DAUアップを目的に大規模リニューアルを実施
国内におけるアプリダウンロード数は2300万を突破(2019年4月時点)、2018年の年間単行本販売冊数は2014年と比較すると413%増加となるなど、リリース以来着実に成長を遂げてきたLINEマンガ。同事業は2018年7月2日より、LINE株式会社とNAVER WEBTOON Corporationの資本業務提携により設立されたLINE Digital Frontier株式会社により運営されている。
LINEマンガがリリースされたのは2013年4月9日。当時の開発メンバーは4人。LINEではいずれのプロダクトも少数のメンバーで立ち上げるので、この数字は特別少ないわけではない。だが、LINEマンガは当初より期待されていたという。Androidアプリの開発では、上級執行役員も参加するなど、「人数的には豊富とは言えませんが、なかなかリッチな体制でスタートした」と山本さんは振り返る。
リリース当初からLINEの知名度を生かし、多くのユーザーを集め、売り上げも順調だったという。
「だが今一つ、DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)が伸び悩んでいました。そこでDAUのアップを図ろうと、『LINE』のアプリ内でWebアプリケーションとしてLINEマンガを楽しめる機能を導入したのですが、効果が見られませんでした。そこで次の手として大規模なリニューアルを検討することにしました」(山本さん)
DAUアップを図るため、「LINE版 LINEマンガ」を導入したのは2017年9月。ちょうど山本さんがLINEマンガの開発体制に本格的にジョインした頃だったという。「LINE版 LINEマンガ」は、LINEマンガのアプリをダウンロードしなくても、「LINE」でマンガが楽しめる仕組みである。現在は「ニュースタブ」からの導線が残っているという。
リニューアルは新規開発と同じくらいの規模の開発だった
このとき、Perlで記述されているバックエンドのシステムも大規模な改修を行ったが、一方でUIはローンチ時からほとんど変わっていなかった。つまり2018年6月に実施したリニューアルはユーザーにとって初の大きな変化だったのだ。
リニューアル前のLINEマンガの「無料連載」は、1週間に1話ずつ更新される週刊連載形式を採用し、次話を読むには1週間待つ必要があった。そのため継続率が上がらず、結果DAUが伸びなかったという。そこで23時間経てば無料で次話が読めるチャージ形式に転換。また同時に黒背景から白背景にするなど、UIも大きく刷新した。
それだけではない。今後の継続的な改善を見据えて、iPhone、Androidアプリ双方のソースコードも大きく刷新。「ほぼ新しく作ったと言えるぐらいの大変さがあった」とiPhoneアプリの開発を担当した崔さんは語る。Androidアプリの開発を担当した関さんも「新しい機能の開発はもちろん、ソースコードの構成も再構築するなど、ほぼゼロから作り直し、とにかくユーザー体験の良さを追求しました」と続ける。
例えばiPhoneアプリでは言語をObjective-CからSwiftに変更。「今後のメンテナンスを考え、ソースコードも大幅に改修しました」(崔さん)
Androidでも同様に、アプリを改善しやすくするための取り組みが行われたという。「ライブラリを最新版にしたり、コードの柔軟性、拡張性のある形に再構築したりしました」(関さん)
DAUアップという目標があったとはいえ、順調に伸びていたサービスにおける大規模リニューアル。苦労する場面が多かったにも関わらず、モチベーション高く取り組めたのには理由がある。「成長させたいというサービスへの愛情が強かったということがひとつ。そしてもうひとつは、既存の機能に手を入れるよりも、新規に作る部分の方が多かったこと。新規開発というイメージで進めることができた。おそらく開発メンバーは楽しんでできたのでは」と山本さんが言うと、崔さん、関さんも大きくうなずいていた。
もちろん、大規模なリニューアルプロジェクトを円滑に進めるための工夫も行った。タスクの管理はJIRAを採用。デザイナーとのコミュニケーションをスムーズに進めるためZeplin(ゼプリン)を導入、開発のスピードアップを図ったという。