発、組織改革を中心にオンサイトでのコンサルティングとトレーニングを提供。 認定スクラムプロフェショナル(CSP) / 認定スクラムマスター(CSM) / 認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)。Developers Summit 2016ベストスピーカー(1位)。 著書に『Amazon Web Services企業導入ガイド』(マイナビ)、...

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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https://codezine.jp/article/detail/9506 2016/07/20 14:28

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