ティール型組織を導入。その効果と今後の課題
ここで方向転換を決意。全員ロナウド時代の反省を生かし、ミッションを再定義して、ティール組織を採用することにしたという。
「振り返ると、全員ロナウド時代は、オレンジ型組織の形態を採用していた」と手塚氏は説明する。メンバーは上司から割り当てられたタスクを機械的に実行。そして各メンバーがその達成度によって評価されていたからだ。「単純なワークであればオレンジ型組織でも良いが、規模の大きな製品を開発してくのには向いていない」と考えたからだ。そこで導入したのがティール型組織である。
ティール型組織は、各メンバーが自分たちで組織をセルフマネジメントして、自走しながらもお互いに関係性を持ちつつ進化していくというもの。
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そのため、「チーム構成も大きく変えた」と手塚氏。特定の管理者を置かないようにした。「私であればSREのタスクを効率的にこなしていくことに価値があるのではなく、Reckonerという製品をより使いやすくしたり、定義したミッション通りのものを作っていくことに価値があると意識づけるための構造にしている」(手塚氏)。
ティール型組織を導入したことによる効果も出ているという。第一は企画自体が良くなったこと。「これまではセールスの担当者に任されていたが、チーム全体で企画を考える体制にした。つまりReckonerが製品として成功するか、失敗するかも全員が負担するようになった。チーム全体でしっかり考えるので、企画自体も良くなったと感じている」と手塚氏は満足そうに語る。
第二に技術的にも「良くなった」と手塚氏。これまではビジネス側からその場その場で仕様変更があったという。そのためその場しのぎの開発になっていた部分もあるが、今ではそういう開発を行うことはない。「日次や週次で開催しているミーティングにはビジネスサイドのメンバーも参加し、お互いに意見を出し合うことで、将来を見据えたアーキテクト設計ができるようになってきた」と手塚氏は満足そうに語る。さらにメンバーの技術力の向上にも手応えを感じている。「例えば私はSREエンジニアだが、サーバーサイドのプログラムを書いたりすることもある。フルスタック気味な開発をしていく内に、メンバー全員の守備範囲が広がっている」(手塚氏)
第三はチーム自体のモチベーション、雰囲気が良くなったこと。「目指すべきビジョンが見えており、自分が担当しているタスクの意味がわかるようになった。だからメンバー全員、モチベーション高く仕事に取り組めるようになっている」(手塚氏)
また意思決定のスピードアップも図られたことも、チームに良い効果をもたらしている。「情報はすべてオープンで、無駄な会議もない。意思決定の待ちの状態もなく、自分たちで進めていくスタイルになったので、開発は非常にスムーズになった」と手塚氏は話す。
ティール型組織を単に導入しただけではない。「工夫したことがある」と手塚氏は話す。一つはサポート制度を用意したことである。各メンバーの得意領域に対してサポーター認定をし、各分野で困ったことがあれば、サポーターに相談することができる制度だ。そのため、「さまざまなチャレンジができるようになった」と手塚氏は言う。もう一つは採用活動をチームで行うようにしたことだ。「われわれがほしい人材はわれわれが一番わかっている。負荷は増えるが、人事部などに任すことはしていない」と手塚氏は言う。より意味のある採用活動につながっているのだという。
課題もある。ティール型組織は個人のモチベーションと性善説を前提に動いているため、がんばり過ぎる特定のメンバーにしわ寄せがいってしまうことだ。「組織運営の中でどう自分たちでコントロールできるかはこれから考えていきたい」(手塚氏)
もう一つの問題は個人の評価について。ティール型組織は個人の収入を上げることがゴールではないため、評価が不透明になりがちである。「個人のがんばりは当然ある。それをきちんと担保できる評価制度を考えていかないといけない」(手塚氏)
さらなる進化を目指して突き進んでいるスリーシェイク。最後に手塚氏は「積極的に採用を行っているので、興味のある人は一度オフィスに遊びに来てほしい」と呼びかけ、セッションを締めた。
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