今年もあった「お遊戯会」――Java Community Keynote
3日間にわたって行われたキーノート、そのラストを飾るのは、毎年恒例のパロディ寸劇です。一昨年のStar Wars、昨年のMatrixに続き、今年はAvengersがテーマでした。演者は各国のJUG(Java User Group)からの代表者が務めます。Javaユーザーたちからは、愛をこめて「お遊戯会」などとも呼ばれる大変柔らかいコンテンツですが、JavaOneの時代から、このカンファレンスがコミュニティ主導であるという事実の象徴と言えるセッション。イベント終盤独特の寂寥感を味わいながら、リラックスして鑑賞するのが乙な楽しみ方です。このレポートでは、いくつか特徴的な部分を写真とともに抜粋してお見せしましょう。
Day3 Keynote総評
Day3 Keynoteは、従来のJavaOneに近い位置づけであったと言えるでしょう。まず第一部のIBMからは、主としてJava関連の活動について、矢継ぎ早に数々の状況報告が行われました。内容に目を向けると、やはりOpenJ9やJIT as a Serviceの印象が強く残りました。JDKについて無償利用継続の話題もあり選択肢が増えている現在、デモにあったパフォーマンス面での優位性が実現できれば、OpenJ9のシェア拡大が見込まれるように思います。また、MicroProfileについては、現在はアプリケーションサーバーの対応状況(最新バージョンへの追従)がまちまちであるものの、Jakarta EEへの取り込みにより対応の流れが進むことが期待できます。ユーザーにとって活用の機会が広がる嬉しい方向性であると感じました。
第二部のJava Community Keynoteですが、今年も継続されたという事実は、名称が変わってもコミュニティを大事にし続けるという意思の表れと言えるでしょう。(筆者は一Javaユーザーとしてそれを嬉しく思うものの)裏を返せば、総合技術イベントへの抜本的な転換はまだまだこれからであるとも言えます。他言語に注目するセッションを設けるなど、Java以外をどう扱うかについて明確な姿勢が見えれば、他のコミュニティの方々もより参加しやすくなるのではと感じました。
日本人の活躍
さて、セッション解説はここまでですが、トピックのラストとして日本人の活躍を紹介します。今回のCode Oneでは、多くの日本人技術者がセッションに登壇しました。
まず、コミュニティキーノートでは、日本オラクルの伊藤敬氏が演劇に参加。JONSEN代表として、ビール片手に自然体での演技を披露していました。
またブレイクアウトセッション(分科会)では、Javaチャンピオンの寺田佳央氏や阪田浩一氏といった、日本Javaコミュニティが誇るそうそうたる面々が登壇。Javaの技術情報や事例、コミュニティ活動について思い思いのプレゼンを披露されていました(こちらから英語名検索で各セッション内容を確認できます)。
そして、何といっても今回のハイライトはDuke's Choice Award 2018の受賞シーンでしょう。Javaテクノロジーを使った「Extreme Innovation」に送られる栄誉あるこの賞を、今年はTwitter APIの非公式ライブラリである「Twitter4J」が受賞しました。
カンファレンスを終えて――「お祭り」に参加するということ
4日に渡る全日程を終え、カンファレンス全体に関する総括としては、まずJava関連を中心に多くの最新情報が詰め込まれ、例年通り学びの多い内容であったという点を挙げます。名称が変わったことに懸念を覚えたJavaユーザーの方も多かったと思いますが、Javaの祭典としての役割は今年も無事に果たせており、その点で安心しました。個別のブレイクアウトセッションも含めれば実に多種多様な技術情報が得られ、グローバルな技術者との熱い交流ができるという面で、やはりJavaユーザーにとってこの場が最高峰でしょう。
一方で要所に目を向けると、まだ変革の途中段階のイベントであった、という感想も持ちました。Java単独から総合技術を扱う方針に変更したものの、キーノートとしては従来通りのものと新たなものとで分断され、粒度も異なってしまった。また、コミュニティ主導の建て付けであったイベントに企業名を冠したという点も大きな変化なのですが、今年はIBMなどの他社がこれまで同様の立ち位置で参加したように見えました。この点、次年度以降に動きが出てくる可能性も感じます(Jakarta EEがテーマの「JakartaOne(仮)」なども計画されていると聞きますので、そちらの動向が影響するのではと見ています)。Javaそのもののと同様に、このカンファレンスも、時代とコミュニティにあわせて毎年変化していくでしょう。
そして、現地参加した実感として改めて感じるのは、日本人技術者の活躍のおかげで、同国の我々が能動的に参加しやすい環境が出来上がっているということ。いきなり飛び込みでグローバルな交流をするより、Javaチャンピオンやコミッターの方などを通じて関わる方が、勇気のハードルは下がります。また、日本人が企画する各国交流会のようなイベントもあり、そこでは面識がない方でも歓迎してくれます。いきなり現地交流は気後れするという方は、まずはJJUGのナイトセミナー(月次勉強会)など日本のイベントで、関係者と懇親してみてはいかがでしょうか。来年は、当レポートで興味を持ってくださった皆さまと、この「お祭り」を一緒に楽しむことができたら嬉しいです。